行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

成功に一番必要なのは運!?世界はランダムに動く。

エピソード1:やってみたい仕事が目の前に・・・!

もう15年以上前になりますが、当時、所属していた会社でやってみたいと思っていたプロジェクトに携わる機会がありました。とある技術を使ったプロジェクトで、前々から気になっていた僕は、ちょっとだけ1人で勉強していたりしました。ただ、仕事として取り組む機会はなかなか得られないでいたんです。

ある日、現場を訪れた上司が僕から報告を聞いた後、休憩していてポツッと「○○できるやついねぇかな・・・」と呟いたのです。席を立とうとしていた僕は、○○に反応して「それ僕できますよ!」と即アピール。そのままとんとん拍子で、そのプロジェクトに関わる機会を得ることができたのです。

上司が呟くタイミング、席を立つタイミング、興味のある技術で1人で勉強していた、プロジェクト立ち上げ前の時期だった、自分の仕事は落ち着いていた等、たくさんの条件が上手く重なった結果、やってみたいと思っていた仕事のきっかけを掴むことができたのです。

エピソード2:偶々の出会いが重なって

6〜7年前に行動分析学を応用したとあるセミナーを開催したときのこと。たまたまWebで見つけてくらたEさんが、参加してくれた。Eさんは行動分析学に興味があって自分でも勉強してきたとのこと。行動分析学を学ぶ仲間が欲しかった僕は、終わった後に声をかけたところ意気投合して、後日、一度話しをしましょうなんてことになりました。

それからEさんとは何かやってみましょうってことになって、Twitterを使った勉強会だとか、Ustreamで動画を配信してみたり、読書会を始めてみたり。殆どの企画は途中で止めてしまって企画倒れになったのですが、唯一、読書会だけは細々と続いていました。

続けいると「偶々」が積み重なるもので、偶然見つけましたという方がちらほらと参加してくれるようになり、レギュラーメンバーも徐々に増えてきました。メンバーが増えればやれることも増えるもので、講座やワークショップなどもやるようになり、それがついには一般社団法人にまでなり、今に到ります。最初に出てきたEさんはその法人の代表理事の1人です。

成功に必要なのは努力か、それとも運か

成功法則って本当なんだろうか?

世の中にはやたらと物事が上手くいく人と、頑張っているのに成果がでない人がいます。その違いって何でしょうね。

しばしば成功した人の体験談は、成功法則や上手くいくためのノウハウとして語られます。スティーブ・ジョブズがどうしたとか、松下幸之助がどうしたとか・・・。僕たちはそれに感銘を受け、成功法則やノウハウを実践できれば自分も成功できると思い、頑張ろうとします。

でも、それって本当なんでしょうか?

僕自身は以前、成功法則が好きで結構勉強していました。学んで、使いこなせば上手くいきそうな感じがしていました。していたのですが、心のどこかで引っかかっているものも感じていました。実際は違うんじゃないかって。

世界はランダムに動くという解釈

本記事で書いていることは、この世界に対する「ある解釈の仕方」についてです。それが真実かどうかは僕には分かりませんが、今のところ一番しっくりきているものです。

その解釈とは「世界はランダムに動く」ということです。

ランダムに動くので、言ってしまえば上手くいくかどうかは運次第となります。より正確にいえば「上手くいくためのきっかけや手がかりを掴む」かどうかは運次第。

では努力が全くの無駄かといえば、そういうわけではありません。ただ、努力の方向性には注意した方が良さそうです。そのことを説明するために、まずはランダムな世界についての理解を深めていきましょう。

尚、本記事で述べることの根幹は、次の書籍から学んだことです。既読ならこの記事は読まなくてもいいでしょうし、この記事を読み終わった後にもっと詳しく知りたいと思うなら、下記の書籍を手に取ってみるといいと思います。

成功は“ランダム

成功は“ランダム"にやってくる! チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方

  • 作者: フランス・ヨハンソン,池田紘子
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2013/10/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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偶然の科学 (ハヤカワ文庫 NF 400 〈数理を愉しむ〉シリーズ)

偶然の科学 (ハヤカワ文庫 NF 400 〈数理を愉しむ〉シリーズ)

ランダムは理不尽だ

ランダムさを簡単に実験すると

何かにチャレンジして成功した場合を白い丸、失敗した場合を黒い丸として表現してあると思ってください。成功と失敗をランダムに配置した結果が、この図になります。

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読者の皆さんにも少し体験してもらおうと思い、プログラムを書いてみました。下記のボタンを押してもらえれば、すぐに結果が表示されると思います。何回か試してみてください。

5:5〜6:4くらいの五分五分に近い結果が出ることもありますが、7:3〜9:1くらいの偏った結果も結構な頻度で出てくることが分かると思います。また5:5や6:4の場合でも、○や●が連続して3〜4つ並んでいたりもします。ランダムってもっと均一になるのかと思えば、意外と偏りが出ちゃうもんですね。

これはプログラムなので成功と失敗を半々の確率で出るようにしましたが、現実はもっと失敗の確率が高くなると思います。確率を失敗よりに高めたものだと、次のようになります。

成功のきっかけを「たくさん掴む人」と「あまり掴めない人」がいる

つまり、この世界の動きをランダムだと仮定するならば、上手くいくためのきっかけをたくさん掴む一部の人と、そうでない多くの人がいるということです。理不尽には感じますが、これはこれで一つの現実なのかもしれません。

実際、世の中で上手くいっている人は一部ですから、世界ってそんなもんなんだよって言われれば、どこか納得できてしまいそうな自分がいます。

先ほど僕が「ランダムな世界という概念」に触れた書籍を紹介しました。

偶然の科学 (ハヤカワ文庫 NF 400 〈数理を愉しむ〉シリーズ)

