行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

考えすぎて行動できない人が「考える力で行動できる」3ステップ行動戦略

考えすぎてしまって行動できない。
本当に思い立ったらすぐに行動して、それから考える。
そんな風になれたらいいのに!

でも、どうしても考えることを止められない…。

割と良く聞く悩みですね。
ササッと軽やかに行動できてしまう人を見ると、自分もそうなりたいと憧れてしまいますよね。

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残念ながら考えることを止めるのは無理なので、考えすぎてしまう人の場合は、考えること自体を有効に活用するといいでしょう。

リスクについて考えるのではなく、小さく実験することについて考えてみてください。
なぜなら、考えすぎてしまう背景には「リスクを過大評価する」ことがあるので、基本的に行動に痛みを感じている状態です。

痛みは避けたくなるのが当たり前。
そうすると痛みを避ける手段が必要になるのですが、それが「考え続けること」なんですね。

考えている間は行動を避けることができます。
安心して行動できる手段を模索しているように見えて、実は「行動を避けるために考えている」わけです。

問題を解決するために考えることは当然の行為なのですが、その実態は解決のために考えるというのとは程遠い状態になっています。

行動の目的を「成果から実験に変える」ことによって、考えることを有効に活用してみるといいでしょう。

考えすぎて行動できないのは何故か、行動科学で読み解く

そうしようと思いつつも、気が重くて動けないことがある

エピソード1:なかなかブログが始められない

新しくブログを立ち上げられたらいいなと思った。
行動分析学に特化した内容で、少し専門性を出せたらいいんじゃないだろうか。

でも、頑張って書いてもアクセスが伸びないかもしれない。
調べてみると、キーワード等を意識すればアクセスが増えるらしい。
じゃぁと思って調べてみたが、ちょうど良いキーワードがなかなか見つからない。
ブログのテーマももう少しハッキリさせた方が良さそうだ。

何だか遠い道のりに感じてしまい、始められないでいた。

エピソード2:転職したいと思いつつも流されるように現状維持

いまの会社に不満がある。

いつも同じ仕事ばかりで成長を感じられないし、労働時間は長くなるし、何より上司がことあるごとに嫌味を言ってきて精神的に辛い。
何度も「転職してやる」と思って、転職サイトに登録したり、職探ししたりしている。

でも、転職してもあまり変わらないかもしれない。
嫌な人なんてどこにでもいるんだから、また変な上司の下で働くことになるかもしれない。
仕事の内容も代わり映えないかもしれない。給与ももしかしたらいまの待遇よりも悪くなってしまうかもしれない。

色んなリスクを考えてしまうと、躊躇してしまい、流されるように現状維持を選んでしまう。

リスクを考えすぎてしまって行動できなくなる

僕たちには「そうしよう」と思いつつも、色々考えているうちに段々と気が重くなってきて、面倒になってきて、なかなか行動に移れないことがあります。

考えすぎてしまって動けない。
もっと軽やかに行動できればいいと思いつつも、そうできない自分。

なんでこんなことになってしまうのでしょうか。

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苦痛を伴う行動の結果を知っているので、どうしても考えてしまう

