行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

実用性の高いアイデアを作る能力は「環境」で伸ばす

実用性のないアイデアは問題を解決しません。そればかりか、そもそも実行困難で試すことすらできない、という場合もあります。

このような机上の空論的なアイデアではなく、より実用性の高いアイデアを作るためにも、アイデアを試すための機会が欲しいところ。現実という実験装置を上手く使えば、アイデアを試すことを通して情報や経験を得ることができます。

そういった現実の情報や経験をアイデアへとインプットしていけば、机上の空論から脱出することができます。

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アイデアは実践によって実用レベルに到達する

なぜアイデアが机上の空論になるのか

アイデアを思いつくには思いつくのだけど、どうも良いアイデアじゃないような気がする。あるいは良いアイデアだと思って試してみたら、全く実用的ではなかった。

良さそうなアイデアなんだけど、実は机上の空論である、と。そんなことはよくあるわけです。

なぜ、頑張って考えたことが机上の空論になってしまうのでしょうか。思いついた時はとっても良いアイデアだと思えるのに。

端的にいえば現実に対する理解不足が原因だと思われます。アイデアの対象となる物事についての情報や経験が不足しているため、効果性が無かったり実行困難なアイデアになったりします。

現実という実験装置が実用性を高める

もっと実用性の高いアイデアを作るためには、アイデアの素となる情報や経験を増やす必要がありますが、そのために必要なのは実践です。

最初に考えたアイデアは、思いつきレベルで恐らく現実的ではない・・・という前提で、試しにやってみる程度で取り組むのがいいでしょう。初期段階のアイデアの役割は、問題の解決や何か新しいものを作り出すことではなく、現実という実験装置から情報と経験を収集することなのです。

アイデアを検証可能な仮説という形に置き換えて、現実に放り込んでみましょう。それで得た情報をもとに、再度アイデアを練ってみる。その繰り返しがアイデアの実用性を高めてくれます。

上記のような仮説検証のサイクルについては、下記の記事で書きましたので参照してください。

www.behavior-assist.jp

www.behavior-assist.jp

実用的なアイデアを鍛える環境を持つ

前提としての創造力の鍛え方

以上を踏まえて、実用的なアイデアを作れるようになるための「現実の使い方」について考察していきます。

その前に大前提として、アイデアを作り出すための思考回路を持っておく必要があります。この思考回路はトレーニングによって手に入れることができます。詳しくは下記の記事を読んでいただけるといいかと。

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本記事ではアイデアを考える力はあるので、それをより実用レベルへとレベルアップさせたいという要望に応えたいと考えています。

アイデアを使える場所を持とう

現実という実験装置を使うということは、思いついたアイデアを試す場所があるということです。試す機会がなければ、現実からのフィードバックが得られません。

必要は発明の母、という言葉があります。先にアイデアを必要とする場を確保しておくといいでしょう。例えば次のようなものです。

  • 課題を抱えた仕事で最初の仮説を試すスケジュールを予め決めておく
  • 会議などを主催し、何らかの意見を言ったり、促したりする立場になっておく
  • オリジナルの講座や研修を開催してみる
  • ブログなどの日常的に自分の意見をまとめて発信する場を持つ

未解決の課題を試すためのスケジュールを決めることは、いうまでも無く、その時までに何らかの仮説とその検証方法を決めておく必要があります。会議で意見をいう場があれば、自分のアイデアが他者によって検証されることでしょう。

オリジナルの講座やブログといったものは、自分なりの何かを形にして相手に届ける必要があります。これも受講者や読者によってアイデアを検証することが可能です。

これらは一例に過ぎませんが、要は何かアウトプットする機会を持っておくと、それを利用してアイデアを試すことができるということです。

アイデアを使わざるを得ない状況に身を置こう

しかし、アイデアを試す機会があるだけでは、実際にアイデアを試すことをするかどうかが分かりません。機会をスルーしたっていいわけです。ですので、試す機会があるなら、試さざるを得ない状況を作ることが大切です。

仮説を試すスケジュールを決めたなら、そのスケジュールを誰かに宣言なり約束なりするといいでしょう。お客さんや上司のように、約束を破りづらい相手であれば効果的です。また会議を利用するなら、会議の成果としてどういったものを出すのか約束してもいいでしょう。

このように他者を介在させることで、アイデアを出したり試したりせざるを得ない状況を作ることができます。

他の人に協力を求めることが難しいようであれば、行動契約などが使いやすいでしょう。行動契約については下記を参照してください。

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アイデアを試す機会があり、試さざるを得ない状況に身を置けば、自然と現実という実験装置を活用することになります。これを繰り返していくうちに、実用的なアイデアを出せるようになっていくでしょう。

アイデアの質を高める自分への働きかけ

1ランク上を目指すための自分への働きかけ

アイデアを試しながら情報を集め、実用性を高めていく取り組みに加え、アイデアの質を高めるための思考活動にも取り組むといいでしょう。

アイデアは出てくれば何でもいいというわけではありません。少しでも効果の高いアイデアが望ましいわけです。そのために大切なのは、自分で考えたアイデアにすぐにOKを出さないことです。

良いアイデアかも・・・と思ってもそれでOKを出さずに、もう少し良いアイデアはないだろうか?と一歩踏み込んでみてください。これも悪くないけど、更に良くするためには何が必要だろうか、といった問いかけをしてみると、アイデアの質が高まります。

基本的には仮説検証で実用性を高めていきますが、現状で持っている情報や経験をフル活用することも大切。そのためにも上記のような質問を自分に投げかけてみるといいでしょう。

より高い質を求める他者からの働きかけがあるといい

質を高めるための取り組みは、どこまでやればいいかがよく分かりません。これでOKそうだ、という基準が掴めていればいいのですが、最初からそういった基準を持っている人はいません。

なので、ここはまた他者の協力が欲しいところ。特に自分より仕事のできる人、成果を繰り返し出している人にお願いできるとベストです。その人達の基準でアイデアに「OK/もう一歩踏み込んで」の評価をしてもらえれば、その人達の基準に到達するまで頑張ることになります。

それは同時に、自分よりできる人達の基準に触れるということですので、アイデアの質をどこまで高めていけばいいのかを体験的に学ぶことができます。

そうするうちに自分の中にも基準が作られていきますから、そうなったら今度は自分で判断しながらアイデアの質を高めていけばいいのです。

まとめ

この記事でお伝えしたことは次の3点です。

  1. 十分な情報や経験がないと、アイデアは机上の空論になりやすい。情報や経験を得るためには、アイデアを試してみることで現実からのフィードバックをもらうことになる。初期段階のアイデアの目的は、問題を解決することではなく、現実への理解を深めることにある。
  2. アイデアを試す機会を予め設定しておくと、思いついたアイデアを実践しやすくなる。また試す機会があってもスルーしてしまっては意味がないので、アイデアを試さざるを得ない状況に身を置くといい。
  3. 思いついたアイデアにすぐにOKを出すのではなく、更に良くするためには何が必要だろうか、などと自分に問いかけることで、アイデアの質を高める。どこまで質を高めれば良いかは、自分より仕事のできる人達にアイデアを評価してもらうことで、質についての基準を自分の中に育んでいくといい。