行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

意思が弱くても行動力をつける18の工夫

意思力を鍛えようとか、モチベーションを上げよう、自分を変えようという試みは、あまり効果がありません。行動の原理原則に沿った工夫をすれば、行動は変わります。

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僕たち人間は、簡単にいえばメリットのある行動ならさほど苦労なく実行できちゃうものです。お腹が空いたらご飯を食べますし、喉が渇けば水を飲みます。面白いゲームがあれば遊びます。怖い人が追いかけてくれば逃げます。怒られたら言い訳をします。上司が後ろで見張っていたら真面目に仕事をします。好きな異性から声を変えられれば笑顔を返します。ブログのタイトルが気になればクリックして読みます。全ての行動には、何かのメリットがあるのです。

つまり、行動にメリットが伴うように工夫することができれば、僕たちは行動できるのです。反対に、行動に何のメリットもないし寧ろデメリットがあるなんて場合は、行動することができません。それでも「頑張って何とかしろ」というのが意思に頼ったアプローチです。ナンセンスですね。

行動したければ、行動するのに有利な状況を作ってください。それだけで僕たちの行動力はかなり改善されるでしょう。そのための具体的な工夫の仕方について書いてみました。ブログにしてはちょっとじゃないくらい長い記事ですが、あなたの参考になれば幸いです。

行動の本当の原因を変えることの大切さ

実際、行動はどのようにして変えるのか?

成功事例1:なかなか読めないでいた本を行動契約で読破

読みたいと思って購入した本。読もう読もうと思いながら、何だか手を付けられなくて積読になっていました。そこで行動分析学の勉強仲間に次の約束をしました。

2週間だけ毎日15分、この本を読みます。もし読まない日が一日でもあったら、ブックオフに売ります。

3,000円くらいの本だったのですが、ブックオフに売ると100〜150円になってしまいます。それは嫌なのです。

結果どうだったかというと、読み始めたら面白くて、15分どころか毎日30〜60分くらい読むことができました。ただ1日だけ、飲み会で酔ってしまって読めなかった日があり、2週間が終わった後に泣く泣く手放すことになってしまいましたが・・・^^;

成功事例2:サラダチキンとおでんでダイエット

ダイエットで食事制限すると、お腹が空きます。短期間であれば我慢できますが、無理をすると後で反動がくるんですよね。結局食事量が増えてしまい、リバウンドです。

しかし、ダイエッターの強い味方に「サラダチキン」があります。低カロリーなのに割と満腹感が得られます。加えて、冬場であれば「おでん」も良い感じ。大根なんかあんなに美味しいのにめっちゃ低カロリー。

サラダチキンとおでんを駆使して、満腹感を得ながら摂取カロリーを減らすことができました。

成功事例3:部屋を片付けられないので鍋パーティをした

仕事を終えて家に帰ると、疲労困憊です。ついつい色んなものをあちらこちらに散らかしてしまいます。届いた封筒とか、資料とか、本とか。

一つ一つ、すぐに整理すればいいのですが、疲れているので面倒です。放置してしまいます。気づくと机の上がぐちゃぐちゃ。床にも色々置いてあります。とてもじゃないけど人に見せられません。かといって、この状態から全てを片付けるのも大変そうでウンザリ。なかなか手を付けられませんでした。

そこで、友人を呼んで鍋パーティをすることにしました。いまのままでは座る場所もありませんし、何より恥ずかしい。重い腰を上げて、どうにか部屋を片付けることができました。

ヒトはなぜ”そう行動する”のか、行動の原因を知ろう

メリットが伴うから行動する

行動は「その行動に伴って得られる結果」によって形成・維持されます。行動して何かメリットのある結果が得られるのであれば、その行動は定着しますし、実行頻度も増えます。

反対に行動しても何も結果が得られない、またはデメリットが生じるようであれば、行動は定着しませんし、実行頻度も減ります。

小さすぎて認識できない程度の変化では意味がない

つまり、行動できない、あるいは一時的にはできるけど継続できないという場合、その行動に伴ってメリットのある結果が生じていないということなのです。

特によくあるパターンとしては、変化は生じているのだけど「あまりにも小さすぎて累積しないと意味のある結果にならない」というものです。僕たちが何か目標を持って取り組む場合、このパターンに当てはまってしまうことが多いようです。

