行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

頑張らない省エネ習慣作り

根性論や精神論では行動は続きません。頑張って習慣化しようとしている時点で、それは根性論であり精神論です。習慣作りというものは、頑張ってしまっている段階で上手くいかないことが約束されているようなものです。

僕たちは「行動の重力」に逆らい続けることはできません。どうしたって流されやすい方向があるのです。それを踏まえた上で、行動の重力に沿った省エネで活動できる工夫をするといいです。

次の2つのステップを意識して工夫してみるといいでしょう。

  1. ついつい流されやすいライバル行動を抑制し、本来やりたいターゲット行動を実行しやすくする
  2. 本来やりたい行動(ターゲット行動)に、行動を促すに足る十分な理由を持たせる

この2つのステップは、行動に取りかかりやすくしつつ、いざ行動してみたらメリットを実感することができて、次も自然と行動したくなるための「流れ」を作り出すものです。あんまり頑張らないで済む省エネ習慣作り、試してみてください。

行動の重力に逆らってはいけない

根性や精神論では行動は続かない

習慣化というのは頑張っても上手くいかないものです。というか、「頑張らなければならない」時点で、行動するにはかなり不利な状態です。頑張る、とはどういう状態なのか。まずはそれを考えてみましょう。

例1:夜遅く疲れて帰宅した後、全てを差し置いて毎日ブログを更新できるか

例えば、毎日ブログを更新することにしたとします。しかし、あなたが仕事を終え、家に帰ってくるのは夜の21時を過ぎています。それから食事の準備をしたり、お風呂に入ったりすると23時を超えます。

仕事で疲れているので早く寝たいし、録画しておいたTVも観たいし、先月発売されたゲームも遊びたい。でも、明日も6時に起きなければならないので、全部はできません。やりたいこと全てを差し置いて、ブログを更新することはできるでしょうか。

例2:様々な誘惑に耐え、ダイエットに相応しい食事をとり続けられるか

あるいはダイエットで食事制限することを考えてみます。昼休みに昼食を買いにコンビニいくと、美味しそうなものがたくさん売っています。その中でサラダだけを買ってかえることはできるでしょうか。

あるいは同僚とレストランに行った時、メニューに並んでいる美味しそうな料理の写真を見ながら、周囲から漂ってくる料理の香りを感じながら、ダイエットに相応しいメニューを注文できるでしょうか。

行動の重力に「逆らい続ける」ことはできない

行動には重力のようなものがあります。重力に沿った行動は簡単だし、重力に逆らった行動は大変です。坂道の上り坂と下り坂のようなもの。

僕たちは一時的になら重力に逆らって行動することができます。今日だけブログを更新する。今日だけ食事を減らす。それならできそうな人もいるのではないでしょうか。

しかし、習慣とは日々継続するものです。これから数ヶ月、ブログを更新し続けられるでしょうか。食事をコントロールし続けられるでしょうか。ずっと重力に逆らい続けるのは難しいのです。根性も意思の力も早々に尽きてしまい、習慣作りに挫折してしまうことでしょう。

「意思が弱いから」「面倒だから」という現実逃避

意思が弱いから、面倒くさがりだから続かないのか

習慣化に挫折したときに陥るパターンに、「意思が弱いから続かない」とか「面倒くさがりだから止めてしまった」といったような自分自身にレッテルを貼る行為があります。

意思が弱い人間だから行動が続かない。面倒くさがりだからすぐに止めてしまう。何だか最もらしく聞こえますが、実は行動の原因に全く言及できていない考え方なのです。

レッテル貼りも結果を別の言葉で言い換えているだけ

意思が弱い、面倒くさがりといったレッテルは、行動が続かなかったという事実を別の言葉で言い換えているにすぎません。意思が弱いから行動が続かないのではないのです。行動が続かなかった理由を、何とか説明しようとして、後付けで「意志が弱い」ということにしてしまっただけなのです。

行動の重力に逆らわない工夫をしよう

意思の強い・弱いという話を始めてしまうと、そもそも僕たちは全員、意思が弱いのです。面倒くさがりなのです。意思が弱いことなんて最初から分かっているのだから、それを前提に行動が続く工夫をしなければならないのです。