行動に伴う苦痛は2種類:「何も起きない」「嫌なことが起きる」

考えすぎて行動できなくなる理由の1つは、「行動の結果」を想像してしまうからです。
それも苦痛を感じる結果です。

僕たちが行動に感じる苦痛は2種類です。
それは「行動しても何も起きない」か「行動すると嫌なことが起きる」です。

何も結果が得られず己の無力さを実感し、気が重くなる

行動しても何も起きないとしたら、無力感を感じてしまうことでしょう。
せっかく頑張ったのに、それが何の影響も持たなかったということになります。

過去、そういう体験をしたことがあったとすれば、新しい何かを始めるとき、無力感を感じさせた体験との共通点を見つけて、気が重くなることがあるかもしれません。

嫌な思いをすることを想像すれば行動を避けるようになる

行動したら何か嫌なことが起きるとすると、当然、行動することをなるべく避けたくなるでしょう。

これも先ほどと同じです。
過去にそういう体験があって、また同じ目に遭うかもしれないと想像してしまうと、チャレンジするのはちょっと辛いかもしれませんね。

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考えることが痛みを作り、痛みを避けるためにまた考える…

みんな嫌な目にはあっているのに行動できる人もいる不思議

上記のようなことは大なり小なり、誰にでもあることです。
上手くいかなかった経験、嫌な目にあった経験なんて、みんなしてきているわけです。

でも、あれこれ考える前に行動できてしまう人と、あれこれ考えすぎて行動できなくなる人がいます。

そこにはどんな違いがあるのでしょうか。

考えている間は行動を避けることができる

答えはそう難しい話ではありません。

考えることが「回避行動」になっている場合、ぐるぐると考えすぎる状態に陥ってしまうことがあります。

行動に伴う痛みを想像するということは、当然、行動することを避けたくなりますよね。
では、行動を避けるために何をするかというと・・・「リスクについて考えること」をするんですね。

リスクを減らそうと一生懸命考えている間は、行動しなくて済みますから。
だから考えているのです。
メリットがあるので、考えることを止められません。

ここは重要なポイントです。
僕たちは「考えすぎてしまって」行動できないと思い込んでいますが、実態は「行動を避けるため」に考えているのです。

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実は考えることを有効に使えば効果的に行動できる

考えずに行動するなんてあり得ない

問題について考えることはあまりにも当たり前だ

では、考えることを止めれば行動できるのかというと、なかなかそういうわけにはいきません。
僕たちにとって、考えることによって問題を未然に防ぐことは、あまりにも当たり前の行為なのです。

例えば、朝出かける前、天気予報を確認して夕方から雨が降ると分かれば、きっとあなたは傘を持って出かけるでしょう。

何気ない行為ですが、これだって未来のリスクを想定し、それに備える行動を選択しているのです。

考えることを止めようとするのは無駄な努力

こんなことが僕たちにはたくさんあります。

未来の問題を先取りして検討しておくことは、僕たちにとってあまりにも便利です。
だからこれを止めることはできません。

考えすぎることを止めようとするのは無駄な努力だと認識しておいてください。

考えることが好きなら役に立つ考え方をしよう

天気予報を見て夕方の雨に備えるのは「役立つ考え方」

ではどうすれば良いのでしょうか。

天気予報の例がヒントになります。
夕方の雨に備えて傘を持っていくことを考えるのは、役に立つ考えだといえます。

どうせ考えることを止めるのは難しいのだとしたら、天気予報のように役に立つ考え方ができるように軌道修正してみるといいでしょう。

過去の経験がリスクを過大評価させるから考えすぎる

考えすぎてしまって行動できなくなるのは、リスクを過大評価しすぎているからです。

リスクを過大評価する理由は、過去の経験に基づいています。
行動したのに失敗したからこそ、もう二度とそんな目に遭いたくなくて一生懸命考えるのです(そして行動を避ける)。

行動に妥当な成果をもたらす「役に立つ考え」をしよう

役に立つ考え方というのは、行動に対して妥当な成果をもたらすものだといえます。

天気予報に従って傘を持って出かけたら、実際に雨に濡れずに済んだのであれば、考えることが成果をもたらしています。
このような体験を増やせることが望ましいのです。

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行動を実験と捉えて考えるための材料を得よう

質の良い思考の材料を手に入れよう

では、どのようにすれば「成果につながる実用的な考え方」ができるのでしょうか。

答えは簡単です。
実用的に考えるための材料を得ればいいのです。

夕方の雨に備えて傘を持っていこうと判断できるのは、天気予報という「質の良い思考の材料」があるからです。
これが空を見上げて、その時の空模様で判断しなければならないのだとしたら、僕たちの判断はかなり当てにならなくなります。

