個人事業家・フリーランスのための行動分析学 - 行動アシストラボ 矢野浩史

僕たちは行動分析学をもっと”使える”道具にする。

「不安で行動できない自分」を乗り越え、問題を解決するための3つの工夫

行動することを考えると不安を感じてしまい、色々と考えを巡らせ、結局踏み出せなくなることがあります。本当はそれでも行動できた方がいいと分かっているので、できれば何とかしたい。そんな自分を変える方法ってあるのでしょうか。

この手の問題で根本的に誤っているのは、そもそも不安を解消してから行動しようとしている点にあります。不安だけど行動する、ということを試してみるといいでしょう。 とはいえ、ただ「やってみろ」では行動できないでしょうから、不安が生じて考えすぎてしまうメカニズムと、どこに注目して、どのようなスタンスで不安を受け入れればいいのかをお伝えしたいと思います。

不安は決してあなたの行動の障害ではありません。不安だけど行動できるという自分になれれば、あなたは今よりももっと、やりたいことをスムーズに実行できるはず。この記事が、そんな自分に近づくための一助になれば幸いです。

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不安を過大評価して動けない僕ら

考えて考えて、結局踏み出せない

引っ込み思案で人と関わることを避けたい自分

僕は結構臆病で、引っ込み思案なタイプです。関わる人に変に思われるのではないか、迷惑なのではないか等と考えてしまい、そこに飛び込んでいくことを躊躇することがよくあります。相手を誘うこと、相手に何かを要求すること、人を巻き込んで活動することはかなり苦手です。

学生時代などはアルバイトで新しい職場にいくのも嫌でしたので、1つのバイトを長くやる傾向にありました。仕事面では何名かのステークホルダー間の調整をしなければならない場合、僕のパフォーマンスはかなり低下してしまいます。

する必要のない余計な心配をたくさんしてしまう

結局のところ、する必要のない余計な心配をたくさんしてしまうんです。行動したときの色々なリスクが思い浮かんでしまって、準備をやり過ぎなくらい入念にしてしまいます。結果、行動が遅くなります。

また、やらないとマズいことが起きるわけではないのだったら、基本、避けるようにしています。考えて考えて、結局踏み出しません。

考えて考えて結局踏み出せない僕たち

僕の例以外でも、転職活動になかなか踏み出せない人もいますよね。

いまの職場には不満がある。でも、転職したとしてもまた同じ目に遭うかもしれないし、場合によってはもっと酷いことになるかもしれない。そう考えてしまって、現状のままで我慢するという選択を選んでしまうことがあるようです。

あるいは、独立起業の希望持っていても、いまの収入や安定を失うことを恐れて、踏み出せない場合もあるかと思います。

いまある問題と悩みとの違い

行動できなくなるとき、僕たちは「悩み」について考えている

このように考えて考えて、そして行動できなくなってしまっている時、その思考にはあるパターンがあります。それは「問題ではなく悩みについて考えてしまっている」という点です。問題ではなく、悩み。この違いは何でしょうか?

独立してから家賃が払えなくなったことがあった

会社を辞め、独立してからしばらく経った頃、金銭的に非常に辛い時期がありました。電気もガスも止まってしまい、更に「今月の家賃が払えない・・・」という事態に陥ったこともあります。

そうすると色々考えてしまうわけです。大家さんに怒られるかもとか、誰かに知られると恥ずかしいとか、追い出されてしまうかもしれないとか。

問題を発端として生じる様々な悩み

この場合、問題は「今月の家賃が払えない」です。問題を抱えたら、何とか解決しようと思い、そのことについて色々と考え始めます。

それで解決すれば良いのですが、解決困難な問題の場合、そこから生じるかもしれない事態を想像し始めてしまいます。それが「大家さんに怒られるかも」とか「誰かに知られると恥ずかしい」といった思考です。これらを「悩み」といいます。

悩みに囚われると損害が大きくなる

悩んでいるので行動に「より大きな痛み」が伴う

悩みについて考え始めてしまうと、行動できなくなります。

元々の問題である「今月の家賃が払えない」ことを解決しようと思えば、状況にもよりますが「大家さんに相談する」とか「両親、家族に援助を頼む」といった行動が想定できます。

