個人事業家・フリーランスのための行動分析学 - 行動アシストラボ 矢野浩史

僕たちは行動分析学をもっと”使える”道具にする。

目標に「しっくりこない」「迷ってしまう」なら、ある事前準備が不足しているかもしれない

目標を立ててみたけど、どうもしっくりこない。達成したいといえばしたいけど、時間と労力をかけるだけの踏ん切りが付かない・・・。

自分が「達成したい・その結果が欲しい」と思えるだけの目標を立てるためには、予め「必要なもの」があります。それが無いままに目標を立てようとしても、なかなか納得できるものにはなりません。

目標設定が上手くいくかいかないかは、目標を設定しはじめる前にある程度決まってしまうのです。ちゃんと事前準備ができていれば、納得できる目標を立てることはとても簡単になります。

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下手な目標設定はサービスを売ろうとして失敗する起業家と同じことをしている

商品やサービスをそのまま売り込んでスルーされる起業家

個人で起業している人でやりがちな失敗で、自分の商品・サービスそれ自体をアピールして買ってもらおうとすることがあります。例えば「まるで人間のように思考するAI将棋プログラムを開発しました。将棋好きでしたよね。買いませんか?」みたいに。

顧客目線で考えると、商品やサービスは自分の問題を解決したり、希望を叶えたりするための手段でしかありません。つまり、顧客の関心は「その商品は僕の悩みをどう解決してくれるんだい?」ってことでして。その点を伝えられなければ、「へー、すごいねー」と適当にスルーされて終わりです。

先ほどの例を使うなら「まるで人間のように思考するこのAI将棋プログラムは、相手の強さに合わせた指導対局ができます。このプログラムを購入すれば、24時間いつでも相手をしてくれるトレーニングパートナーが手に入ります」みたいな感じでしょうか。棋力向上のための練習相手・指導相手に困っている人なら、買ってしまうかもしれませんね。

下手な目標設定 = 自分への営業に失敗している状態

さて、目標設定の話です。下手な目標設定は、上記のような「商品・サービスをそのまま売ろうとする」ことと似ています。目標を達成することがどんな悩みや問題の解消につながるのか、どんな希望を叶えることにつながるのかについて言及することなく、どことなく口当たりのいいスローガン的なものになってしまうのです。

スローガン的な目標は、僕たちの「欲しい」という感情や思考を引き出すことができません。資格を取得したい、早起きしたい、毎日読書したい、ダイエットしたい等の目標では、「そりゃぁ、できればいいんだろうけどね」ってくらいにしかなりません。

目標に取り組むには時間と労力がかかります。時間と労力を対価にして、目標を達成するのです。ならばそれに見合った何かを示すことができなければ、その目標を「買って」もらうことはできないでしょう。

ジレンマを感じつつも「欲しい!」が上回る目標を自分にプレゼンしよう

目標設定とはいうなれば、「自分という顧客」に対して「目標という商品の魅力」をプレゼンするようなものなのです。顧客(自分)はどんなことに関心を持っているのか、どんな悩みを解決したいのか。そしてその関心や悩みに対して、目標を達成することはどう役に立つのか。そういったことを伝えてあげなければ、顧客(自分)はその目標の魅力に気づくことができません。

目標を設定するとき、僕たちはジレンマを抱えます。先ほど書いたように、目標に取り組むことで時間と労力という対価を支払うことになるのです。支払わないで済むなら、支払いたくありません。目標にちっぽけな魅力しか感じられないのであれば、「欲しいといえば欲しいけど、しかしなぁ、これに時間と労力を割くのもなぁ」と悩み続けてしまいます。

ジレンマをガツンと上回る魅力をプレゼンしてください。

欲しいと思える目標は事前準備でほぼ決まる

あなたの知らないどこかの誰か vs あなたが一番よく知っている人

ではどうしたら「自分という顧客」に欲しいと思ってもらえるのでしょうか。ここでちょっと実験です。次の問の答えを考えてみてください。

  1. 駅前を歩いているあなたの知らない人を一人だけランダムにピックアップし、その人に何をしてあげれば喜んでくれるかを考えてみてください。

知らない人を喜ばせるには?という問いなわけですが、どうでしょうか。結構考えるのが難しいというか、考えるには考えたけど合ってるかどうか分からないといった感じですかね。

では、次の問だとどうでしょうか?

