個人事業家・フリーランスのための行動分析学 - 行動アシストラボ 矢野浩史

僕たちは行動分析学をもっと”使える”道具にする。

考えて行動できない2つの理由と、それでも上手く行動する2つのコツ

ついつい考えなしに行動してしまい、手痛い目に遭ってしまうことがしばしばある。繰り返し失敗するのは嫌なので、行動する前にちゃんと考えられるようになりたい・・・という悩みを聞くことがあります。

考えるより先に行動しちゃって失敗を繰り返す人からみると、しっかりと考えてから行動できればもっと上手くやれるのではないかって思うのかもしれませんね。

しかし、「考えなしに行動する」も「考えてから行動する」も、実はそんなに大差ありません。どちらも同じくらい失敗します。重要なのは、考えて行動し、行動して考えるというサイクルを回し続けることです。

つまり、考えなしに行動してしまうことで悩んでいるなら、行動する前に考えられるようになることではなく、行動してしまった後に考えられるようになることを目指しましょう。

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考えて行動できない2つの理由

考えなしに行動して失敗した痛い経験

考えなしの行動で失敗してしまったり、痛い目に遭ったりしたことがあれば、もっと良く考えてから行動できるようになりたいと願うものだと思います。予め考えを巡らせることができれば、もっと賢く行動できるのではないか。失敗を減らすことができるのではないか。そう思ってしまうのは自然なことでしょう。

一方で、そう願いつつも、実態は依然として考えなしに行動してしまう・・・。なぜちゃんと考えてから行動できないだだろう・・・。悩ましい問題ですが、考えずに行動してしまう理由は2つあります。

考えずに行動してしまうのは何故か?

1つ目の理由は「考えることよりも行動することを優先したい」からです。行動する前に考えるということは、ひとまずは行動することを我慢しなければいけません。

何か発見や気づき、閃きがあって「すぐに行動したい!」状態で、行動を抑制するのは難しいものです。結果、考えることよりも行動することを優先してしまうわけです。

2つ目の理由は「考えるという行為への負担が大きい」からです。

考えることよりも行動することを優先しがちな場合、考えるという行為についての経験が乏しくなります。慣れない行動、経験の少ない行動は、その実行負担が大きくなります。慣れないことよりも、慣れていることの方がやりやすいのは当たり前ですよね。

考えることを避ければ避けた分だけ、考えたという経験が得られないため、考えることに慣れることができません。いつまでも考えることへの負担が減らないのです。

以上の2つの理由を踏まえた上で、ではどうすればいいのかを考えて(!)みましょう。

考えなしに行動してもいい、終わってからが大切

物事を上手くやるために必要なのは仮説検証のサイクル

少し話は変わりますが、そもそも「考えて行動したい」のは何故でしょうか。いまよりももっと上手くこなしたい、いまは失敗することが多いので失敗することなく遂行できるようになりたい、といった辺りではないかと思います。

仕事に限らず、何かの物事を上手くやるために大切なのは「仮説検証」のサイクルです。

○○をしたら××になるはず・・・という仮説があり、その仮説通りに試してみた結果、実際には△△だった。では、次は□□を試してみよう。

その繰り返しによって、取り組んでいることに習熟していきます。何かを上手くできる人は、無意識のうちにかもしれませんが、細かな仮説検証のサイクルを回していたりします。

ちょっと試してみて上手くいかないのでやり方を変え、また試してみる。それで上手くいけば、その方法が有効であることを成功体験として蓄積する。そんな繰り返しによってスキルなり能力なりが伸びていきます。

考えるが先でも、行動するが先でも実は大差がない

考えてから行動してもやっぱり失敗は避けられない

いまよりももっと上手くできるようになりたい、失敗を繰り返したくないのであれば、仮説検証のサイクルをなるべくこまめに回していくといいでしょう。一番マズイのは、このサイクルが回っていないことです。

考える前に行動する人であろうと、考えてから行動する人であろうと、仮説検証のサイクルが回っていないのであれば大差はありません。どっちも等しくマズイのです。

この記事を読んでいるあなたは、考えなしに行動してしまうことに悩んでいるのだと思います。だから、ちゃんと考えてから行動したい。その方が失敗が減るはずだ、と考えているのかもしれません。

残念ながら考えてから行動するようにしたところで、失敗は大して減りません。行動する前に考えたことは、机上の空論です。経験が豊富にあることならともかく、そうでないなら事前に考えたことは地に足の付いていない、実効性の乏しいものなのです。役に立ちません。

鶏が先か、卵が先か

でも、それでいいのです。まずはその机上の空論に沿って行動してみて、実際はどうなのかを学べばいいのです。それを次の思考に活かす。そこが大切です。

考えなしに行動してしまう場合も同じ。とりあえず行動しちゃうこと自体は問題ありません。大切なのは行動することで得た経験を、次の行動に活かすことです。なので必要なのは「行動する前に考える」ではなく「行動した後に考える」です。

考えることを先にするか、行動を先にするかはどっちでもいいのです。鶏が先か、卵が先かという話でしかありません。重要なのは考えたら行動する、行動したら考えるというサイクルを回すことなのです。

行動することが優位になりやすい人は「実験」という感覚で行動しよう

とはいえ「考えて行動したい」と望む人は、考えなしに行動してしまった結果、嫌な経験をしてしまったのだと思います。だから、そんな失敗をもうしたくないので、考えてから行動できるようになりたい、と望んでいるのでしょう。

