個人事業家・フリーランスのための行動分析学 - 行動アシストラボ 矢野浩史

僕たちは行動分析学をもっと”使える”道具にする。

やる気はあるけど行動できない人のための行動目標と行動契約

あれやってみよう!とやる気が盛り上がってくることって、時々ありますよね。でも、そんなやる気が盛り上がっているゴールデンタイムだけど、ちゃんと行動につながっているかというとそうでもないわけです。

なぜか。まず根本的な話として、やる気が出るメカニズムと行動が生じるメカニズムは全く別物なので、やる気はあるけど行動しないとか、やる気はないけど行動するという一見矛盾した状態は普通に起こり得るのです。だから不思議でもなんでもないのです。

そのことを踏まえた上で、やる気をちゃんと行動へとつなげたいのであれば、行動が生じるメカニズムを踏まえた工夫が必要になります。本記事では行動目標と行動契約を活用した方法をお伝えします。

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やる気があるけど行動できない人が抱える3つの問題

やる気の正体を明らかにしておこう

まず最初にハッキリさせておきたいのは、やる気の正体についてです。なぜやる気を感じているのでしょうか。

僕たちが「やる気がある」と思える時、そこにはある種のポジティブな感情が伴っているものと思われます。その感情を自覚し、その時の自身の状態について言及しようとする時に「やる気がある」という表現を選択しているのでしょう。

では、やる気を示している感情はどこから生じているのかというと、次の2つが考えられます。

  • ある未来をイメージし、それを欲しいと思える
  • その未来をイメージした時に「やろう」「やるぞ!」といった思考が生じている

感情はレスポンデント行動と呼ばれるものに分類されます。レスポンデント行動は、特定の刺激によって自動的に誘発されるもの。やる気は上記のような未来のイメージであったり、そのイメージをきっかけとして「やるぞ!」と考えることを刺激にして、自動的に誘発しているのです。

以上がやる気の正体。そして問題は「やる気を感じること」と「行動できること」は全く一致しないという点にあります。つまり、やる気はあるんだけど行動できないとか、やる気はないけど行動できるといった、一見、矛盾しているように思える状態は普通に生じ得るのです。

これは感情の誘発メカニズムと行動が生じるメカニズムが違うことから起きる現象なのですが、このあたりに言及すると別の話になるので割愛します。基本的には下記の記事で述べていることと同じです。

問題1:情報と経験の不足から具体的な行動が見えない

さて、ではやる気はあるけど行動できないという状況において、行動できないのはどういった辺りに問題があるのかを検討していきましょう。問題は大きく分けて3つです。

1つ目の問題は、情報と経験の不足から具体的な行動を設定できない点にあります。

この問題はイメージしやすいと思います。どれだけやる気があろうとも、何をしたらいいか分からなければ、行動しようもありません。まずは具体的な行動が設定できるようになる必要があるのです。

ややこしいのは行動に落とし込めていると勘違いしている場合。例えばつぎのような表現は具体的な行動としてふさわしいでしょうか?

  • 節約する
  • 出版する
  • ダイエットする
  • お金を稼ぐ

これらは全て具体的な行動では「ありません」。行動の具体性を判断したければ、それを実行している場面を映像に移せるかどうか考えてみてください。

例えば、節約している場面が映像に移っているとして、それは何をしている場面でしょうか。答えられないようであれば、具体的な行動を定義できていないということになります。レシートを財布に入れる、家計簿をつけている、今月の予算を計算している等が具体的な行動に近い表現になるでしょうか。

他の例も次のように具体的な行動として表現できます。

  • 出版する → 編集者と打ち合わせする、企画書を書く、パソコンで執筆する等
  • ダイエットする → 食べたものをメモに残す、ジョギングする等
  • お金を稼ぐ → 求人サイトでバイトを検索する、新しい商品の企画を練る等

このように具体的な行動を設定するためには、やろうとしていることについてのある程度の情報・知識が必要となります。それがないと何をどうしたらいいか、全然わからないのです。

例えばあなたは次のことについて具体的な行動を設定できるでしょうか?