行動できない理由は意思が弱いからではない

上手く行動できない、継続できないのには、上記のように明確な理由があります。ついつい行動できない原因を「性格」や「やる気」といった人間の内面的要素に求めがちですが、それらは行動には殆ど関係ありません。

この辺りについては下記の記事で詳しく書きましたので、興味があれば参考にしてみてください。

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行動を変えるのではなく、行動の原因を変える

行動の原因を放置したまま、行動だけを変えることはできません。

ダイエットのために食事制限しよう!と決意したところで、行動にメリットが伴うように工夫しなければ続けることはできません。ずっと空腹を我慢しなさい、美味しくてもそれ以上食べちゃだめ、というのは無理があります。

僕たちの意思の力は、とっても弱いのです。

行動を変えたければ、行動の原因を変えましょう。そこに意思の力とか関係ありません。原因を変えれば、それに合わせて行動も変わります。行動を継続したいのであれば、行動にメリットが伴い続けるように工夫しましょう。行動を変えるために必要なことは、それだけなのです。

行動を変えるための工夫の枠組み

行動に「分かりやすく、確実な結果」をもたらす工夫

行動を変えるための基本は「行動に分かりやすく、確実な結果を伴わせる」ことです。何らかの工夫を導入し、条件や状況を変えることで、いざ行動したときにメリットのある結果が生じるようにします。

例えば、冒頭の例であげた「1日でも本を読まない日があったらブックオフに売ると約束する」とか「友人を呼んで鍋パーティを開く」といったものが、これに該当します。

読まなかったらブックオフに売るという約束があるからこそ、本を読むことによって「ブックオフに売るという未来を回避できた」という結果が生じます。鍋パーティという予定があるからこそ、「友人が来たときに恥ずかしい思いをせずに済む、キレイな部屋で楽しい時間が過ごせる」という結果が生じます。

いずれも「分かりやすく、確実は結果」を行動に伴わせる工夫になっています。

適切に行動するための工夫

技能不足で十分なレベルで行動できなかったり、非効率な手段で実行負担が大きくなっているような場合は、行動そのものに工夫をするのが効果的です。

行動にメリットが伴うよう工夫しても、行動そのものが実行しづらいのでは、そのメリットを得ることもできません。なので、行動の負担が軽くなったり、適切なレベルで実行できるように、行動そのものをサポートするような工夫をするといいでしょう。

冒頭の例では「食事制限下でも満腹を得られるようにサラダチキンやおでんを食べる」といった工夫がこれに該当します。

結果の影響力を高める工夫

行動にメリットが伴うように工夫したし、行動そのものも問題なく実行できるにも関わらず行動できない場合、結果の魅力が不足しているのかもしれません。同じ結果であっても、時と場合によってその影響力は異なります。

例えば、ラーメンが好きな人にとって、ラーメン屋に行くという行動にはラーメンを食べられるという結果が伴います。しかし、今週は毎日3食ラーメンだったという場合と、1ヶ月ほどラーメンを食べていないという場合では、ラーメンを食べられることへの魅力も違うことでしょう。

行動しようとしている今この時、その結果はどの程度の影響力を持っているのでしょうか。その点についても考慮が必要ですし、魅力が不足しているようであれば、よりメリットが感じられるように結果の魅力を高めるような工夫をすることになります。

意思力を使わないで行動するための18の工夫

工夫1. 社会的フィードバックを使う

他者からの反応や視線、注目で行動を変える

社会的フィードバックとは、他者からの反応や視線、注目といったもののことで、行動を変えるのに大変使いやすいものです。

冒頭で「部屋が片付けられないので、友人を呼んで鍋パーティを開くことにした」という例を紹介しましたが、これは社会的フィードバックを有効に使っています。友人を呼ぶことで、「散らかった部屋を見られて恥ずかしい思いをしないで済む」とか「快適な空間で鍋パーティを楽しめる」といった結果を目指して、当日までに頑張って部屋を片付けることでしょう。