ところが、「怒られること」や「知られて恥ずかしいこと」を気にしているため、それらの解決行動には痛みが伴ってしまいます。なので、なかなか行動できません。避けてしまうのです。

悩んでいると実際の被害も大きくなる

問題解決を先延ばしにすれば、当然、被害が更に大きくなります。何の相談もなく家賃が支払われなければ、大家さんからの信用を著しく損なうことでしょう。滞納が増えてから援助を求められたら、援助する側の負担も大きくなることでしょう。

問題を解決しようとする思考が悩みの底なし沼を作り出す

本来は問題の解決のために始めた思考が、様々な事態を想像することで「悩み」となり、結果、行動することに躊躇し損害を大きくしてしまいます。

問題を解決しようという思考のプロセスが、僕たちを「悩みの底なし沼」に引きずり込んでしまうことがあるのです。

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問題だけを正しく評価し、受け入れる

考えすぎてしまうのは経験が不足しているから

考えること自体を止めることはできない

問題について「考えてしまう」こと自体は止めることはできません。僕たち人間は、基本的に考える生き物なのです。考えることでたくさんの問題を解決してきた経験を持っていますから、問題が生じれば考え始めてしまうのは、とてもとても自然な行為です。

解決の見通しが立たないから考え過ぎる

問題について考えすぎてしまうのは、基本的にその問題に関する経験が不足していて、解決の見通しが立てられないからです。

経験が全く無い場合は、考えても色々と嫌な想像をするだけです。あるいは経験はあるけど極めて少ない場合・・・それもその少ない経験が痛みを伴うものだった場合、嫌な想像は更に加速することでしょう。

問題が”自分にとって”解決可能なら悩んだりはしない

問題が自分にとって解決可能なものであれば、建設的に考えることができます。少しシンプル過ぎる例かもしれませんが、「冷蔵庫に今夜の晩ご飯の材料がなかった」という問題であれば、多くの人は解決手段を思いつけるはずです。少なくとも考えすぎて悩みを増やすことはないはずです。

問題を解決するために、現状にあった有効な選択肢をもっていて、それが実行可能であるなら、僕たちは悩みの底なし沼に嵌まることはありません。

問題について考えよう

対処すべきものは「悩み」ではなく「問題」

では、いま既に悩みの底なし沼に嵌まってしまっている場合は、どうすればいいのでしょうか。経験が不足しているからといって、いますぐ経験を増やすことなんてできません。いまあるもので対処するしかないのです。

ちょっと困難さを感じてしまうかもしれませんね。ただ一ついえることは、僕たちが対処すべきなのは「悩み」ではなく「問題」だということです。

経験不足の人が想像上のリスクに備えようとすると被害が大きくなる

悩んで考えすぎてしまっている時、たくさんの「想像上のトラブル」を作り出しています。それらはまだ起きていないことですので、本当は対処する必要がないのです。

もしかしたら「いやいや、そうはいっても備えられるならそれにこしたことはないのでは・・・」と思うかもしれませんが、経験不足で未熟な僕たちの想像ですから、対処すべき妥当なリスクとは言い難いものです。

想像上のリスクについて、しっかり考えた方が安心できそうな気がしますが、そうするとかえって行動できなくなるので、被害がより大きくなってしまいます。様々なリスクに備えるのは、もっと経験を積んでからの方がいいでしょう(あるいは経験者のアドバイスを受けながら備える)。

労力を悩みに割いている場合ではない

繰り返しますが対処すべきなのは悩みではなく「問題」です。いま実際に起きている問題なのです。

人に何かをお願いしなければならないのなら、考えるべきことは「嫌がられないかなぁ」などではなく、具体的に何をどう伝えるのかであったり、お願いする相手のメリットであったり等です。

今月の家賃が払えそうにないのであれば、考えるべきことは「怒られること」や「人に知られて恥ずかしいこと」ではなく、現状を大家さんに伝えることや家賃を払う目処を立てることです。

ただでさえ経験不足で解決困難な問題なのですから、考える労力を悩みに割いている場合ではないのです。

不安を隣人とする

不安を無くそうとするのは無駄な努力

結局、不安と戦ってはいけないのです。不安を無くして、安心できてから行動しようとするそのプロセス自体に問題があるのです。

行動する前に不安がなくなることはありません。色々考えたり調べたりして、一時的に不安が軽くなることはあるかもしれませんが、問題は何も解決していないため、後でより大きな不安となって襲ってきます。