  1. あなたが「この人のことはよく知っている、分かっている」という方を一人、思い浮かべてください。家族でもいいし、恋人・配偶者でもいい、友達でも同僚でもいいです。あなたが何でもできるとして、その人に何をしてあげると喜んでくれるでしょうか?

たぶん、さっきよりも随分と考えやすかったのではないかと思います。僕だったら妻を思い浮かべて「近所の○○(ケーキ屋さん)の生チョコを買ってこよう」などと答えます。

自分を喜ばせられないのは「自分のことが分かっていない」から

最初の問と2番目の問の違いってなんでしょうか。答えは「相手のことをどれだけ理解しているのか」です。

ランダムにピックアップした知らない人だと、僕たちは全く情報を持っていません。だから何をしたら喜ぶか分からず、当てずっぽうで答えるしかなくなります。一方、一番理解している人のことであれば、僕たちはたくさんの情報を持っています。その情報を参考に、何をしたら喜ぶかをかなりの精度で答えることができるわけです。

自分が「欲しい」と思う目標を設定する場合も、基本的には同じです。自分についてどれだけ理解できているかで、魅力ある目標を設定する難易度が変わります。自分のことが分かっていれば分かっているだけ、自分の欲しいと思える目標を設定することができるようになるのです。

頑張って目標を考えてみたけど、どうもしっくりこない。時間と労力をかけるだけの踏ん切りが付かない。

そんな風に感じているのであれば、ひとまずは「自分を理解するための取り組み」にチャレンジしてみると良いかと思います。自己理解のための具体的な取り組み方については、下記の記事を参考にしてみてください。

www.behavior-assist.jp

十分な自己理解があれば「欲しい目標」に辿りつくことができる

自分についての情報を十分に持てている場合は、その情報を材料にして「何が欲しいのか」を分析して探り当てます。ここで使える思考ツールが岡田斗司夫さんの「スマートノート」というやつ。

あなたを天才にするスマートノート

あなたを天才にするスマートノート

スマートノートについては下記の記事でも取り上げました。

www.behavior-assist.jp

スマートノートの手法を使って分析してみると、例えば次のようになります。

最初に思いついた目標:早起きしたい

なぜ早起きしたいのか?(分析):

理由その1。
講座がある日などはいつもより早く起きなきゃいけなくて、リズムが乱れる。睡眠時間が短くなって負担感が大きいので、それを解消したい。
⇒ つまり、常に十分な睡眠時間を確保して、ラクな状態で仕事したい。

理由その2。
ダイエットのために水泳にいくのだが、仕事を始める時間が遅いと、仕事を一時中断してスポーツクラブへ行くことになる。その場合、水泳した後に仕事の続きになる。だるいし眠い。全部終わってから泳ぎに行きたい。
⇒ つまり、早い時間に仕事を終え、解放感を味わいつつ気兼ねなく泳ぎに行きたい。

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太字の箇所が僕の「欲しいもの」になります。これが分かってしまえば、達成することで欲しいものが手に入るように目標を調整すればいいのです。ここまで分かっていれば、目標設定は超簡単なのです。

まとめ

本記事でお伝えしたことは、次の3点です。

  1. 当たり障りのないスローガン的な目標は、やたらと商品やサービスのアピールをしてくる営業活動みたいなもの。欲しくもないものに対価を払う気にはなれない。時間や労力という対価を払いたくなるくらい「欲しい」と思えるように、自分に対して目標をプレゼンしよう。
  2. 何をしたら相手が喜ぶかは、相手のことを理解していればしているほど簡単に思いつくことができる。つまり、自分について十分に理解していれば、自分が欲しくなる目標を設定するのも容易になる。
  3. 自己理解という材料を使って、最初に思いついた目標を分析することで、自分の欲しいものへと辿りつくことができる。分析にはスマートノートで紹介されている手法を使うと便利。