実用的な考えをするには、実用的な思考の材料が必要です。

実験を目的に行動しよう

質の良い思考材料を得るために必要なのは実験です。

実験とは、簡単なお試しの行動のことです。
その行動の目的は、成果を得ることではなく実験の結果を得ることです。

実験なので、上手くいくことも上手くいかないことも、等しく同じ結果です。
あなたはあなたのやることについての研究者になるといいのです。

より良く考えるために行動(実験)する

考えすぎて行動できない場合、意識に占めていることは「上手くいくように素晴らしい計画を立てよう」ということかもしれません。

しかし、考えるだけでは成果につながる計画を立てることはできません。
天気予報のように質の良い材料が必要なのです。

お試しの行動という実験を繰り返すことで、実験結果という「現実に沿った情報」が得られ、それに基づいて計画がブラッシュアップされていきます。
実用的で役に立つ計画が手に入ります。

僕たちがやるべきことは「考える前に行動する」ことではなく、「より良く考えるために行動する」ことなのです。

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考えすぎる人が行動するための3ステップ行動戦略

1. 目的意識を持ってインプットする

仮説によって実験の狙いが明確になる

成果につながる実用的な考え方をするためには、「仮説」を持つことが大切です。

「○○したら××になるはず」という想定を持てれば、何のために実験的に行動するのか狙いが明確になります。
漠然と行動するのに比べて、かなり取り組みやすくなります。

対象領域への理解が不足していると仮説を立てられない

仮説を設定をするのに必要なのは、対象領域に関する知識または経験です。

実験のための有効な仮説を設定できない場合、対象領域に関する理解が不足しています。

なので、仮説が設定できる程度には、情報・知識をインプットするといいでしょう。
対象領域の専門書を読んでみたり、複数の入門書を読んでみたり、先行している人達から教えてもらったりしてください。

仮説を持つことは実用的な活動の最初の一歩となる

行動とそれに伴って期待できる成果のリストを持つことは、「考えすぎて行動できない」状態とは全く異なります。
考えすぎて行動できない状態は、行動せずにリスクが消失するのを待っているだけの受け身な状態です。

仮説を持つことは、有効な経験を得て、より実用的に活動できるようになるための最初の一歩です。
どうせ行動する前に一生懸命考えてしまうのであれば、仮説を得ることを目的としてインプットと考察をするといいでしょう。

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2. 思考材料を得るための実験を始める

理解を深めることを目的とし、成果が出ることを過度に期待しない

仮説を設定できたら、次にやることは「実験」です。
つまり行動することになります。

ここで注意して欲しいのが、仮説通りの結果を期待しすぎないことです。
多少の期待はOKです。
だって行動するならその先に希望を見たいですから。

でも、これなら絶対に上手くいく・・・などと過度な期待を持つことは、これから実験を始める研究者の姿勢としては不適切です。
この実験の目的は、あなたがやろうとしていることへの理解を深めることなのです。

失敗しても次があることが大切

その目的を考慮するならば、実験はある程度の失敗を前提とすることになります。
実験と失敗と少しの成功とを繰り返しながら、あなたはこの世界の真実に少しずつ近づいていきます。

そう、繰り返し実験する必要があるのです。
つまり、「失敗しても次がある」ことがとても大切なのです。

社運をかけた一大プロジェクト、なんて賭けは絶対にしてはいけません。
小さな実験を繰り返すようにしましょう。

仮説を検証するための実験内容、基準を決めよう

また仮説を検証するのに十分なだけの実験が求められます。
理解を深められるだけの情報が得られないのでは、実験する意味がありません。

実験を始める前に、「どのような行動」を「どの程度の量」「どのくらいの期間」で実行するのかを決めてください。
「仮説を検証するための基準」も決めておきましょう。

例えば、ブログが検索エンジンから評価されるのに3ヶ月〜半年の期間が必要という知識があれば、「記事を30個ほど書いてみて3ヶ月放置してみる」という実験ができるかもしれません。
あるいは「3ヶ月だけ毎日更新を頑張ってみる」というのもいいかもしれません。

