行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

時には先延ばしも悪くない、その「先延ばしの効果」に注目してみよう

Q.
先延ばしって常に良くないことなのでしょうか。どうにもやる気が起きない時は先延ばししてもいいと思うのです。

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A.
先延ばしをしているという行為だけを見ていては、良くも悪くもレッテル貼りになてしまいそれ以上の評価ができなくなります。その先延ばしはどのような状況・背景(文脈)で起きていて、どのような効果(機能)を持っているのかを検討してみれば答えが見つかるでしょう。

解説:機能的文脈主義のモノの見方・捉え方を知れば、目の前の先延ばしを評価できる

先延ばしをしてはいけない理由

先延ばしが常に良くないことなのかどうか考えるために、まずは先延ばしがダメな理由を挙げてみましょう。

先延ばしがダメな理由として最初に思いつくのは「追い詰められる」ということです。やるべきことをやらずに放置した結果、状況が悪化し手遅れになってしまうことがあります。そうすると何らかの損害が出てしまったり、人からの信頼を失ったりと、あまり良いとはいえないことが起きてしまいそうです。

手遅れになる程ではなくても、追い詰められた結果、非常に大きな負担感を背負い込むことになります。先延ばし癖に苦しんでいる方であれば、明日の〆切に青くなりながら、必死に作業を進める・・・という経験をしたことがあると思います。あの身体的・精神的な負担感は、そうそう味わいたいものではないですよね。

また追い詰められていない状態でも、行動していないことがストレスとなることもあります。やらなきゃいけないことを気にしているのに行動できないわけですから、そのことがずっと気がかかりなままです。常にそのことが頭から離れず気にしていなきゃいけない日常は、ちょっと気が重くなってしまいます。

というわけで、先延ばしをしてはいけない理由は3つ。

  1. 手遅れになって実害が出てしまうかもしれないから
  2. 追い詰められて大きな負担感を感じながらの行動になるから
  3. やるべきことをできていないのがストレスとなるから

先延ばしをしてもいい理由

ではやっぱり先延ばしはよくないことなのでしょうか。それがそうとも言えません。

例えば、何がを決断しなければならないとき、問題が起きない範囲であれば決断を先延ばしにした方が効果的な場合があります。何故かというと、後になればなる程、その物事についての情報が増えるからです。よく分からないまま決断するよりも、よく分かった上で決断した方が、当然良い結果につながります。

あるいは行動することがマイナスに作用するという場合もあるでしょう。例えば毎日残業続きで疲れているのに、帰宅後も副業の作業をするべきでしょうか。やった方が良い場合もあるでしょう。でも、もしやり過ぎで身体を壊してしまうような状況であれば、今日はやるべきことを先延ばしにして休息を取った方がいいはず。

精神的に自分を追い詰めて、強迫観念を持ちながらやるべきことをやっている状態も、あまり健全とはいえないですよね。こういう場合は、先延ばしをしてしまういい加減さが救いになることもありそうです。

行動や状況の形態ではなく「機能」を見よう

結局、先延ばしは良いのか悪いのかどっちなのでしょう。一ついえることは、その先延ばしが意図的で狙いのあるものなのか、それとも単なる逃避・回避が理由で生じているものなのか、という違いで判断できそうだという点でしょうか。

先延ばしというのは単なるレッテルに過ぎません。行動や現状を観察し評価した結果、先延ばしをしているとレッテル貼りをしているわけです。

それ自体は構わないのですが、そのレッテルを表す言葉「先延ばし」に関係づけられた様々な概念を、盲目的に自分や自分の行動に適用してしまうと「先延ばしは良くない!ダメ、絶対!」みたいになります。

必要なのはレッテルを貼っている対象を具体的にみることです。いま先延ばしと表現したけど、それは具体的にどのような行動・状況を指しているのだろうか。先ほど書いたように、先延ばしがマズイ場合もあれば、問題ないし寧ろその方が良い場合もあるわけです。いま目の前にある先延ばしは、果たしてどうなのかを「具体的」に考えなければなりません。

先延ばしという行為や振る舞いだけを見ていては、その判断ができないのです。先延ばしがどういう文脈で生じていて、どのような機能を持っているのかを分析してみてください。そうすればその先延ばしがいいかどうかが判断できるはずです。

これが機能的文脈主義のモノの見方・捉え方。先延ばしに限らず、様々なものごとについて判断するのに欠かせない視点です。