意思が弱い僕たちに「意思の力で乗り越えよう」とか「もっとやる気を出そう」などと言ったところで、それは行動の重力に逆らった無駄な努力になります。行動の重力に沿って活動できるように工夫しなければなりません。では、その工夫とは具体的にどのようなものになるのでしょうか。

ライバル行動とターゲット行動への工夫

ライバル行動とターゲット行動という構造を知っておく

僕たちは常に何かをしている

英語や資格試験の勉強をしよう。本を読もう。ダイエットのために運動しよう。ビジネスのためにブログを更新しよう。様々な決意をして、結局ほとんど行動できなかった時、僕たちはまるで「何もしていなかった」かのように感じてしまうかもしれません。

しかし、厳密にいって僕たちが「何もしていない時間」というのは存在しません。本来目的とする行動はできていなかったとしても、代わりに何かをしていたはずなのです。

Youtubeを観ていたかもしれませんし、漫画を読んでいたのかもしれませんし、あるいは急ぎの仕事に追われていたのかもしれません。具体的に何をやっていたかは様々でしょうが、何かはしていたのです。

ターゲット行動とライバル行動

つまり、習慣化のために本来「やりたいと思っていた行動」と、その代わりに「やってしまっていた行動」とかが存在するのです。そして前者のことをターゲット行動、後者のことをライバル行動といいます。

少なくともライバル行動をやっている間は、本来やりたいターゲット行動は絶対に実行されません。

僕たちはライバル行動に流されやすい

習慣化に取り組む場合、このターゲット行動とライバル行動の構造は、必ずといっていいほど出てくる問題です。

習慣作りというのは、今までできていなかった行動を日常に定着させようとする取り組みともいえます。ということは、ターゲット行動が割り込んでくる以前には、そこに何らかの、しかも既に日常に定着していた行動が存在することになります。それがライバル行動なのです。

既に定着している行動なので、重力に沿った実行しやすい活動です。ただ闇雲にターゲット行動にチャレンジするだけでは、自然とライバル行動へと流されてしまうでしょう。

ライバル行動の実行コストを増やせ!

ライバル行動の存在を前提とすれば、習慣化の方針もみえてきます。ライバル行動を実行しにくくしつつ、ターゲット行動を実行しやすくすればいいのです。まずはライバル行動の実行コストを増やす方法を考えてみましょう。

ライバル行動を実行できなくする工夫

一番確実なのは「ライバル行動を実行できなくする」ことです。ライバル行動を実行するのに、何か条件はないでしょうか。

例えば、Youtubeを観てしまうことがライバル行動だとしたら、ネットに繋がっていることや、パソコン・スマートフォンを使えることが行動の条件となります。このような条件が成立しないようにすればいいのです。ネットに繋がらない喫茶店にいくと仕事が捗ったりすることがありますが、これはネット接続を前提としたライバル行動が抑制されるからでしょう。

ライバル行動の手間を増やす工夫

実行できなくするまではいかなくても、「ライバル行動を実行する手間を増やす」工夫も効果的です。

このブログでは何度も例に出しているので、また書くのは何だか恐縮してしまいますが、仕事をする時にスマートフォンを寝室に置いておくなんて工夫は「スマートフォンを使う」というライバル行動を抑制するのに効果的です。

仕事をしていて、ふとスマホを使いたくなった時、わざわざ寝室まで移動しなければならないのです。この面倒くささがライバル行動を抑制してくれます。ライバル行動を「重力に逆らった行動」にしています。

ライバル行動に嫌な変化を伴わせる工夫

他にも「ライバル行動を実行すると嫌な変化が生じる」ように工夫するのも良いでしょう。

図書館のような場所で作業すれば、Youtubeみたいに音が出る行為は実行しづらくなります。もしYoutubeを再生してしまえば、周囲からのとがめる視線や職員からの注意といった変化が生じるはず。このような環境であれば、Youtubeを観ることは抑制されます。

あるいは後述する「行動契約」を使って、食べ過ぎるという行動を抑制することもできます。一定のカロリーを超えてしまうとペナルティが発生するようにしておけば、ペナルティ発生の一歩手前くらいで行動が抑制されます。

ペナルティの内容が十分に嫌悪的であれば、行動契約は高い効果を発揮します。実際、僕はこの方法で食事量を1日平均1800kcalに抑えられています。

ターゲット行動の実行コストを減らせ!