また実験結果を検証する基準として、例えば「5000PV程になるはず」という想定を持っておくのもいいでしょう。

3. 現実を踏まえて考えることに没頭する

地に足のついた実用的な考え方ができるようになる

実験結果はあなたが考えるための材料となります。

行動する前に得た知識や情報は、基本的に机上の理論です。
それがたとえ他人の経験を元にしたものであっても、あなたとその人の状況は全く同じではないので、あなたにとっては机上のものでしかないです。

しかし実験結果は違います。あなた自身が実際に試して得た、現実からのフィードバックです。
実験結果によって、あなたは前よりも少しだけ地に足のついた、そして実践的な考え方ができるようになります。

実験結果を次の仮説へと繋げていく

実験結果を受けて、当然ですが新たな疑問も出てくるはずです。

こうすれば上手くいくと聞いていたはずなのに、どうもそうならなかった。
だとしたら、それは何故なのでしょうか。
その疑問を考察すれば新たな仮説を得ることになるかもしれません。

あるいは知識や情報の不足を感じて、その不足を埋めるという目的を持ってインプットすることになるかもしれません。

いずれにせよ実験結果を受けて、次の仮説を作り出すというサイクルを回してください。

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考えるという創造的な行為に没頭しよう

仮説−検証のサイクルを回せば回すほど、あなたはあなたの活動する世界への理解を深めていきます。

その過程で何度も何度も思考に没頭してください。
存分に考えてみてください。

僕が思うに、考えることはとても創造的な行為です。

物事への新しい切り口、視点が得られます。
「創造とは既存のもの同士の新しい組み合わせを発見することだ」と言われます。
新しい切り口や視点の発見は、まさに創造的な行為なのです。

創造的な思考ができるようになれば、「考えずに闇雲に行動する」ことに比べ、遙かに効果的に効率的に活動できるようになります。
ついつい考えすぎてしまうほど考えるのが好きなあなたに、ぴったりの方法だと思います。

まとめ

考えることを有効に活用するための3ステップ

本記事では「考えすぎて行動できない」という悩みを持つ方に向け、どうせ考えてしまうのなら考えることを有効につかって行動に活かすようにしましょう、ということをお伝えしました。

それが「考えすぎて行動できない人の3ステップ行動戦略」です。

  1. 目的意識を持ってインプットする
  2. 思考材料を得るための実験をはじめる
  3. 現実を踏まえて考えることに没頭する

リスクを過大評価して行動しないことにメリットが生じる

そもそも考えすぎて行動できないというのは、一見

  • 安心して確信を持って行動できるようにあれこれリスクを考慮している

ようにも見えますが、その実態としては

  • 考えている間は行動しなくて済むので、行動せずに済むように考え続けている

になっています。

リスクについて考えるということは、行動に伴う将来の痛みを想定しているということですので、行動しないことに「痛みを避ける」というメリットが生じています。
ですので、考え続けることを止めるのは難しいのです。

実験を繰り返して理解が深まれば解決可能な問題となる

そもそも僕たちにとって、問題について考えることはごく自然な行為です。
多くの場合、考えることによって問題を解決できます。
本文中では天気予報の例を使って、夕方の雨に備えることができるという話を書きました。

ところが問題と自身の経験との組み合わせ次第では、すぐに問題を解決することが困難な場合に、考えることが不適切な循環を作り出してしまいます。
この部分の思考の流れを、行動するのに有効なものへと変容できれば、「考えすぎて行動できない問題」は緩和されます。

そのための3ステップをお伝えしたわけですが、基本的な考え方は「直接的に成果を求めるのではなく、実験を通して理解を深める」です。
抱えている問題・課題であったり、活動対象の領域についての理解が深まれば、有効な行動を思いつくことも可能になります。

是非、理解を深めるという目的を持って実験を繰り返してみてください。

それでも不安で行動できないなら・・・

尚、以上を読んでもリスクを考えすぎることを止められず、不安で行動できないようでしたら下記の記事も読んでみてください。

www.behavior-assist.jp