行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

抜群の継続力が得られる行動契約のススメ

習慣化したい行動がたくさんあります。僕にもあなたにも。だから行動を継続する力が得られれば、どんなに良いことか。

しかし現実は厳しいもので、なかなか行動を継続することができません。継続したい思う行動ほど、続けることの難易度が高く、何度も挫折してしまいます。

どうしたら僕たちはもっと色んな行動を習慣化できるのでしょうか。継続力を得ることができるのでしょうか。

その答えは行動分析学にあります。行動する理由、行動できない理由を読み解いていけば、なぜ習慣が続かないのかも見えてきます。同時に、行動する理由を作ることさえできれば、習慣が続くであろうことも分かってきます。

今回お伝えするのは、継続力を得るための強力な方法である「行動契約」についてです。

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僕たちはなぜ行動を継続できないのか?

内在的な行動の理由、付加的な行動の理由

行動が継続できない理由は簡単です。行動する理由が維持・継続していないため。行動する理由が機能している間は、その理由に沿って行動することができます。しかし、行動する理由がない、あるけど一時的なものになっている場合は、どうしても行動は止まりやすくなります。

行動する理由をしっかりとコントロールできてこそ、習慣的な行動を「狙って」作ることができるのです。

僕たちの行動する理由は、大きく分けて2つです。

  1. 行動内在的な行動の理由
  2. 付加的な行動の理由

行動内在的な行動の理由は、行動することそのものに内包されているものです。行動した瞬間に内在的な行動の理由は満たされるため、継続するのに有利なタイプの行動といえます。

一方、付加的な行動の理由とは、行動それ単体では行動するのに十分な理由が生じません。理由は行動の外から付加的に与えられます。例えば、

  • 晩ご飯を作ったら妻が「ありがとう」と言ってくれた
  • ブログを更新したらFacebookでイイネがついた等

はそれぞれ付加的な行動の結果となります。

内在的な行動の理由がない場合は工夫が必要

内在的な行動の理由がある場合は、行動するだけで十分に魅力的な行動の結果に接触することができます。そしてその魅力的な行動の結果によって、行動が継続するわけです。

しかし、内在的な理由がない場合、行動を継続するための付加的な理由を作り出す必要があります。

例えば、早起きすることを友人のAさんに約束したとします。そうすると、早起きすることには「Aさんとの約束が守れた」という結果が付随するようになります。Aさんとの約束が重要なものであれば、高い可能性で早起きすることになるでしょう。

このような付加的な理由を継続のために活用するのです。行動を継続したい期間の分だけ、付加的な理由も維持されなければいけません。

上記のAさんとの約束を継続のために活用するのであれば、常にAさんと約束し続けなければなりません。Aさんが協力的であれば使えるかもしれませんが、毎日毎日、あなたの早起きのために約束を意識しておいてもらうことは、Aさんにとってやや負担の大きいことかもしれませんね。

継続のための付加的な理由を作り、維持するための手段として、僕が最も便利だと考えているのは「行動契約」です。行動契約を上手く活用して、継続のための仕組みを整えてしまいましょう。

行動契約は継続力にどう効くのか?

行動契約とは何か?

まず行動契約について説明しておきます。

行動契約とは、行動目標の達成を約束し、守れなかった場合はペナルティを負うという契約です。次の3つがポイントです。

  1. 行動目標:どんな行動を実行するのか。行動の質、量、期間なども可能な限り具体的に記述する。
  2. ペナルティ:本当に嫌だと思える内容。行動目標の難易度とバランスを取る。
  3. ペナルティの実行を保証する工夫をする。ペナルティの実行がなぁなぁになると行動契約は効かなくなる。

ペナルティが十分に嫌悪的なものであり、ペナルティの実行が保証される何らかの仕組みがあれば、僕たちには約束を守る十分な理由が生じます。例えば僕は次のような行動契約を作っています。

