行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

独立したのに「やりたくない仕事に忙殺」されている人のための断る力

自分のペースで働きたくて独立しのに、なぜだかやりたくもないし事に忙殺される毎日に・・・なんてことがあります。

収入が不足していたりすると、やりたくもない仕事でもやるしかなかったり、どうにも断り難い相手からの仕事でつい引き受けちゃったり、まぁ、独立したが故に大変なこともありますよね。

しかし、せっかくリスク負って独立したのですから、やりたい仕事/やらざるを得ない仕事ののバランスを、ある程度満足できるように整えたいものです。

そこで、なぜやりたくない仕事を断れないのか、また断るためにはどうすればいいのか、ということについて書いてみました。

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いつの間にかやりたくもない仕事に忙殺されてしまう

自分のペースで働きたくて独立したはずなのに・・・

独立して働いている方の中には、会社や上司からあれこれと指示されたりするのが窮屈で嫌だから独立した・・・って人も結構いるんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。まぁ、自分がそうだから、他にもそういう人がいるんじゃないかなーと勝手に思い込んでいるだけかもしれませんが。

で、上記のような理由で独立した場合、かえって自由に働けなくなってしまうこともあります。

何事も自分の判断で決めて、自分のペースで働こうと思っていたのに、いつの間にかやりたくもない仕事が増えてきたり、嫌なお客さんの依頼を受けなきゃいけなくなったり・・・。しかもそれを断ってしまうと、生活が危ういという。

もしかしたら会社員をしていたころよりも悪化してるんじゃないか、と思ってしまうこともあるかもしれませんね。

自分が満足できる程度には仕事のバランスを取りたい

まぁ、そもそも「やりたいことだけをやって食べていく」というのは、なかなかに難しいことです。やりたい仕事であっても、細かくみていけばやりたくない作業が含まれていることもありますし。

しかし、それでも尚、独立して働いているのであれば、ある程度は自分のペースで仕事ができたっていいじゃないか、という思いもあるわけです。

やりたい仕事とやらざるを得ない仕事、そのどちらかだけしかないという状況はあまり機能的ではないのでしょう。ただ自分の働き方に満足できる程度には、バランスを取っていきたいものです。それは独立というリスクを負うことのメリットの一つだと思います。

仕事を断ることができない理由は2つ

やりたくない仕事に忙殺されてしまうのは、そもそも仕事が来たときに「断らない」からです。やらないという選択をしていれば、忙殺されるような事態にはならないはず。

ではなぜ断ることができないのか。理由は2つです。

  1. 欠乏の圧力に負ける
  2. 相手の圧力に負ける

欠乏の圧力というのは、今回の文脈でいえば「お金」であることが殆どでしょう。収入が不足しているから、仕事を断ることができない。断ってしまうと、生活が危うくなってしまう。そんな状況では、当然、断るのは難しくなります。

相手の圧力というのは、パワハラとかそういうのではなくて、相手に気を遣って断れないとか、相手との関係が気まずくなりそうで断れないというケースです。断るよりも引き受けた方が、相手から良い反応が返ってくるでしょうから、つい受けることを選んでしまうのです。

やらないという選択を選びやすい状況を作る

お金が欠乏していれば、すぐに確実にお金を得るための選択が優位になる

まずは欠乏の圧力について考えてみましょう。お金は現代社会において生活を営む上で重要な資源の一つです。お金が無ければ衣食住が確保できなくなる場合すらあります。

そうするとお金という資源の影響力が強くなってしまいますので、仕事の選択も必然的に「なるべく早く、確実にお金を得られるもの」が優先されがちになります。やりたい仕事かどうかは、それよりも優先度が低くなりやすいのですね。

このような状況ではやらないことを選ぶのは難しくなりますので、お金が不足しているという状況を改善する必要があります。ただ、ここでお金不足を時間と労力を投下して解決しようとするとドツボに嵌まりますので注意してください。

詳しくはこちらの記事で。

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将来の状況が有利になるような戦略的な活動を積み重ねよう

大切なのは将来の状況が有利になることを意図して頑張るということです。単に闇雲に頑張るだけだと、なかなか欠乏の状態からは抜け出せないでしょう。実はこの辺りについては既に書いたことがあるので、下記をご紹介して省略。