今度はターゲット行動への工夫を考えてみましょう。ライバル行動とは逆に、実行コストをどれだけ減らせるかがテーマとなります。つまり「どれだけ簡単に始められるか」に頭を使うのです。

既存の習慣の延長線上におく工夫

まず考えてみて欲しいのは、「既存の習慣の延長線上にターゲット行動をおく」ことです。既にやっていることのバリエーションであったり、その次のステップとしてターゲット行動を実行できるように工夫するといいでしょう。

例えば、これはある書籍に載っていた例ですが、日記を書く習慣を作ろうとしていた主婦の方が、洗濯機の横にノートとペンをぶら下げるようにしたそうです。これで洗濯機をセットした後のほんの少しの待ち時間の間に、さらさらと1〜2行の日記を書けるようになったそうです。洗濯という毎日の習慣を利用しています。

僕自身の例であれば、大学時代に水泳の習慣を定着させた経験があります。通学経路の途中に1回500円で泳げるプールがあったので、週に一度、そこに立ち寄って泳ぐことをしていました。この習慣は大学を卒業して就職するまで、さしたる苦労もなく継続できました。これが「一旦家に帰ってから改めて泳ぎに行く」だとなかなか続けるのが難しかったかもしれません。

既存の習慣は既に定着している行動なので、そこから+αを実行するのは比較的容易です。是非、検討してみてください。

準備を整えることで実行しやすくする工夫

準備を整えておくことによって、ターゲット行動が実行しやすくなることもあります。

スマートノートというノート術の習慣に取り組んでいた時のことです。一日一回、ノートを開いてスマートノートと呼ばれる手法を使い、思考しアウトプットすることを習慣化したかったのです。ところが、いざやってみるとノートを開くことはできたものの、何について思考すべきかが思いつかず、ペンが止まり、何も書けないまま時間が過ぎていく事態に陥りました。

そこで試した工夫が、前日のうちに考えるべきテーマをノートの上部に書き込んでおくことです。こうすることで、ノートを開けばそこにテーマが書いてある状態になります。あとはスマートノートの作法に則って考え、書き出していくだけです。ちょっとした準備がターゲット行動の実行を容易にしてくれることがあるのです。

また他にも、使いやすい道具やツールを用意しておくのも、取りかかりやすくする準備として良い工夫だと思います。

分解することで実行しやすくする工夫

ターゲット行動の実行を容易にする方法として「分解」もあります。重ための行動を実行しやすくするのに有効な方法です。

例えばブログの記事を書くことを考えてみましょう。僕の場合、1つのブログ記事が5,000〜10,000文字くらいになります。これだけの文字数を何もないところから一気に書き上げるのは難しいです(少なくとも僕には)。実は「三行メソッド」という事前準備があることで、随分と書きやすくなっています。

記事全体で書きたいことを三行に表現し、更に各行毎に書きたい内容を三行で、更にもう一度、それぞれの書きたい内容を三行で表現します。分かり難い説明で申し訳ないですが、結果として3×3×3=27行の階層的な箇条書きができあがります。

それを元に文章を書いていくことになります。それぞれの行ごとに300〜400文字の文章を書けば、トータルで5,000〜10,000文字くらいの文章になります。

このように少し重ための行動は、何らかの方法で分解してしまうと実行しやすくなります。

行動する理由を作って習慣作り

人の視線を活用して行動する

ターゲット行動にメリットのある変化を伴わせよう

前章ではターゲット行動を実行しやすくする工夫をお伝えしましたが、そもそも僕たちが行動するのは何故かといえば、それは行動にメリットのある変化が伴うからです。

ターゲット行動の実行負担とターゲット行動のメリットは、綱引きの関係にあります。ターゲット行動を実行する負担が大きかったとしても、それで得られるメリットがより大きければ、僕たちは行動する可能性が高いのです。

反対に、どれだけターゲット行動の実行負担が小さくても、行動するメリットがゼロもしくはそれに近い状態だとしたら、僕たちは行動することはないでしょう。

つまり、実行負担を減らすだけではなく、いざ行動した時にちゃんとメリットのある変化が起きるように工夫することも必要なのです。

他者の関与を行動を促すことに使う

もしあなたの活動に誰か仲間がいるのであれば、それは喜ばしいことです。仲間がいれば心強いとか、楽しいといった話ではなく(もちろんそれも大切なことですが)、行動するのにとても有利だからです。