他者の存在をリアルタイムに活用する方法もあります。ある研修で講師をする予定になっており、そこで使うテキストを作成しなければならないのですが、どうにも作業が進まずにいました。そこで試した工夫は、ビジネスパートナーの方にお願いして、打ち合わせがてら一緒に作業をしてもらうことでした。他者の視線がある中でサボったりはしにくいので、ある程度目処が付くところまでテキスト作成を進めることができました。

他者の反応の影響力は大きい

僕たち人間は「社会的な生き物」ですので、他者の反応は無視することができません。しかし、その影響力を行動のために上手く活用できれば、多くの場面で行動の問題を解消することができます。

工夫2. 行動契約を使う

行動契約を使った工夫は、かなり強力です。これ単体でも行動を促すのに十分な力を持ちます。

冒頭で本を読むための工夫として、「2週間だけ毎日15分、この本を読みます。もし読まない日が一日でもあったら、ブックオフに売ります。」という約束をした例をあげました。これが行動契約です。

期限と具体的な行動の完遂を約束し、もし守れなかった場合はペナルティを受けるというもの。ペナルティの内容が十分に嫌なものになっていて、ペナルティの実行がある程度保証されている場合、行動契約は強力に行動を促すことになるでしょう。

行動契約については、下記の記事でも取り上げていますので、読んでみてください。

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工夫3. 大きな仕事は小さな行動目標で都度「完了」を確認する

時間のかかる作業量の多い仕事をしていたとします。この場合、例えば1時間くらい頑張ったとしても、まだまだ残りがあるため仕事が終わりに向かっている実感を持てません。完了という結果を得られないのです。

こういう場合、これから1時間で終わらせるToDoのリストを作ってから、仕事を始めるといいでしょう。そうすると少なくともこれからやる1時間の作業の「完了」は定義できるわけです。

1時間頑張ったら1時間のToDoが全て終わった。そんな風に小さな「完了」を作るように工夫すると、長距離走の仕事でもコツコツと継続しやすくなります。

工夫4. なかなか成果が出ない場合は行動目標をターゲットにする

なかなか成果が出ない仕事の場合、行動目標を設定してその達成を目指すといいでしょう。

例えば、ブログのアクセス数を増やしたいけど、頑張ってもなかなか増えない。そんな場合、アクセスUPという成果目標の達成を目指すより、90日間毎日更新するといった行動目標の達成を目指してください。

成果目標の達成には偶然性があり予測できない部分がありますが、行動目標であれば行動さえすれば達成することが可能です。努力と達成度が比例するので、分かりやすく確実な結果になりやすいです。しかも、上手く行動目標を設定できれば、副産物として成果目標を達成する確率も高まります。

なかなか成果が出ない場合は、一度、行動目標にターゲットを変えてみてください。成果目標と行動目標については、下記の記事でも言及しています。

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工夫5. 隠れた変化を見える化する

行動に伴う変化が小さい、あるいは水面下で生じているの場合、それらの隠れた変化を捕捉するように工夫することで、行動に分かりやすい結果が伴うようになることがあります。

例えば、ダイエットをしている場合、当然体重を測ることはするでしょうが、少し高性能な体重計を使うことで小さな体重変化や体脂肪率、筋肉率の変化なども計測できるようになります。

他にもブログのアクセスアップを目論んでいる時に、アクセス数だけでなく検索エンジンでの検索回数や、どれくらいインデックスされているのかといった、「アクセスが増える前に変化する数値」を捕捉しておくのもいいでしょう。

何も変化が起きていないと感じてしまうと、行動を続けるのは難しくなります。このように様々な角度から多様な変化を捉えられるようにしておいた方が、行動するのには有利なのです。

工夫6. 行動しやすい環境を選ぶ

行動しやすい環境、というものもあります。

行動分析学を学ぶ仲間であるNさんは、難しめの本を読むときにメモを取るようにしているそうです。そうすると、例えば満員電車でそんな本を読もうとしたら、メモを取るのが困難なので、本を読むという行動が促されにくくなります。本を読んでも「気になる箇所のメモ」という結果が生じないからです。

これが場所を変えて、図書館や静かな喫茶店で本を読めば、問題なくメモを取ることができるはず。満員電車よりも遙かに読みやすいでしょう。

仕事中についついYoutubeを観てしまう場合も、場所の工夫で対処できることがあります。これまた図書館などにパソコンを持ち込んで仕事をすれば、Youtubeは再生しにくくなるはずです。なぜなら、音を出してしまうと周囲の視線や注意といったネガティブな結果が生じるからです。

