行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

頑張りが無駄にならない「賢い努力」の見極め方とは?

Q.
賢く努力しないと無駄になると聞きました。 でも、賢い努力かそうでない努力か、どうすれば分かるのでしょうか?

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A.
努力をしようとしている分野への理解と、自分のできること・できそうなことへの理解が不足が、努力の方向性を決められない原因。仮説検証のサイクルを回しながら、この2つへの理解を深めていけば、自ずと賢い努力の方向性も見えてきますよ。

解説:努力しようとしている分野と自分への理解を深める仮説検証のサイクル

まず「賢い努力」を具体的にしてみる

まず前提として、次のように考えます。

  1. ヒトには遺伝と学習によって「能力(≒行動レパートリー)」を獲得する
  2. 能力と環境の組み合わせによって「パフォーマンス」を発揮する

努力の目的は「能力を獲得すること」か「パフォーマンスを発揮すること」です。努力した結果、適切な能力を獲得したり、適切なパフォーマンスが発揮できるようになることで、欲している成果・結果を達成できます。

よって賢い努力をひとまず次のように定義します。

  • 適切な能力の獲得、適切なパフォーマンスの発揮に貢献する活動

そうすると賢い努力であるかは、「適切な能力とは何か?」「適切なパフォーマンスとは何か?」が分からないと判断できないということになります。

仮説検証のサイクルが実用的な知識につながる

あなたが努力をしようとしている分野において、能力やパフォーマンスの適切さを判断するための材料は、「地に足のついた実用的な知識」と「自分についての理解」です。この2つの情報と照らし合わせることで、ある能力やパフォーマンスが適切かそうでないかを判断できます。

地に足のついた実用的な知識とは、形式的な知識を実践経験によって自分なりに補正したもののことです。本だけ読んで分かったつもりになった知識は、実用的とは言えません。

実用的な知識を獲得するためには、本を読んだり誰かに教えてもらいながら自分なりに仮説を設定し、Try&Errorでその仮説を検証する必要があります。その積み重ねによって、実用的な知識を蓄えることができます。

実用的な知識があれば、努力をしようとしている分野において、そもそもやっても無駄なことであったり、成果を出すための重要なポイント等を見極めることができるようになります。

自分のできること・できそうなことに集中する

また上記のように仮説を設定し、仮説通りに実践するには「パフォーマンス」を発揮する必要があります。ここで出てくるのが自分についての理解です。

自分についての理解とは、簡単にいえば自分にできること、できそうなこと、できないことについて当たりを付けておくことを指しています。

できることであれば、能力があるということですので、パフォーマンスを発揮するための環境を整えることになります。

いますぐは無理だけどできそうなことであれば、能力を獲得するための訓練(学習)をすることになります。

訓練しても十分な能力を獲得できない、または十分な訓練をするための条件が整えられないと判断したのであれば、そこに手を付けてはいけません。

さて、ここまでをまとめます。

  1. 実用的な知識を獲得するために仮説を設定する。その際は「自分のできること・できそうなこと」と照らし合わせておく。訓練してもできないことであれば、そもそも仮説として不適切。
  2. 仮説を実践するために、パフォーマンスを発揮するための工夫であったり、能力を伸ばすための訓練に取り組む。
  3. 実践結果から仮説を検証する。必要であれば新たな知識を獲得し、熟考の材料とする。熟考からは新しい次の仮説が生まれる。

以上のようなステップを回し続けることが賢い努力です。