僕たち人間は社会的な生き物であるが故に、他者からの影響を無視することができません。独りで活動することと、誰かの視線を感じながら活動することとでは、後者の方が工夫の余地が大きくなるのです。何故なら「無視できない他者からの影響」を行動に活用できるからです。

例えば、毎週、ブログを更新したら仲間宛に報告することにすれば、サボってしまうとかっこ悪いし、いざ更新することができたら仲間達からのフィードバックが貰えるかもしれません。

あるいは、定期的に何かの作業を進めたいのだとすれば、日時を決めて一緒に作業するよう約束すれば、約束した時間は少なくともその作業のために充てられることでしょう。

仲間の活動が行動を促す刺激となる

仲間がいると、彼ら/彼女らの活動自体が刺激になることもあります。自分ひとりではなぁなぁになったり、マンネリ化したりするような場合でも、他のメンバーが頑張って何かをアウトプットしてくれたりすると、自分もやらねば、やろうという気持ちになることがあります。それをトリガーにいざ取り組んでみれば、今度は自分の活動が仲間への刺激になったりもします。

これは、僕が所属している「行動アシストラボ」で実際に起きている現象で、とても僕ひとりではできなかったであろうことを実現できています。精神的な面だけでなく、行動という面からみても仲間の力は本当に大きいです。

行動契約を使う

行動契約という行動を促す汎用的で有効な手段がある

行動にメリットのある変化を伴わせる方法として、行動契約はとても汎用的で有効な手段です。

行動契約については、このサイトの記事のあちらこちらで出てきますが、簡単に説明すると、約束した目標を達成することができなかった場合、ペナルティを負うというものです。ペナルティの内容が十分に嫌悪的なものになっていれば、約束を守ることに十分な理由が生じるため、最終的にはやるべきことを終えることができます。

継続的な行動契約を習慣作りに活用する

習慣化ということを前提に考えると、常時ある程度の行動契約を使い続けることになります。

この記事を書いている時点で、僕が継続的に使っている行動契約は、「毎週、ブログを2記事以上更新する」と「毎週、1日の平均摂取カロリーを1800kcal以下にする」です。

それぞれ達成状況を毎週チェックしますが、約束を守れていなかった場合、$30の罰金が発生するのです。お金持ちの人にとっては30ドルは大した金額じゃないかもしれませんが、僕にとっては痛い金額なので、行動契約を守ることに必死になります。

行動契約がもう一踏ん張りの支えになってくれる

行動契約の効果は「今週はちょっと無理かもな〜」と思えてしまうような状況でも、もう一踏ん張りが効くという点にあります。挫折しそうに思えてしまうギリギリのところで、行動を支えてくれます。これは意思の力だけに頼っていたのでは、決して得ることのできない「支え」です。

習慣というのは、一度綻びが生じると、そこから瞬く間に崩壊してしまうことがあります。一年近く続けてきたことであっても、たまたまやらない日があっただけで行動が止まってしまうのです。「昨日もやらなかったし、まぁ、今日もしかたないか・・・」といった具合に。

僕たちには、行動することが難しく感じられる場面で、最後に支えてくれる何かが必要なのです。

どんな行動内在的な変化が生じるか知ろう

行動することそれ自体から生じる変化がある

特別な工夫をしていなくても、その行動自体からメリットのある変化を得られることもあります。これを行動内在的な変化といいます。

例えば、文章を書くという行動には「あ、いま考えが上手く表現できたな」という変化が伴うことがあります。あるいは、本を読むという行動には「あ、なるほど、こういう考え方があるのか」という気づきのような変化が伴うことがあります。このようなものが行動内在的な変化。

行動に習熟してはじめて、行動内在的な変化が生じる

行動内在的な変化は、習慣作りの重要なポイントです。何せ特に工夫することなく、それを行うだけで生じる変化なのです。こんなにありがたいものはありません。大いに活用したいところです。

