行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

仕事が多すぎて忙しい人でも「断る技術」を身に付ける方法

Q.
忙しいのが辛く、もっとゆとりが欲しいのですが仕事が多すぎます。

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A.
この問題の本質は、仕事量をコントロールするスキルが欠如している、または未熟な点にあります。断るという行動レパートリーを獲得するために「仕事の依頼が来る状況」と「断るための行動」のリストを作成し、実行しやすいところから繰り返し実践してみるといいでしょう。

なぜ仕事が多すぎるのか?

仕事が多すぎる理由は簡単です。片付けられる仕事量よりも、入ってくる仕事量の方が多いからでしょう。INとOUTのバランスが取れていないわけです。

この問題のポイントは、入ってくる仕事量をコントロールできていない点にあります。理由は様々でしょうが「断る」ことをしないのが典型的なパターン。

なぜ断ることをしないのかというと、断ることよりも引き受けることの方が「目先のメリット」が大きいためです。目先の、という点に注目。

仕事を引き受けると、依頼してきた相手はどんな反応を示すでしょうか。少なくともネガティブな反応はしないでしょうし、どちらかといえばポジティブな反応が返ってくることが多いはず。

一方で仕事を断る場合、もしかしたら相手からネガティブな反応が返ってくるかもしれません。あるいはそのようなネガティブな反応を避けるために、角の立たない言い方を探さなければならず、そのことに負担を感じるかもしれません。

このように、仕事を引き受けることには目先のメリットが、仕事を断ることには目先のデメリットがついて回るため、どうしても引き受けるという行動の方が優位になりがちです。結果として、処理しきれないだけの仕事を抱えることになります。

多すぎる仕事には効率化では対処できない

この問題を解決する方法は2つ。1つは入ってくる仕事の量をコントロールできるようになること。もう1つは処理できる仕事の量を増やす、つまり効率化することです。

しかし、入ってくる仕事の量をコントロールできていない場合、効率化は根本的な解決につながりません。なぜなら効率化して時間の空きを作れたとしても、そこに新しい別の仕事を入れてしまうからです。

また効率化で何とかしようと考えてしまうこと自体、単なる現実逃避になっている可能性もあります。

仕事を断ることにデメリットが伴っているとう前提があるため、なるべくなら断ることをしたくないわけです。もし効率化できれば断らずに済むから、そっちの方向で頑張ろうとしてしまう。

一見、前進しているように見えて、やるべきことを避けている状態です。

対処行動のリストを作り少しずつ実践してみよう

仕事量のコントロールができるようになってから効率化に取り組む

効率化すること自体は悪いことではありませんので、入ってくる仕事の量をコントロールできるようになってから取り組むようにしましょう。

入ってくる仕事の量をコントロールするためには、断れるようになる必要があります。それができない現状は、断るための具体的な行動のレパートリーが不足しています。

ですので、まずは断るために具体的にどのような行動を選択すべきかを認識することから始めましょう。

断る技術を身に付けるための2つのリスト

ここでは2つのことをリストアップします。

  1. 仕事を断るべき具体的な状況は?
  2. そのときにどのように断るといいか?

仕事を断るべき具体的な状況をリストアップするためには、過去、仕事を引き受けてしまったシーンのことを思い出してみるといいでしょう。いつ、誰に、どのような状況で依頼されたのかを書き出してみてください。

次にそれらのシーンでどのように振る舞うことが仕事を断ることに繋がったかをリストアップしましょう。難易度別に幾つかの行動をあげられるといいです。絶対に断れるけどとても勇気が必要な行動とか、断れない可能性もあるけど比較的実行しやすい行動とか。

一番必要なのは「断る経験」を積むこと

2つのリストができあがったら次は実践です。

次の仕事の依頼が来た時、それを断るべきだと頭の片隅で囁く声が聞こえたなら、リストの中から比較的実行しやすい行動を試してみてください。その時の自分が実行できそうなギリギリのところを試せると、よりいいですね。

結果として仕事が断れても断れなくても、どちらでも大丈夫です。なぜなら、この活動の目的は経験を積むことだからです。

断ることができないでいる本質的な問題は、断ることをした経験が少なすぎるため、上手く仕事量をコントロールするための技能が得られていないところにあります。技能を伸ばすには「繰り返し」あるのみです。

いまは上手く断れなくてもいいので、少しずつ試しやすいところから実践していってみてください。

下記の記事も合わせて読むとより役に立つでしょう。

www.behavior-assist.jp