行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

後悔するのが不安で始められない方への行動科学の処方箋

Q.
自分のやりたいことに確信が持てない。 やりはじめて違った時に、嫌なことをやり続けることになるのが不安。

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A.
やる前から確信を持つのは不可能です。また、不安を解消することも不可能です。解決不可能な問題を解決しようとしても、時間と労力が費やされるだけ。 あなたにとって重要で、かつ解決可能な問題に集中してください。それは「不安だけど試しに行動する」ことです。

解説:試しにやってみることが鍵、そこから好循環が始まる

やりたいことに確信がもてない理由

やりたいことに確信が持てない理由は簡単です。経験がないから、これに尽きます。多少なりともやってみたことがあって、その経験があれば、実用的な判断の材料になります。しかし、経験が無い場合は想像で考えるしかなく、想像である以上、確信を持つには到らないでしょう。

ではなぜ経験が無いのかというと、やってみたことがないから。

やってみたことが無いから経験が無い。経験が無いから確信が持てない。確信が持てないからやってみることができない。何だか循環論的になってきました。まぁ、要はこれらは全部同じことを言っているのでしょう。

つまり、「確信が持てない」とは「やってみたことがありません」といっているのと大して変わらないということです。言い換えているだけなのです。なので、確信がないことは、やってみることができない理由にはなりません。

前門の虎、後門の狼って感じ?

改めてやってみることができない理由を考えてみましょう。質問から読み解くに、

やりたいと思って始めてみたが、いざやってみたら楽しくない、やりがいを感じない、嫌なことが多い。にも関わらず、始めてしまったので、やりたくないことを続けなければならない。

という状況を避けたいということなのでしょう。では、なぜこのように考えてしまうのかを検討してみます。

ヒトは避けたいものが出現してしまう行動には、消極的になるものです。ですので、やりたくないのであれば、嫌なことが多いのであれば、それを避けて止めてしまうのが自然な行動。

しかし、質問者は止められずに続けなければならない状況を想定しています。ということは「止めずに続ける」という行動に、何らかのメリットが伴っているということだと思います。

例えば次のようなメリットだとどうでしょうか?

  • 止めると関係者や知人に責任感がないと評価されそうだが、止めずに続ければそう思われることを避けられる
  • 途中で放棄することが情けない気がするので、止めずに続ければそう考えてしまうことを避けられる
  • 止めると関係者に止めることを伝えたり、それに関連した依頼を断らないといけないが、それをやりたくない。止めずに続ければ、そういった気が重いことをやらずに済む

他にも色々あるかもしれません。ただ共通していえることは、続けるのも苦痛だが、止めることにも苦痛が伴うという進むことも退くことも辛い状態に陥ってしまう、ということでしょうか。

こうなるのを避けたいので、そもそも最初から「やってみる」ことをしようとしません。

まだ起きていない問題は解決することができない

ところで上記のような出来事は、現実に起きている問題なのでしょうか?やってみることを避けている以上、当然、まだ起きていない問題です。

まだ起きていない問題なので解決することができません。唯一の解決策が「確信をもってやりたいと思えることをやる」なのでしょうが、それも最初に書いたように「やってみた経験」があってはじめて得られるもの。

つまり、質問者の悩みは解決することのできない問題なのです。この悩みを何とかしようと頑張ったところで、時間と労力だけが費やされていくだけです。

解決可能で、しかも重要な問題に集中しよう

それよりももっと解決可能な問題に目を向けましょう。とても重要な問題です。

それは「どうしたら悩みや不安を抱えたままでも、やってみることができるだろうか?」ということ。

悩みや不安を解消してから行動するのではありません。悩みや不安があっても、それでも行動するにはどうすればいいか、です。

確信がなくても行動するには。いざやってみたら、嫌なことがあるかもしれないけど、それでも行動するには。

未知のことにチャレンジするのに、悩みや不安が全くないなんてことは有り得ません。悩みや不安を抱えた状態がノーマル、健全なのだと知ってください。

それが普通なのですから、そのまま行動してもいいのです。是非「試しにやってみて」ください。

試しにやってみるための心強い味方は?

とはいえ、それだけだとなかなか足を踏み出せないかもしれません。そういうときに使えるとても有名な方法があります。

それは「スモールステップ」です。やってみたいことについて、ぐっと規模を小さくしたり、期間を短くしたり、ハードルを低くしたりして試してみてはいかがでしょうか。

やりたいことが進みますし、何より不安や悩みがあっても前に進めるという得がたい経験が得られます。不安でも普通に行動できるようになります。