しかし、行動内在的な変化は、その行動にある程度習熟していないと生じません。例えば、英語の本を読む場合でも、ちゃんと読むことができれば、何らかの気づきを得られるでしょう。しかし、英語力が低く、英文を読み解けないのであれば、気づきなど起きようもありません。

行動内在的な変化を得るには、その行動にある程度習熟する必要があるのです。

先人の経験を知ることで行動内在的な変化を得る期間を短縮できる

では、いま未熟な状態だとしら、行動内在的な変化は全く役に立たないのでしょうか。これが、そうとも言い切れません。是非、試してみて欲しいのですが、あなたが行動に習熟した時にどのような行動内在的な変化を得られるのか、Googleや本などで先人の経験を調べてみてください。

英語の読解力が付き、洋書を読めるようになった時にどんなことが起きるのでしょうか。文章を書くスピードが上がって、一日に数万文字を書くことができるようになった時、どんなことが起きるのでしょうか。いまは面倒くさいと感じているジョギングが、だんだんと楽しくなってくる過程で何が起きるのでしょうか。

それを知っているだけでも、行動への取り組み方が変わってきます。希望が持てるということもありますが、何よりも練習・訓練の仕方が変わる点にメリットがあります。なるべく早く行動内在的な変化を得られた方がいいのですが、それを前提とすれば、どこに力を入れて練習するかが変わるはずです。

英語の読解力を上げるために、もしかしたらたくさんの単語を覚えるべきなのかもしれない。あるいは、文法や慣用句的表現を覚えるべきなのかもしれない。その優先順位が変わる可能性があります。それによって行動内在的な変化に触れる可能性が高まるのであれば、当然、習慣作りにおいて有利に働くことでしょう。

まとめ

行動の重力に沿って省エネで活動できるように工夫する

根性や精神論では習慣化は成功しません。「行動の重力」という表現を使いましたが、意思の力で頑張るというのはこの重力に逆らい続けるようなものです。常に消耗してしまいます。

習慣化が成功しない原因を「意思の弱さ」だとか「面倒くさがりだから」といったような、内面的な特徴に求めるのはナンセンスです。それらは行動の原因ではありません。

結局のところ習慣化に失敗してしまうのは、行動の重力に沿って「なるべく省エネで活動できるように工夫」していないことが原因なのです。

ライバル行動を抑制し、ターゲット行動を促す

なるべく省エネで活動できるように工夫するためにも、ライバル行動とターゲット行動という僕たちの日常活動の構造を知っておくといいでしょう。

僕たちは自然にしていては、本来やりたいと思っているターゲット行動を避けて、ついついやりやすいライバル行動へと流されてしまいます。ですので、工夫の仕方としては、

  • ライバル行動の実行コストを増やして抑制する
  • ターゲット行動の実行コストを減らして行動しやすくる

というものになります。この工夫ができるだけでも、本来やりたいと思っていることへの取り組みやすさが随分と改善されます。

行動する理由を作り出す3つの工夫

しかしながら、より根本的にはターゲット行動に「行動する理由」が必要です。行動する理由とは、ターゲット行動に伴ってメリットのある変化が生じることです。これがなければ、どれだけターゲット行動の実行負担を減らしても、僕たちが行動することはありません。

行動する理由を作る方法として、次の3つをご紹介しました。

  1. 人の視線を活用する
  2. 行動契約を使う
  3. 将来起きる行動内在的な変化について知る

僕たちは社会的な生き物ですので、必ず他者から何らかの影響を受けています。であれば、その「他者の影響力」を行動に活用することも可能です。独りで頑張るよりも誰か仲間がいると、習慣作りのための工夫の幅が拡がります。

また、行動契約という汎用的で使いやすい手法もあります。継続的な行動契約を使うことで、習慣作りは容易になりますし、ちょっと大変だなぁ・・・と思うような場面でも最後の支えとなってくれることがあります。

行動の理由として最も理想的なものが「行動内在的な変化」です。行動することそれ自体にメリットを感じられるのが一番いいのです。ただ、行動が未熟な段階では行動内在的な変化は得られません。そこで、既に実践している先人の経験を知ることによって、どういった変化が起きるかを知識として先取りすることをお伝えしました。このような情報があることで、効率的な努力の方法が見えてきたりもします。行動内在的な変化を得るまでの期間を短縮することができるかもしれません。