このように行動は同じでも、実行する環境を変えることで、行動に伴う結果がガラッと変わってしまうことがあります。

工夫7. 行動したことを利用して何か結果を得る

ターゲットとする行動から直接メリットを得られなくても、行動したことを利用して、別の結果を得ることもできます。

何だかブログの例が多くてあれですが、例えばブログを書いた後に、更新のお知らせをSNSに投稿することがあると思います。アクセスが増える等の直接的な結果が得られなくても、SNSを通してイイネやFavをもらったり、シェアやリツイートしてもらったりと、副次的な結果が得られる可能性があります。

あるいはダイエットなどで「今日は○○カロリー以下に抑えられた!」「あれ食べたかったけど、今はダイエット優先。我慢できたよ!」などと投稿すれば、ポジティブな反応がもらいやすいかと思います。

SNSはこういった結果を作り出すのに便利ですね。分かりやすく確実な結果のつくり方の一つだといえます。

工夫8. トークン経済システムを活用する

セルフマネジメントではなく、他者の行動を支援するときに使いやすいのがトークン経済システムです。

適切な行動をしたときに、それに応じてトークンを獲得できるようにしておきます。トークンというのは、ポイントとかカノッサとか、まぁ何でもいいです。ちゃんと1時間勉強したら1ポイント、みたいな感じです。

トークンがある程度貯まったら、本人にとって望ましい別の何かと交換できるようにしておきます。10ポイント貯まったら1時間ゲームで遊べるとか、お小遣い100円アップとか。

トークンを獲得する手段として実行して欲しい適切な行動のリストと、トークンと交換できる本人とって望ましいもののリストの2つを用意しておくといいでしょう。トークン経済システムについては、別のブログで書いたことがありますので、こちらも参照してみてください。

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工夫9. 効果的な行動のルールを持つ

どういうメカニズムで物事が動いているのかという知識をもとに、「○○したら××という結果が得られる」といったルールを持つことができると、行動しやすくなることがあります。分かり難いですね。例で説明します。

自分で講座を開いたりすると、集客できるかどうかがとても気になります。集客できれば売上は上がるけど、できなければ費用ばかりかかって赤字です。そういうときに、例えば「興味を持ってくれる人をメルマガの読者として100人獲得できれば、講座に集客できる」といったことを学ぶと行動しやすくなります。いきなり集客しようとするのではなくて、まずはメルマガの読者を100人集める活動に集中しよう、となったりします。

あるいは筋トレしているなら、「良質なタンパク質を積極的に摂取すれば、筋肉が付きやすくなる」といったことを学べば、そこから「筋トレした後はバリウムを飲もう」みたいな行動のルールを持てるわけです。

ルールは効果的な行動のガイドラインみたいなもので、これだけで行動できるかというとそうでもないのですが、ないよりはあった方がいいです。実際に成果が出ると、行動と結果とを確信をもって関係づけられるので、更に行動しやすくなります。

工夫10. より適切な行動で同じメリットを得る

より少ない負担で、同じ効果を見込める行動があるのであれば、現在の行動をそれに置き換えてみてください。

冒頭のダイエットの例で「サラダチキンで減量」をお伝えしました。

食事をすることで「満足感」という結果を得ていたとすると、ただ食事を我慢するだけの減量は難しいでしょう。「食べて満足」という結果は分かりやすくて確実なものです。それに比べて、「食事制限を続けたらやがて痩せる」は、累積が必要な小さな結果です。食べて満足、という結果の方が強く影響します。

そこで食べるものをサラダチキンだとか、おでんといったものに変えるわけです。カロリーが低い割に、食べたときの満足感も得られるので続けやすいのです。本人が食事で求めていた満足感をこれまでと同様に得つつも、摂取カロリーを抑制できる工夫といえます。

工夫11. 忘れないように思い出すための仕組みを使う

新しい習慣を作ろうとしていたのに、行動すること自体を忘れてしまい、習慣化に失敗してしまう・・・ということもあります。特にやることが色々ある場合、忙しい日常に流されてしまい、新しい取り組みを忘れてしまいがちです。

