行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

目標や計画の使い方が上手くなるための2つのポイント

Q.
計画を立ててもその通りにいきません。 計画なんて意味がないような気がします。

f:id:h-yano:20161231022344j:plain

A.
計画に十分なバッファを設けることができれば、計画を持つことで行動しやすくなると思います。 また、計画から遅延しているという刺激を、リスケジュールという行動のプロンプトとして使うと、計画を立てることがより有効になります。

解説:計画を行動の役に立てる2つの方法

計画がどのような働きをするかを考えてみると、「弁別刺激」および「プロンプト」になると思われます。このうち問題となるのは「弁別刺激」としての働き。

オンスケジュールで行動できている場合は、計画は行動を強化する可能性があります。

[文脈α]予定通りに行動できる:
f:id:h-yano:20161231021745p:plain

一方で予定通りに行動できなかった場合や、予定に遅延が生じている文脈では、計画は行動を弱化する弁別刺激になる可能性があります。

[文脈β]予定通りに行動できない:
f:id:h-yano:20161231021804p:plain

計画が行動の役に立つかどうかは、この2つの文脈のどちらが頻繁に生じるか次第だと考えられます。文脈βの方が多いようであれば、計画を立てることはあまり行動の役に立っていない状況だといえるでしょう。


そもそも予定通りに行動できないのは何故かと考えれば、「実際の行動のペース」と「計画に記載された行動のペース」が一致していないからでしょう。

作業時間の見積は基本的にズレるものですから、計画を立てる時はバッファを設けるべきです。当初想定の2〜3倍くらいの時間がかかるという前提で計画を立ててみてください。

そうすれば「計画通りに進んだ」という結果が生じやすくなり、計画を持つことが行動に有効に働くようになる可能性があります。また、そのように取り組むうちに、自分のペースも掴めるようになりますので、必要なバッファも少なくなることでしょう。

この辺りについては下記の記事も参照してみてください。

www.behavior-assist.jp


もう一つ、計画の持つ働きとして「プロンプト」があります。計画通りに行動することにこだわりすぎなければ、計画はプロンプトとして有効に機能します。

計画がどのような行動のプロンプトになるかというと、次の3つです。

  1. 次にやるべき行動は何かを示してくれる(計画には段取りが反映されているので)
  2. どのくらいのペースで行動すべきかを示してくれる
  3. リスケジュールするべきであることを示してくれる

1、2の働きについては言うまでもないですね。計画に元々期待されている機能だと思います。

忘れないでおきたいのは3です。計画は「計画通りに行動すること」のみを目的として作るものではありません。計画から遅延しているという結果も、十分に有用な情報です。

当初見積からズレていることを教えてくれているわけです。始まる前よりも、目の前の作業についての理解が深まったと考えるべきでしょう。

深まった理解と共に、より現実的な計画にシフトしましょう。遅延という結果は、リスケジュールすべきであることを示唆しているに過ぎません。別に悪い結果ではないのです。