偶然の科学 (ハヤカワ文庫 NF 400 〈数理を愉しむ〉シリーズ)

この本では次のような事例が紹介されています。結構面白いと思いますので、読んでみると良いかと。

  • 幾つかのグループにオンラインで無名のバンドの曲をダウンロードできるようにして、それぞれのグループでどの曲がランキングの上位に並ぶかを実験。ランキングが互いに見えるようにしている場合と、そうでない場合の違いも確認しているのが興味深い。
  • 一万時間の天才は果たして真実か?一万時間の天才は、ゲームに勝つためのルールがあまり変化しない世界での法則。ルールそのものが変化する予測困難な世界では、通用しなくなる。
  • Yahoo!はなぜGoogleを買収しなかったのか。Googleが今のように巨大ではなく、スタートしたばかりの小さな規模だったとき、YahooはGoogleを買収する機会を自ら手放している。検索の分野の専門家であっても、Googleの成長を予測することはできなかった。
  • 多くの予算を用意したAppleのニュートンと、限られた予算しかなかったPalm。成功したのは後者だった。

成功法則という「誤解」が生まれた背景

成功者が成功法則を語りたくなる理由

仮に世界がランダムなものだとするならば、何故「成功法則」だとか「上手くいくためのノウハウ」といったものがあるのでしょうか。

簡単にいっちゃえば、成功法則があった方が都合がいいって人が多いからです。成功者の語る成功法則には、それを語る方にも受け取る方もメリットがあります。

成功した人は、自分の成功には原因があって、それを伝えることで人々の役に立ちたいと願います。場合によっては、優越感を感じたいってこともあるでしょう。

僕たちには「結果バイアス」があります。可能性はあったけど「生じていない結果」よりも、実際に「生じた結果」の方を重視します。そして生じた結果の原因を、後付けで説明することを好みます。

成功した人は、自分が成功しなかったかもしれない結果よりも、実際に成功した結果の方を重視したいでしょう。そしてその成功を、自分の行動だとか戦略、心構えといったもので理由付けしたくなります。

こうして1つの成功法則が生まれます。

成功法則の需要と供給

また、これから成功したい人にとっては、自分の努力が無駄ではなく、未来のどこかで実を結ぶと信じたいはずです。それを保証してくれるかのような成功法則は、欲して止まないものです。

ましてや、その成功法則を語っている人は実際に成功した人なのです。スティーブ・ジョブズや松下幸之助、あるいは他の人でもいいです。彼らが語っていることは、他の普通で成功していない人が語ることよりも、価値がありそうに思えてしまいます。「ハロー効果」というやつですね。

供給側と需要側、それぞれのメリットが一致するからこそ、成功法則は繰り返し世の中に広まったし、これからも広まっていくのだと思います。

尚、成功法則がどれだけ成功に影響しているかを、統計的に検証しようとした人もいるようです。興味があれば読んでみると良いかもしれません。少なくとも、何に取り組んで、何に取り組まない方がいいのか、くらいは分かるかも?

その科学が成功を決める (文春文庫)

その科学が成功を決める (文春文庫)

このランダムな世界で僕らにできること

試すことできっかけが掴みやすくなる

ただ、僕たちが興味を向けるべきは成功法則が使えるかどうかではありません。世界がランダムなのだとしたら、その世界で僕らが少しでも思うように生きるために、何ができるのかってことだと思います。

成功のきっかけがいつ訪れるかが「運次第」だとしても、全くきっかけが生じないということは有り得ません。冒頭の方で貼り付けたランダムの実験の結果では、最悪のケースでも3回は「○」が出ています。最善のケースは9回も「○」が出ているので随分と差はありますが、されど3回は上手くいっているわけです。

ランダムに訪れる「きっかけ」を掴みたいなら、どれだけ試すことができるかが大切です。色々試みることは、計画的に何かをやろうとすることよりも重要だということです。

僕の好きな書籍に「仕事は楽しいかね?」がありまして、この本に次の記述があります。

頭にたたき込んでおいてほしい。何度となく“表”を出すコインの投げ手は、何度となく投げているのだということを。そして、チャンスの数が十分にあれば、チャンスはきみの友人になるのだということを。

成功は成功の上に築かれる

またきっかけを得ることも重要ですが、掴んだきっかけを活用することはより重要です。一度、ある程度の成功を収めることができれば、再び成功するのは以前よりも容易になるからです。

シンプルな話で、例えばこのサイトのアクセスが月間100万PVあれば(もちろんそんなにはないw)、何か新しいことを始めようとしたとき、最初からある程度の注目を得ることは簡単なことでしょう。

あるいは、ある分野において第一人者としての評価を確立しているならば、その分野において何かある時は、意見を求められることも多いはずです。その分、発言の影響力は大きなものになります。

この辺りについては下記の本を読んでみると良いかもしれません。

評価経済社会・電子版プラス

評価経済社会・電子版プラス

ランダムな世界で成功するには

つまりランダムな世界で成功するためのポイントは3つ。

  1. きっかけを掴むために試みる機会を増やす
  2. 訪れたきっかけを活用して小さくても良いので成果を得る
  3. もし2で成果が出たら、それを使って次のきっかけを得やすくする

試みる機会を増やすとは、つまり行動するということです。行動するために必要なのは、やる気やモチベーション、勇気、本気などではありません。行動するしかない環境に身を置くことです。そのための工夫をするといいでしょう。

試みる中で上手くいくためのきっかけや手がかりが得られたなら、それを活用する術を持つと良いです。それには下記の書籍に書いてあることが参考になるかと思います。

成功は“ランダム

成功は“ランダム"にやってくる! チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方

  • 作者: フランス・ヨハンソン,池田紘子
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2013/10/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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