忘れるというのは、言い換えると「思い出すきっかけが不足している」ということです。なので、思い出すためのきっかけを日常の中に作り出してください。

例えば、毎日パソコンを使うのであれば、モニターの縁に付箋紙を貼っておくといった工夫が考えられます。スケジュール帳を毎日見ているのであれば、そこにメモを書いておくのもいいかもしれません。スマートフォンのリマインダーを使うのもいいですね。

ポイントは既に定着している行動を使って、適切なタイミングで新しい取り組みのことを思い出せるようなきっかけを作ることです。

工夫12. 適切に行動が促されやすくなる補助刺激を使う

何もなしに適切な行動をすることが難しい場合もあります。結婚式でスピーチする場面などを想像してみてください。そういったことに慣れてない人でしたら、何も見ずに喋るのは困難なように思えるのではないかと。そういうときどうするかというと、事前に原稿を用意したりしますよね。

あるいは会議の場面などで、ついつい違う話題に逸れてしまって、本来話したかったテーマの議論が進まない・・・ということもあると思います。そういう場合に、今日議論すべきことをホワイトボードに箇条書きにしておくと、本来の話題に戻りやすくなります。

また議事録の用紙に前回決めたことを予め書いておいたり、会議後の具体的なアクション等を書き込む欄を用意しておけば、前回の議論を踏まえた話ができたり、最後に実行すべきアクションを設定することができたりするかもしれません。

適切な補助刺激を使うと、それを手がかりに適切な行動が促されやすくなるのです。

工夫13. 道具を使って行動のコストを変化させる

道具を変えることで、行動の負担が激減することもあります。

僕が見聞きした中でよくあるのが、古いパソコンを使い続けて、ブログを書くにも、資料を作るにもやたらと時間がかかってしまうというケースです。ちょっと何かをしたら固まってしまい動き出すのに時間がかかったり、酷い場合は頻繁にソフトが異常終了したり・・・。これでは行動の負担が大きすぎます。嫌になるのも当たり前。

パソコンを買い換えるのは確かにコストがかかるのですが、このように行動の負担が増えてしまい時間がかかったり、行動そのものをやめてしまうといった見えないコストもバカになりません。

他にも道具の不備で行動のコストが上がるパターンはあります。Skype等で通話する際に、マイクやスピーカーの質が悪くて、何度も聞き返す羽目になる・・・といったケースもありました。

道具を買い換えることでスムーズに行動できるようになるのであれば、十分に効果が期待できる投資だと思います。一度検討してみるといいかもしれませんね。

工夫14. 段取りを変えることで行動のコストを変化させる

長い文章を書くのは大変です。その人の技能レベルにもよるのでしょうが、僕の場合、いきなり5,000文字くらいの文章を書けと言われてもなかなかできません。文章書きに限らず、自分にとって難易度の高いことをやる場合、行動を分解してから取り組むとやりやすくなります。

分解するときに使えるのがフレームワークというやつで、例えば起承転結などは文章のフレームワークの一つです。あるいは、問題・結論・理由というフレームワークもあります。このような枠組みに沿って、まずは何を書くのかを箇条書きにしてから、文章を作り始めると、何もなしではじめるよりは負担が軽くなります。

負担が減るだけでなく、最終的なアウトプットの質を上げるのにも役立つので、自分の取り組んでいる活動についてのフレームワークを幾つか持っているといいですね。

工夫15. 練習で行動の質とコストを低減する

十分なレベルで行動できるだけの技能が無い場合、いくら結果が伴う工夫をしても、そもそも適切に行動できない状態なのでなかなか結果が得られません。

自転車の例が分かりやすいと思いますが、どれだけ快適に気持ちよく走ることができる自転車があっても、自転車に乗るための技能がなければ自転車の恩恵を得ることはできません。このような場合は、スキルトレーニング、つまり練習することで、適切なレベルで行動できるようにします。

他にも、例えば文章を書くのに時間がかかってしまい、ブログの更新に負担を感じてしまう・・・という場合。これも技能不足が原因の一つです。文章を書くトレーニングをすれば、いままでより短時間で質の高い文章を書けるようになることでしょう。