  • 火星に有人ロケットを飛ばす

設定できるという方は相当なマニアの方でしょう。普通は具体的な行動が出てきません。それは火星にロケットを飛ばすということについての知識が不足しているからです。

このような場合、まず必要となるのは情報を収集することなのです。

問題2:理想的過ぎて行動の実行コストが大きい

次の問題は「理想が高すぎて行動の実行コストが大きくなってしまうこと」です。

具体的な行動を設定することができても、その実行負担が大きくなるようではなかなか行動することができません。次の例を見てもらえれば分かると思います。

  • 選択肢1:誰も反論できないような非の打ち所のない3,000文字以内の文章を書いてブログに投稿する。
  • 選択肢2:粗はあるかもしれないけど誰か一人でも役に立つ人がいればいいというスタンスで、文字数にこだわらずに文章を書いてブログに投稿する

前者の行動を完遂するのはとても大変です。もしかしたら不可能かもしれません。自分にこのようなハードルを課してしまうと、なかなか行動を完了させることができません。負担が大きくなってしまうのです。

負担感の大きな行動は、やろうと思ってもなかなか手がでなくなります。

一方で後者の行動であれば、前者に比べて随分と実行しやすくなっているはずです。もしこれでも負担感が大きく感じるようであれば、次のような行動も考えられます。

  • 選択肢3:今日考えたことを3行の箇条書きにしてブログに投稿する

かなり簡単な行動になってきました。スモールステップだとかベイビーステップだとかいわれる方法ですね。

もちろん、実行負担を軽くすればいいというものではありません。簡単にしすぎたために行動への魅力が薄れてしまうということもあります。役に立つ文章を書きたいと強く思っている人にとって、選択肢3はもしかしたら実行する価値のない行動になっているかもしれません。

自分にできること・能力のレベルと自分のやりたいこととの間で、上手くバランスをとる必要があるのです。ちょうどいいハードルを設定できるといいですね。

問題3:緊急性の高い仕事のせいで時間や労力が割けなくなる

具体的かつちょうどいいハードルの行動が設定できたとしても、それでも行動できるとは限りません。僕たちのやりたいことには「ライバル」が存在するのです。

例えば、あなたに何かやりたいことができて、そのためのWebサイトを作ろう!と思ったとします。あなたにはWebサイトを作る十分な技術はあるので、やりさえすれば完成することでしょう。

しかし、同時にあなたには今日やるべき仕事もあります。先ほどきた問い合わせのメールに返信しないといけません。来週のセミナーに備えてテキストを作らないといけません。そういえば先週来た請求書は今日中に処理しないといけなかった…などなど。

緊急性の高い仕事は僕たちの時間と活力をどんどん奪っていきます。それらを終わらせてからやりたいことに取り組もうとしても、終わった頃には時間も活力も尽きているかもしれません。

こういった理由で、やりたいと考えていた行動になかなか手をつけられないでいる、というパターンもあるのです。悩ましい問題です。一ついえるのは、緊急性の高い仕事を放置するのは難しいということ。意思の力でどうにかなる問題ではありません。

緊急性をコントロールする術が必要です。

具体的には時間と活力に「ゆとり」を作り出すことと、やりたいことの緊急性を高める工夫が求められます。

現状を進展させるのに役立つ行動目標とコミットメント

行動の方針を具体的に示せ:行動目標の設定

ではやる気を行動へとつなげるために幾つかのポイントをお伝えします。

最初にやるべきことは「行動目標」の設定です。行動目標とは達成すべき行動の量と質について記述したものです。

通常、目標といえば達成したい成果について記述した成果目標になりますが、この場合、目標を達成できるかどうかに偶然が関わってきます。ベストを尽くしても、目標を達成できないことがあるんですね。

一方、行動目標に記述するのは行動の質と量ですから、行動することさえできれば達成することが可能です。行動目標は行動することに集中しやすいのです。

やる気を感じているのであれば、それを具体的な行動へとつなげるための一歩として、行動目標に落とし込んでみてください。あなたのやる気はどんな行動目標を達成することを求めているのでしょうか。それについて記述してみるといいです。

行動目標が設定されることで、当面の間、集中すべき行動の方針も明確になります。

3つのステージに合わせて行動目標の目的を切り替える

行動目標の設定について、もう少し詳しくみていきます。

行動目標はやる気が具体的な行動につながるように設定すべきですが、同時にもう1つ考えるべきことがあります。それは行動目標を設定しようとするその当人が、やろうとしていることについてどのステージにいるのか、という問題です。

本記事の前半でお伝えした3つの問題のうち、1つ目は具体的な行動を設定するための情報が不足しているということでした。そして2つ目の問題は、適切なハードルを設定する難しさについてでした。行動目標を設定する場合は、この2つの問題を考慮に入れなければなりません。

やろうとしていることについて、いまいるステージが次の2つのどれに該当するかを確認してください。

  1. やろうとしていることについて詳しくない、つまり情報・経験が不足しているステージ
  2. やろうとしていることについて十分にできない、つまり能力が不足しているステージ
  3. やろうとしていることについて成果の獲得を目指せるステージ