毎週、ブログを2記事更新する。守れなかった場合は、$30のペナルティを支払う。

意味もなく$30を支払うことは僕にとって結構痛いので、僕はできる限りの努力をして、毎週ブログを更新することになります。

長期的な行動契約は「付加的な継続の理由」をもたらす

この行動契約を長期的に使い続けることで、僕たちは行動を継続することができるようになるのです。

先ほどのブログ更新の行動契約によって、僕はいまあなたが読んでいるこのブログの更新を33週間継続することができています(執筆時点)。

また他にも次のような行動を継続することができています。

  • 週に5日、15分以上の読書時間を取る
  • 毎週のカロリー収支(摂取カロリー − 消費カロリー)を1,500kcal/日以内に抑える
  • 毎週定められた時間枠内で仕事を終える(※時間割ゲームといいます。詳細はこちらを参照)

いずれも意思の力で頑張ろうとして挫折したことで、行動契約のおかげで容易に継続できる状態になっています。ペナルティを使うということで忌避されがちではあるのですが、それを考慮にいれても十分に便利な道具だと思います。使わなければ損。

行動契約を活用するためのポイントは?

毎週の行動目標を設定し約束すること

行動契約を継続のために活用する場合、一定サイクルごとに行動目標を達成したかどうかをチェックするといいでしょう。僕の場合は毎週、行動目標の達成状況を確認します。

毎週日曜日が終わるころに、ブログを2記事更新できたか、カロリー収支は1,500kcal/日以内に抑えられたか、週に5日以上の読書はできたか等をチェックします。

それぞれの行動目標ごとにペナルティが設定されていますので、例えば2つの目標を達成できていなかったら$60を支払うことになります。とっても痛いですね。

でも、幸いにしてペナルティを支払うことは滅多にありません。痛いからこそ、何としても行動目標を達成しようと頑張ることができるのです。

ペナルティのバランスに気を遣うこと

行動契約を作る際に気を遣うのが、ペナルティの設定です。ペナルティは軽すぎてもいけませんし、重すぎてもいけません。

ペナルティが軽すぎると、行動目標の達成が大変そうな時に「もうペナルティでいいや」と達成を諦めてしまうことになります。これでは行動を継続することはできません。長期的に取り組む場合、厳しい状況に追い込まれることはあるもの。そんなときに最後の一踏ん張りを促してくれるのがペナルティの存在なのです。

一方でペナルティが重すぎる場合も問題です。極端な話ですが、僕が使っているペナルティが仮に$3000だったとしましょう。このペナルティを負ってしまうと、我が家の家計に致命的なダメージを与えかねません。一度のペナルティでそれ以上の継続ができなくなります。

行動契約を長期間使い続けると、何度かはペナルティを負うことになります。残念ながら。だからこそ、「痛いんだけど継続する分には問題ない」というバランスを取るようにしてください。

僕にとってはそれが$30ということになります。

行動契約の運用を軽量化しておくこと

最後に運用の話です。行動契約に限らず、様々な手法・やり方は、なるべく簡単に運用できるようにしておくべきです。

行動契約に関してはStickK.comというWebサービスを活用するのが良いでしょう。行動目標の設定から、毎週の報告のリマインド、失敗した場合のペナルティの実行などをサポートしてくれます。

StickK.comの使い方については、下記の記事にまとめてありますので参考にしてみてください。

www.behavior-assist.jp

また運用を軽量化するためのもう1つのポイントとして、行動契約を同時にたくさん設定しないようにしましょう。慣れないうちは1つだけにしておいてください。慣れてからも、せいぜい4〜5つ以内がいいでしょう。

あまりたくさん行動契約しすぎると、負担が大きくなりすぎて守れないことが増えたり、煩雑になってストレスが増すことになります。自分にとってちょうど良い数にしておいてください。

まとめ

本記事でお伝えしたことは次の3つです。

  1. 内在的な理由のない行動を継続するためには、付加的な行動の理由を維持する必要がある。そのための道具として、行動契約が便利。
  2. 行動契約は行動目標とペナルティがセットになったもの。長期的な行動契約を使うことで、継続するための付加的な理由を手に入れられる。
  3. 継続のために行動契約を使う場合は、(1)週次で目標の達成状況をチェックする、(2)継続可能なレベルのペナルティを使う、(3)可能な限り簡単に運用できるようにしておくといった工夫をすること。