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なかなか短期間ですぱっと欠乏を解消することは難しいですが、それでも狙いを持ってコツコツと戦略的な行動を積み重ねてください。やり続けるうちに次第に状況が良くなってきます。欠乏が解消されれば、やらないことを選択するのも可能になるかと思います。

なかなか断れない人のための3つの処方箋

お金の欠乏がなかったとしても、相手の反応の影響を受けて断れないというケースもあります。これはこれで厄介な問題です。特に「なかなか断れない人」は、断ることの怖さや難しさに悩んでいるのではないでしょうか。

断れない問題を解消するためのポイントは次の3つです。

  1. やる/やらないの判断基準を自分の中に作る
  2. 断るための訓練をする
  3. 仕事のバランスを取らざるを得ない環境を作る

ポイント1:やる/やらないの判断基準を自分の中に作る

まず1点目の「やる/やらないの判断基準」を自分の中に作る方法ですが、これについては下記の記事で書きましたので参照してください。

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大切なのは、まずは判断できるようになるということです。判断できて、次に判断通りの行動ができるようになる、というステップになります。最初の判断が間違っていれば、どうにもなりません。やるかやらないかについての自分なりの基準を作っておいてください。

ポイント2:断るための訓練をする

2点目の断るための訓練についてですが、断ることが苦手な人はそもそも断ることをあまりしません。そうすると「断ることで嫌なことが起きるんじゃないか(相手が怒り出すとか嫌味をいってくるとか)」という、行動に対するネガティブな関係づけが解消されなくなります。

断り方にもよりますが、実際に断ってみた時に、相手から変な反応が返ってくることはあまりありません。殆どは社会人として真っ当な方達ですから、ちゃんと相応の返事くれます。そういう経験を何度かすると、断ることの難易度が随分と下がってきます。

というわけでまずは断りやすい相手だったり、断りやすい内容の時に、実際に断ってみるという体験を繰り返してみてください。できるようになったら、どうにも断りづらい相手・内容へとステップアップしていきましょう。

仕事に関係ないところから練習してみるのもいいかもしれませんね。

ポイント3:仕事のバランスを取らざるを得ない環境を作る

3点目の仕事のバランスを取らざるを得ない環境を作るとは、やりたくない仕事を引き受けすぎて、仕事のバランスが崩れた場合にペナルティを負うようにする方法です。行動契約という手法を使います。行動契約については下記を読んでみてください。

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例えば、想定していない本業以外の仕事の依頼を引き受けてもいいのは3件/月までと決めておきます。あるいはお得意様以外からの仕事を引き受けていいのは1件/週までとか。

具体的にどう設定すればいいかは、皆さんのお仕事の内容・状況次第ですが、「断れないで追い詰められてしまう行動の傾向」を何らかの形で測定できるように考えてみてください。

その上で設定した基準を守るようにします。守れなかったらペナルティ。そうすると仕事のバランスを取る方向へと強制力が働きますので、結果として自分の働き方に満足しやすくなります。

これは、制約を上手く使うことで働き方が自由になる、という考え方なのです。こういうふうにしたいという思いがあるのでしたら、自分の行動がそれに沿ったものになるように、ある程度の強制力を働かせるようにするといいのです。

まとめ

本記事でお伝えしたことは次の3点です。

  1. 断ることができなくて、やりたくもない仕事に忙殺されてしまうのは、「欠乏の圧力」と「相手の圧力」が理由である。断りたくても断れない状況・環境に置かれているのだ。
  2. やりたい仕事とやらざるを得ない仕事のバランスを、満足できる程度には整えよう。そのためにまずは「断りやすい状況」を作ること。具体的には生活の基盤が安定するだけの収入が得られるよう、狙いを持った活動を積み重ねること。
  3. 欠乏が解消できているなら次は実際に「断る」ことができるようになることを目指す。そのための処方箋は3つ。(1)やる/やらないの基準を明確に持つ、(2)断ることに慣れるための訓練をする、(3)仕事のバランスを取らざるを得ない環境を持つ。