行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

やる気が出なくて仕事するのが辛い時は実行コストを工夫しよう

Q.
最近やる気が出なくて、仕事するのが辛いです。もっと楽な気持ちで行動できるようになりたい。

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A.
仕事するのが辛い状態だと現実逃避しがちですよね。で、現実逃避するとそこから仕事に戻るのは更に辛いですよね。これには実行コストという問題が関係しています。スモールステップ等で実行コストを減らす工夫をすると一石三鳥くらいでお得です。

解説:現実逃避してしまうとゼロスタートがマイナススタートになる

やる気は常に変動するもの。では行動は?

やる気やモチベーションはよく相談されたり、見聞きしたりする問題の1つですね。

やる気って一定に保つのはとても難しいです。何かを始めた時に、それに新鮮さを感じているうちはやる気が出やすいでしょう。睡眠が充足している時と不足している時では、やる気の出方も違うでしょう。プライベートで嫌なことがあれば、それもやる気に影響を与えるかもしれません。

まぁ、つまりやる気は常に変動するもの、という前提で考えた方がいいです。で、ここが大切なところなのですが、やる気は行動の原因ではありません。やる気は行動の原因ではないのです。大事なことなので(以下略

行動は常に、行動に伴ってどんな変化が起きるかで駆動されます。良い変化が生じる行動であれば、僕たちは積極的に行動します。そうでもないなら、あまり行動しません。

もしいま仕事があまりできていない状態なのであれば、行動に伴う変化があまり良いものではないのかもしれません。そしてその状況を自己観察した結果、いまの状態を「やる気が出ない」と表現しているのがあなたの現状。まぁ、つまり行動できないでいる今の状況を別の言葉で言いかえているだけなんです。

大きなマイナスからの行動は負担感が増大する

というわけで考えなければならないのは「やる気」ではなく「行動できないでいる現状」についてです。

少し気になる表現として「仕事するのが辛い」と書かれています。行動することへの負担感を感じているのでしょうか。もしかすると疲労感やネガティブな感情を持ちやすい状態なのかもしれません。

例えば疲労感を感じている場合、僕たちはダラダラ過ごす行動が増えがちだと思います。今日は何だか疲れてるなぁ…と思えば、すぐに仕事に取り掛かることよりも、Youtubeを開くなどして現実逃避する可能性が高くなります。

実行コストの高い行動よりも、実行コストの低い行動が優先されやすくなります。またじっくり取り組んでようやく何かの変化が得られる行動よりも、手軽でメリットのある変化が得られる行動の方が優先されやすくなります。

で、良くないことに一度現実逃避をはじめてしまうと、そこから仕事に戻るのは、最初から仕事に取り組むことに比べて負担が大きくなります。なぜなら「Youtubeを観るのを止める」というステップが加わるからです。

目の前に興味をひかれる面白そうな動画があるのに、ブラウザを閉じるか切り替えるかしなければならない。大したことのない行動かもしれませんが、意外と僕たちの足取りを重たくするものなのです。

つまりゼロスタートではなく、マイナススタートになっていて、そのマイナス分だけ負担感も増大していると考えてください。

実行コストを意識した行動の工夫が鍵

身体的・精神的状態があまりよくない時に、現実逃避を完全に抑制するのは難しいでしょう。ですので、少しでも現実逃避しなくて済む、あるいは少しでも現実逃避から戻る負担を減らす工夫を考えます。

これはずばり、実行コストを減らすのがいいでしょう。

例えば簡単にできる仕事だったら、そもそもそこから逃避しなければならない理由が小さくなります。現実逃避を抑制するのに役立ちます。また現実逃避から戻る場合でも、戻り先の仕事が簡単なものであれば、まだ比較的戻りやすくなるはずです。

実行コストを減らすメリットはそれだけではありません。現実逃避から戻るのが大変だということは、反対に一度仕事をはじめてしまえば、それを継続することはゼロスタートやマイナススタートよりも楽だということです。

例えばブログを書くとき等、この傾向が顕著になるのですが、一度書き始めることができれば意外とスムーズに書き続けることができたりします。行動には慣性が働いている、とイメージすると分かりやすいでしょうか。一度、ある方向に行動が動き始めたら、それを維持するのはそこまで大変ではないのです。

このように実行コストを減らす工夫は、一石三鳥くらいの効果が期待できます。では、具体的にはどのような工夫ができるのか…という話になるわけですが、一番分かりやすいのはスモールステップ&スモールタイムです。

1〜2分で終わる小さな行動に分解したり、5分だけ頑張ってみようと作業時間を短く設定してみたりするといいでしょう。それをとっかかりとして、やれそうだったら次の別の行動につなげたり、作業時間を伸ばしてみたりすることができます。

このあたりは下記の記事も参考になりますので、興味があれば読んでみてください。

www.behavior-assist.jp