しかし、仮説検証のサイクルに失敗はつきものです。失敗から何を得て、どう行動を変えていくのかが要点ですので。

コツは小さく失敗することです。大きく致命的な失敗をしてしまった場合、次のチャレンジができなくなるかもしれません。それではせっかくの失敗を活かすことができません。

行動する時に意識しておいてもらいたいのは、小さく行動することです。とりあえず行動しちゃうんだけど、もし失敗してもそんな大きな損害になりそうにないことをやろう、と。それだけ意識しておいてもらえれば大丈夫です。

行動は全て実験である。そんな感覚で行動してもらえればいいですね。

”考える”のハードルを下げるために質問と情報を用意する

質問があれば何を考えればいいか分かる

まずは2つの質問だけを抑えておこう

さて、行動することを優先してきた人には、もう1つ問題があります。それは「考えることへの負担感が大きい」という点。

いざ考えようと思っても、何を考えたらいいか分からない。考え始めてみたものの何も思い浮かんでこない。何となく感覚的に掴んでいることはあるけど、うまく言葉にすることができない。

考えることに慣れていない人は、そんな悩みを抱えているのではないでしょうか。そんな方への初級トレーニングとしてお勧めなのは、「汎用的な質問」を使ってみることです。次の2つの質問だけ、覚えておいてください。

  1. 何故、○○なのか?
  2. ○○ってつまり具体的に何?

2つの質問を使った例

この2つの質問は、何かについて考えを巡らせる時の基本になります。例えば次のような感じ。

  • 彼女に喜んでもらえると思い、ケーキをお土産に持っていったが、いまいち反応が悪かった。
  • なぜ彼女は喜んでくれなかったのか?
    • 好きなケーキじゃなかったかもしれない(★これかなぁ・・・)
    • 甘いものを食べたい気分じゃなかったかもしれない
    • 偶々機嫌が悪かったかもしれない
    • 何か僕に怒っているのかもしれない
  • じゃぁ、彼女が好きなケーキってつまり具体的には何?
    • いぜん喫茶店にいった時はチョコレートケーキを頼んでいたな
  • 仮説:きっとチョコレートケーキは好きだろうから、今度はチョコレートケーキを持っていったら喜んでくれるはず

いかがでしょうか。何故?という質問と、具体的には何?という質問だけで、結構色々なことが考えられます。

質問に答えるには材料が必要

仮説検証を繰り返すと質問に答えるための情報が増えていく

ところで質問ができたとしても、それに答えられるかどうかは分かりません。答えられたとしても、その答えの精度が十分とはいえない場合もあります。質問にちゃんと答えるためには、答えを作り出すための材料が必要なのです。そしてその材料とは「情報」です。

先ほどの例で考えてみましょう。ケーキをお土産にもっていったが、いまいち反応が悪かった。これだけしか情報がないため、「何故?」という問いかけに想像で答えるしかありませんでした。

仮説検証のサイクルでは、最初はそんな風に想像で考えるしか無い場合もあります。しかし、仮説検証を続けていると、次第に情報が増えていきます。

例えば、「今度はチョコレートケーキを持っていったところ、彼女はニヤニヤしながら美味しそうに食べていた」という結果が得られたとするなら、「前回持ってきたケーキが好みじゃなかったんだろう」「チョコレートケーキは好物なのだろう」といった想像が正解である可能性が高くなります。

現実に即した情報が増えると、正確かつ効果的な答えが出せる

では、更に次のようになるとどうでしょうか。彼女に対して「この前、持ってきたケーキは好きじゃなかった?」と聞いてみたところ、「そんなこと無いよ、好きだよ」と答えてくれました。そこで更に「でも前回はあまり美味しそうじゃなかったよね?」と質問を重ねてみます。彼女の答えは「虫歯ができていて甘いものを食べた時にしみて痛かったの」でした。

随分と情報が増えてきました。どうやら虫歯で痛かっただけであって、前回持ってきたケーキも好きなようです。来週、またお土産にしてもいいかもしれませんね。

これが仮説検証のサイクルです。チョコレートケーキを持ってくるや、彼女に実際に尋ねてみる等の行為が、仮説の検証行為になっているのです。検証が進めば進んだだけ、対象の物事への理解が進み、質問を投げかけた時に正確かつ効果的な答えが出てくるのです。

質問と情報を揃えれば、考えることはどんどん容易になる

考えるという行為が得意でない場合、すぐに考えることができるようになるわけではありません。ある程度の訓練は、どうしても必要になります。

自転車と同じです。自転車に乗れない子供が、今日から自転車に乗ろうと思ってもすぐに乗りこなせるわけではありません。自転車に乗る練習を繰り返して、次第に自転車に乗るための能力を獲得することになります。

考えることもそれと同じです。質問に答えることを繰り返しながら、考える訓練をするといいでしょう。仮説検証を実践することで情報を獲得しながら、より良い答えが導き出せるようになることを経験するといいでしょう。

繰り返した分だけ考えることに慣れ、スムーズに考えることができるようになります。

まとめ

本記事でお伝えしたことは、次の3点です。

  1. 考えずに行動してしまう理由は2つ。(1)考えることより行動することを優先したいから、そして、(2)考えることに慣れていないため考えることへの負担が大きいから。
  2. 何かを上手くやるために必要なのは仮説検証のサイクル。その前提で考えれば、「考えてから行動すること」と「考えずに行動すること」には大差が無い。ついつい考えなしに行動してしまうなら、行動する前に考えるよりも行動した後に考えるようにした方が、仮説検証のサイクルを回しやすい。
  3. 考えることの負担感を軽減するための訓練をしよう。2つの質問「何故○○なのか?」「○○とはつまり具体的に何?」を使ってみよう。仮説検証を繰り返す中で情報を獲得することができれば、質問に答えやすくなるし、回答の精度も高められる。

尚、本記事と反対で「考えすぎてしまってなかなか行動できない」場合は、下記の記事を読んでみてください。

www.behavior-assist.jp