工夫16. 欠乏と行動とを結びつける

欠乏というのは、僕たち人間にとって強く働く動機の一つです。お金が足りない、時間が足りない、人間関係に不足を感じる等。こういったリソースの欠乏があると、そのリソースを獲得することに強い魅力を感じます。行動分析学的にいえば、確立操作が成立している状態、でしょうか。

欠乏を自覚しているリソースがあるなら、その獲得を目指し、取り組む行動を設定してみるといいでしょう。特に工夫9でお伝えした「効果的な行動のルール」と組み合わせると、「行動」と「欠乏の解消」との関係づけが成立して、より行動しやすくなるでしょう。

もっとも欠乏については、場合によってそれに振り回されてしまって、行動が歪になってしまうことがあります。欠乏を行動に活用するには、僅かばかりのゆとりが必要です。この辺りの詳細については、下記も参考にしてみてください。

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工夫17. 価値と行動とを結びつける

僕たちは「ある種の質」をもった行為に魅力を感じることがあります。行動や行動の直接的な所産に、その「ある種の質」を見出せると、それで行動しやすくなる場合があります。

例えばブログを書くことを考えてみます。行動は「文章を書くこと」であり、行動の所産は「できあがった記事」になります。漫然とブログを書いていてもいいのですが、文章を書く行為であるとか、できあがった記事といったものに「何らかの質」を込めることができれば、ブログを書くこと自体への魅力が高まります。

どのような質に魅力を感じるかは人それぞれですが、僕の場合は「自分が好きで研究し発見したことを、”面白いよね?役立つよね?”と思ってもらえるように伝える」となります。文章を書くことやできあがった記事に、そういった質を持たせることができれば、行動がやや積極的なものになります。長い文章でも頑張って書くことができたり、書いているうちにノリノリになったり。

自分がどのような質に魅力を感じるかを知っておくと、色んな場面で活用できるようになります。上記の僕にとっての「質」は、ブログを書く時だけでなく、講座のテキストを作る時や、講師をする時、ビジネスのアイデアを考える時にも重要な役割を果たします。

自分が魅力を感じている「行為にともなう質」のことを価値といいますが、価値と行動については下記の記事でも取り上げていますので、読んでみてください。

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工夫18. 行動の結果を意識の前面に持ってくる工夫

欠乏や価値に関連した結果は、自分にとってある程度の魅力を持つものだと思います。ただ、それでも僕たちの日常には色々あって、ついついその魅力を忘れてしまいます。忘れるというか、意識しなくなるという感じでしょうか。

そこで求めている結果を「気になるようにする工夫」もやってみるといいです。例えば、運動とカロリーコントロールで体重を減らそうとしている時、「毎週2,000kcal相当の運動をしている人は死亡危険率が下がる」といった情報を得たとすると、運動することへの魅力が高まり、そのことについて考える頻度が増えるかもしれません。

あるいは、いま目指している結果を誰かに話したところ、「凄いね!楽しみにしてるよ!」なんて言われたおかげで、その結果のことが意識の前面に残り続けるということもあります。

求めている結果に情報だとか誰かの反応だとかを付加することで、そのことへの魅力が高まり、普段から何度も考えてしまうようになると、日常に流されて意識しなくなるということが減ります。

まとめ:行動を促す方向へ小さな工夫を束ねる

本記事では18個の工夫についてお伝えしました。これらの工夫は、どれか一つを実践すればそれで行動できるようになる、というものではありません。残念ながら。行動契約などは相当強力なので、それだけでやっちゃえるかもしれませんが。

また中には好みじゃないと思える工夫もあったと思います。全ての工夫をやらなければいけないわけではありません。使えそうなものを使ってください。

大切なのは工夫を束ねるということです。1つ1つの工夫は小さな力しか持たなくても、同じヘクトルの力を重ねていけば、何もしないのに比べて圧倒的に行動しやすくなります。

複数の工夫を束ねるためには、複数の「具体的な工夫」を作り出すためのガイドが必要です。僕自身、「理屈は分かるけど具体的にはどうしたらいいのか分からない」という悩みを抱えていました。今回お伝えした18個の工夫をガイド役として使い、あなたなりの具体的な工夫を作り出していただければ嬉しいです。