行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

複数の仕事を抱えて効率低下に苦しむ人がやるべきこと

Q.
複数の仕事を同時並行でやっています。上手く管理できていないのか、効率が悪いように感じています。どうすればいいでしょうか。

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A.
1つの仕事に集中するための「ひとかたまりの時間」を作ること、再開のためのToDoを未来の自分に設定することで、効率の低下を多少緩和できるかと思います。ただ根本的には少数の仕事に集中できるように調整した方がいいでしょう。

解説:仕事の切り替えによって発生するコストを減らす工夫

効率低下の原因は「環境の切り替え」と「流れの切れること」

複数の仕事を同時に抱えていると、なぜ効率が低下するのでしょうか。体感的には確かにそんな気がします。

複数の仕事による効率の低下は、次の2つによって生じているものと考えられます。

  1. 環境の切り替え
  2. 仕事の流れが切れる

環境の切り替えコストと最適化能力の低下

1つの仕事をしていると、環境はその仕事に最適化されていきます。よく使う道具を手の届くところにおいておたり、必要な資料や情報をすぐに閲覧できるようにしたり、パソコンで使うアプリケーションを立ち上げておいたり。

少ない労働コストで仕事ができるように調整されていくはず。労働コストの大小というのは結構バカにできないもので、例えば椅子から立つ必要があるかないか程度のことでも、行動の頻度に影響を与えます。

それで仕事が複数になってしまうと、この環境の最適化が上手く働かなくなる可能性があります。環境を切り替えるのにコストが生じたり、複数の環境が混在することで最適化能力が低下したり。

結果、1つの仕事に専念するのに比べて、スムーズに仕事ができる環境ではなくなってしまいます。

流れの再構築にかかる時間と手間

もう一つの原因である「仕事の流れが切れる」ですが、刺激反応連鎖という仕組みがあります。Aという行動の結果が、次のBという行動の準備になっていて、Aの完了と同時にBがはじまる。で、BはCの準備で・・・以下略。

1つの単位の仕事は、概ねこの刺激反応連鎖によって構成されています。

例えばこのコラムを書く作業であっても、「テーマを選ぶ → 原因を分析する → 対策を考える → 文章に起こす → Facebookに投稿する」という流れがあります。

一度この流れが切れてしまうと「ええとどこまで進んだっけ」と、流れを再構築する時間と手間が必要になります。この辺りにも効率の低下要因があるのではないかと思われます。

あと偶にしかやらない仕事が久しぶりに来ると、この流れ自体を作り出すのに苦労したりします。これも厄介。

根本的には仕事の種類を減らすべき

さて、ではどうするかを考えてみましょう。

根本的には仕事の種類を減らすべきです。環境の切り替えや流れが切れてしまうことをゼロにはできません。どうしたって少数の仕事に集中するよりは効率が低下します。

自分にとって重要かつある程度成果の見込める仕事に集中し、重要でないかつ成果も出ていない仕事を減らすといいでしょう。

そうできないから苦労してる、という声が聞こえてきそうです。なので次善策も検討してみましょう。

1つのことに集中する「ひとかたまりの時間」を作る

まず少なくとも「ひとかたまりの時間内」は1つの仕事に専念するといいです。僕は良くこの方法を使います。90分は1つの種類の仕事だけをやる。別の仕事に切り替えるのは、次の90分から。

思いつくままにとか、他人の割り込みによって・・・ではなく、自分の計画した通りに仕事が切り替えられるようにしておくと良いと思います。

数時間程度の後回しが許容されない仕事なんて、殆どありません。何か割り込みが来てすぐにレスポンスするのもいいですが、計画的に後回しにすることも必要です。

流れを再開させるToDoを未来の自分に設定する

また仕事の流れを再読み込みしやすくするために、再開するためのToDoを設定しておくといいでしょう。例えば「昨日作成したプレゼン資料のファイルを開く」とか。機械的に流れを再開できるようにしておけば、少しは楽に再開できるかと。

あとは偶にやる仕事のために、流れをチェックリスト化しておくのも有効です。

思い出すためのきっかけを未来の自分のために用意しておく、という感じです。