不安はあってもいい

問題の解決に集中するために持つべきスタンスは「不安と共に歩む」というものです。不安は消えなくていいのです。不安自体があなたに何か被害をもたらすわけではありません。不安を消そうとして悩むから被害が増えるのです。問題があるのですから、不安を感じるのは当たり前。不安はあってもいいのです。

見通しの立たない不安と成功とを関係づける経験

不安だけど、問題を何とかしようと実際に行動してみると、問題が解決したりしなかったりします。解決しないこともあるのは、まぁ、残念ですがそれも現実でしょう。受け入れるしかありません(受け入れないとまた悩みの底なし沼に嵌まる)。

でも、問題が解決した場合は、一つの成功体験となります。経験を積み重ねられるのです。何よりも重要なことは、不安と成功が関係づけられるので、不安が「避けなければならない恐ろしいもの」ではなくなるのです。

不安だけど行動できる3つの工夫

制約の下、思う存分不安なことを考える

思う存分不安について考えてみる

悩むことを止め、問題について集中的に考えるにしても、どうしたって不安なことについて考え始めてしまうのは防ぎようがありません。そういう場合は、制約をつけた上で思う存分、不安なことを考えてみるのも一つの手でしょう。

不安を無くそうとするのは無駄な努力ですが、同様に「不安を無くそうとしてはいけない・・・」となってしまうと、かえって不安の影響が大きくなってしまいます。だったら制約を設けて徹底的に考えてしまえ、と。

物理的なサイズまたは時間によって思考に制限を付ける

制約は「物理的なサイズ」または「時間」によって作るといいでしょう。

物理的なサイズを制約にしたい場合は、例えば「A4一枚の紙が埋まるまで不安なことについて書きまくってOK」といった感じです。悩んでもいいスペースが残っている限り、好きなだけ書き出しちゃってください。

時間の方はもっと分かりやすいでしょうか。「いまから30分、思う存分、不安なことを書き出してOK」とすればいいでしょう。

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悩んでいる自分から、悩んでいることを観察している自分へ

さて、ここで「書き出す」とありますが、これ、割と重要です。書き出すことによって悩みが見える化されます。見えるようになれば、観察することが可能になります。観察できるということは、自分の外に悩みを置いている状態です。

単に「悩んでいる」という状態と、「こういうことを悩んでいるのか」と観察している状態では、後者の方が自分と悩みの間に少し隙間ができているのです。その隙間が、僅かではありますが精神的なゆとりをもたらしてくれて、悩みに振り回されている状態から脱出できます。

瞑想などでも同様の効果が期待できますので、その辺りはお好みでどうぞ。興味のある方は下記の本などをお勧めします。

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行動と不安をレベル化する

行動しようとするその瞬間に不安は一番大きくなる

観察によって問題の解決に集中できるようになったとして、難しいのはやはり「不安」の影響を受けてしまう点です。不安と共に行動するといったところで、不安はやっぱり嫌なものです。

更に悩ましいのは、不安が最も強くなるのは「行動しようとするその瞬間」だという点。例えば、家賃払えない問題で一番不安が強くなるのは、大家さんに相談の電話をしようとするまさにその瞬間だったりするのです。

選択肢は一つではない

本当はそういった不安があっても、行動してしまえばいいのです。行動すれば大抵の不安は無くなるか、軽くなるかします。でも、まぁ、それはキツイというのであれば、不安のレベルに合わせて幾つかの選択肢を出してみるといいでしょう。

不安のレベルに合わせてチャレンジする行動を選べる

不安のレベルを0〜10点で評価します。0は全く不安を感じない行動、10は恐怖のあまりおかしくなってしまいそうな行動、5は勇気を出せばできそうな行動、といった感じです。

やるかやらないか、効果があるかないかは別にして、思いつくだけ行動をリストアップして、それぞれの行動の不安レベルを点数にしてみてください。その上で5〜8点くらいの行動を試してみてください。

