行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

行動科学でToDoをどんどん消化できる状況を作ろう

Q.
ToDo管理を勉強してやるべきことはかなり具体的にできるのですが、肝心の行動がなかなかできません。

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A.
ストレートにToDoを消化しようとするのではなく、ToDo消化に有利な状況を作るという視点で工夫してみてください。

「制御行動と被制御行動」という視点を持とう

制御行動と被制御行動とは何か

行動には「制御行動」と「被制御行動」の2種類があります。これを知っておかないと、ToDoリストに行動をリストアップして満足…なんてことになりかねません。

ToDoリストを作っただけでは、行動するための準備は全く整っていないのです。

まず被制御行動について説明しましょう。「被」・「制御」なので「制御される行動」という意味。今回の場合でしたらToDoリストに記入した具体的な行動が該当します。

ToDoリストはコントロール”される”行動なのです。自分の意思で自発的にどうこうする行動ではなく、何かによってコントロールされてしまう行動です。

つまり、ToDoの実行をコントロールしている何かを把握し、ToDoが消化できるように調整する必要があるのです。

そのコントロールしている何かを調整する行動を「制御行動」といいます。

ちょっとピンと来ないと思いますので例で説明します。

状況が整わなければToDoを消化することは難しい

例えばToDoとして「ブログを書く」をリストアップしていたとしましょう。

当初、あなたは仕事から帰宅したらブログを書くための時間を取ろうと考えていました。ところが帰宅したらすぐにTVをつけてしまい、そのままダラダラと過ごし寝てしまっています。

この場合、「すぐにTVを観ることができる状況」が行動をコントロールしている要因の1つになります。TVを観てしまうからブログを書くための時間を確保できなくなってしまいます。

この状況を変えずに、意思の力でブログを書くことを優先しようとするのは茨の道。そこで制御行動の出番となります。ブログを書くことが促されやすい状況を作り出す行動は何でしょうか。

工夫することでToDoを消化しやすい状況になる

色々考えられます。

強烈なのは例えば「TVを捨てる」でしょうか。そうすれば絶対にTVを観ることができませんので、ブログを書く時間を確保しやすくなるでしょう。

他にも「帰宅前にカフェに立ち寄る」も制御行動の1つになりえます。カフェでブログを書いてから帰宅すれば、帰ってから気兼ねなくTVを観ることもできますね。

TVを捨てることも、帰宅前にカフェに立ち寄ることも、ブログを書きやすい状況を作るための工夫です。このようなものが制御行動と呼ばれるもの。

つまりToDoにリストアップした行動を、ただそのまま実行しようとするのではなく、ToDoが消化されやすい工夫をする。ここがポイントなのです。

どうすればToDoの消化に有利な状況を作り出せるか

では制御行動として具体的にどんな工夫を取り入れればいいでしょうか。幾つかのポイントをあげますので、参考にしてみてください。

ポイント1:ToDoの消化に付加的なメリットが生じるように工夫する

ToDoを消化することで、プラスαのメリットが伴うようにできないか工夫してみてください。この場合のメリットとは次の2つです。

  1. 何か良いことが起きる
  2. 何か嫌なことがなくなる

例えば何かのプロジェクトで幾つかのToDoを担当することになった場合、そのToDoリストをチームで共有してみるのはいかがでしょうか。チームメンバーの視線やフィードバックを得やすくなります。

ToDoを終えてチーム共有のToDoリスト内で報告すれば、それについてメンバーの誰かが「イイね!」とかしてくれるかもしれません。予定を前倒ししてして、サクサクとToDoを終わらせていけば、ポジティブなフィードバックを貰えるかもしれません。

チームではなく自分ひとりで取り組むToDoの場合は、プレマックの法則がおすすめ。

プレマックの法則とは、常日頃からよく実行している行動を、ToDo消化のご褒美として活用する方法です。例えばいまあなたがスマホゲームに嵌っているとしましょう。この場合、消化したToDoの個数×5分を「ゲームを遊んでも良い時間」とするのです。

このようにすればToDoを消化することに「ゲームで遊べる時間が増える」というメリットが伴うようになります。

ポイント2:簡単に行動できるように準備を整える

ToDoに限らず、行動することは僕たちにとって負担のかかるものです。何かしらのエネルギーを消費しますし、行動し続ければどこかで疲れてしまいます。

行動することへの負担を減らすことは、ToDo消化を促すための工夫として有効です。

例えば日記を書こうとしているのになかなか書けないでいたとします。日記を書くためには、本棚から日記帳を取り出して、内容を考えて、頭でまとめながら書く、という手順が必要でした。

そこで次のように工夫してみます。

机に日記帳用のスペースを作り常に日記帳を出しっぱなしにする。ペンも日記帳の上においておく。何かを思いついたらすぐにペンをとって、箇条書きでメモを残しておく。一日の最後に箇条書きを観ながら文章にしていく。

こうすることで日記を書くという行為の負担を軽減することができます。負担が軽くなれば、当然、実行される可能性も高くなります。

ポイント3:ライバル行動を遠ざける工夫をする

ライバル行動とはToDo消化の邪魔になる行動のことです。

前に「ブログを書こうとするけど、ついTVを観てしまう」という例を書きましたが、この場合、TVを観ることがライバル行動になります。

ライバル行動が実行される限り、本来やるべきであるToDoは進捗しません。

このような場合、ライバル行動を実行できなくしたり、実行しづらくしたりすることで、ToDoを消化する行動が優先されやすい状況を作ります。

前の例では「TVを捨てる」だとか「帰宅前にカフェに寄ってブログを書く」という工夫をご紹介しましたね。いずれもライバル行動の実行を阻害するものになっていることが分かると思います。

以上、ToDo消化に有利な状況を作るための3つのポイントをご紹介しました。せっかく作ったToDoリストですから、順調に消化したいですよね。今回お伝えしたことを踏まえて、ToDoが消化されやすくなる工夫を試してみてください。