このうち1または2に該当する場合は、それで行動目標の設定方針がある程度定まります。1に該当するのであれば、行動目標として設定すべきなのは「情報収集を目的とした行動」になります。2に該当するのであれば、「能力・スキルの獲得、向上を目的とした行動」になります。

やろうとしていることについて詳しく知らないにも関わらず、一足飛びに成果を求めるのは難しいでしょう。具体的に何をしたらいいか判断できないため、効果的な行動目標を設定できません。なので、まずは「知る」ことから始めましょう。知るためには、どんな具体的な行動を実行すればいいでしょうか。それが行動目標になります。

知るための行動目標 設定例:

  • 糖質制限ダイエットについての入門書を三冊読み、自分なりにポイントをまとめる
  • ブログでどんなテーマの記事が求められているかを知るために、某匿名ブログに10個、違うテーマの記事を書いてそれぞれの反応を確認する
  • 法人のWebサイトに訪れてくれる人がどんなコンテンツを求めているかを知るために、3種類のセミナーを開催して反応を確認する

また、やろうとしていることについて十分な能力・スキルが無いにも関わらず、すぐに成果を求めてしまうと失敗する可能性が大きくなります。必要なのはトレーニングであり、そのための具体的な行動を目標として設定するのがいいでしょう。

トレーニングのための行動目標 設定例:

  • 現状、何となくで書いているブログの記事を、週2本、それぞれ3000文字以上で書けるようになる
  • ダイエットのために始めた水泳で、25mを平泳ぎで30秒以内のペースで泳げるようになる
  • 最近購入したデザイン本で学んだことを3つピックアップし、それに沿って昨年作ったWebサイトのレイアウト変更する

やろうとしていることについて知っているし、能力・スキルも十分な場合、成果に貢献する行動を目標として設定することになります。

以上のようなポイントを押さえた上で行動目標を設定すれば、具体的な行動が思いつかないとか、ハードルが高すぎるといった問題は回避しやすくなるはずです。

行動の緊急性をぐっと高めよう:コミットメント(行動契約)

さて、素晴らしい行動目標が作れたとしても、まだ解決できていない問題があります。3つの問題の最後、緊急性の高い仕事に時間と労力を奪われてしまう件が残っているのです。

これについてはまず行動契約を設定しておきましょう。行動目標は行動できさえすれば達成することが可能です。ならば行動契約の持つ強制力を活用することで、行動目標を達成した未来をぐっと引き寄せることができます。

行動契約についての詳細は、下記の記事をご覧ください。

www.behavior-assist.jp

また、そもそも緊急性の高い仕事が多すぎて、どうにも時間を割くことができないような場合は、根本的には仕事を減らしていくことが求められます。何かを工夫をするためには、通常、その工夫を受け入れる余地が必要です。全てがギチギチに詰まっている状態では、新しい工夫を入れることもできません。

仕事を減らしていくためには、仕事を断ることも必要になります。このあたりの詳しいことについては、下記の記事をご覧ください

www.behavior-assist.jp

ある程度の時間的ゆとりはあるけど、それが上手く活用できていないという場合は、下記の記事に記載している「時間割ゲーム」を使ってみるとバッチリハマると思います。

www.behavior-assist.jp

最後に行動しやすくする工夫、というのも取り入れておくといいでしょう。僕たちの意思の力はとても弱いです。行動するのが難しい状況なのに、頑張って行動しようとするのはナンセンスです。失敗します。行動の環境を調整することで、少しでも行動するのに有利な状況を作ってください。こちらについても下記の記事に書いておりますので、興味がありましたら読んでみてください。

www.behavior-assist.jp

まとめ

本記事でお伝えしたことは次の3点です。

  1. やる気が行動につながらないのは3つの問題があるため。(1)やる気を具体的な行動へ落とし込むための情報・経験が不足している、(2)理想的過ぎる行動をを掲げて実行負担を大きくしてしまう、(3)緊急度の高い仕事に時間と活力を奪われてしまう。
  2. やる気を具体的な行動目標として表現する。やろうとしていることについて自分がどのステージにいるかを知り、それを踏まえて行動目標を設定すること。情報収集のための行動目標、トレーニングのための行動目標、成果のための行動目標。
  3. 行動目標に取り組む緊急性を高めておくことで、達成可能性を高めよう。行動契約を使えば緊急性を高めることが可能だ。