0点と10点の行動を先に書くと、書き出しやすいかもしれません。

行動するしかない状況を作る

最後の一押しは行動するしかない環境

何をするかを決めた後は、自分を「行動するしかない状況」におけると、問題解決に向けて実際に動きやすくなります。勇気を出そうと思っても、なかなかそうはできないものです。行動するしかない環境を作ることで、最後の一押しをするといいでしょう。

不安レベルの低い行動を利用する

例えば、不安レベルの低い行動によってそんな状況を作り出すこともできます。

独立起業したいので会社を辞めようと思うのだけど、勇気が出なくて上司に口頭で伝えられないのであれば、まずは「お話があるので時間をください」とメールをしてみるといいかもしれません。 そうすると話さざるを得ない状況になりますので、勇気があろうがなかろうが、上司に意思を伝えるしかなくなります。

メールでなくとも、家族に「今日辞めることを伝えてくるよ」と宣言するだけでも、違うかもしれませんね。

他の人の手を借りて行動するしかない状況にする

他の人に手伝ってもらう、というのも良いアイデアです。家賃のことについて大家さんに電話することができないのであれば、家族や友人に電話をかけてもらって、先方が電話に出たところでこちらに渡してもらえば、もう話をするしかなくなるでしょう。

不安だけどチャレンジできたという経験が大切だ

このようなアイデアを読むと、もしかしたらハードすぎて無理だと思ってしまうかもしれません。不安すぎて無理だと思うかもしれません。

でも、不安は無くしてはいけないんです。不安だけれどチャレンジした、という経験が大切なのです。

不安を僕たちの行動の障害にしてはいけません。不安だけど自分の望む選択ができる、そういう経験を増やすことが、僕たちの人生をより柔軟なものにしてくれます。

不安を観察し、レベル化し、何をやるか決めたのであれば、後は最後の一押しをするために「行動するしかない状況」を作ってください。不安にチャレンジできるあなたであってください。きっと、できます。そう応援しています。

まとめ

問題ではなく「悩み」が被害を大きくしている

本記事ではまず不安を過大評価してしまうプロセスについてお伝えしました。

考えて考えて動けないでいる時、僕たちが考えていることには「問題と悩み」の2種類があります。問題はいま実際に生じている現実的な問題・課題のことで、悩みとは問題を発端として生じた想像上のトラブルのことです。

悩みは想像上のものなので、いますぐに対応できるわけではないのですが、どうしても気になってしまうので、ついつい考えてしまいます。その結果、問題を解消するための行動を起こすことができなくなり、かえって被害を大きくしてしまいます。

問題を解決しようとする思考が、悩みを生じさせ、悩みについて考えるから痛みが大きくなり行動できなくなります。悩みに囚われると損害が大きくなってしまいます。

不安の解消を止め、不安があってもいいと受け入れる

そもそも問題が「いまの自分にとって」解決可能なものであれば、僕たちは悩む必要がありません。問題が解決不可能に感じてしまうのは、現状においてその問題を解決するための能力・経験が不足しているからです。

悩んでいる間に問題が自然に解消してしまえばいいのですが、なかなかそういうことにもなりません。問題の解決を試みることによって、経験を積み重ねながら、問題に対して有効に行動できるようになっていくしかありません。

この問題の根本には「不安を解消しようとする」点があります。不安を解消しなければならないと感じているのは、不安が行動の障害となっているように思えるからだと思います。

経験不足で解決困難な問題を目の前にしている以上、不安を感じるのは当たり前です。不安を感じないという方が不自然です。僕たちにできることは、なるべく「悩みではなく問題」を中心に考え、その上で「不安を感じながらも行動する」ということなのです。

不安を感じながらも望む方へと行動するための3つの工夫

では具体的にどうすればいいのかという点については、3つの工夫をお伝えしました。

  1. 制約の下、思う存分不安なことを考える
  2. 行動と不安をレベル化する
  3. 行動するしかない状況を作る

不安を観察可能にし、受け入れ、行動することを決めて、不安と共に実際に試してみる。やることはこれだけなのです。

きっと勇気のいることだと思いますが、不安はあなたの障害ではありません。不安だけどチャレンジできたという経験こそを大切にしてください。不安を感じていても、同時にあなたの望むことを大切にすることができます。不安と共に歩んでみてください。