行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

膨大なToDoリストも「いまやるべきことに集中できる環境」を作れば問題ではない。

Q.
小さな行動に分解するといいときいてやってみたのですが、ToDoが膨大な数になってかえって気が重くなってしまいました。

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A.
どんなに道のりが遠くても、僕たちにできることは「今日の行動」のみです。ポイントは「いま集中すべきことを目立たせること、そしてそれ以外は目立たなくすること」です。そうすれば行動しやすい環境が手に入ります。

解説:いま集中すべきことを目立たせること、それ以外は目立たなくすること

スモールステップに分解した膨大なタスクに圧倒される問題

目標達成は具体的な行動に分解することから始まります。何をやるかがハッキリしなければ行動することはできませんので。

また目標でなくとも大きな課題・問題を抱えた時にも、小さな行動へ分解することで解決のための小さな一歩が踏み出しやすくなります。スモールステップというやつですよね。

スモールステップへの分解は、大抵の場合は有効に働きます。行動が実行可能なレベルで具体的に表現されていることの恩恵は、とても大きいのです。しかし、時々、質問者のような問題を作り出してしまうこともあります。できあがった行動のリストがあまりにも膨大すぎて圧倒されてしまうのです。

このような膨大な行動のリストは、次のどちらかを意味しています。

  1. 超短時間で終わるタスクがリストアップされている
  2. 目標達成や課題クリアまでの道のりが遠い

それぞれ対処が異なりますので、1つずつ解説します。

超速で片付くタスクなら、そこには寧ろチャンスがある

超短時間で終わるタスクがリストアップされている場合、実は何の問題もありません。寧ろチャンスです。

簡単に言ってしまえばやったことがないから圧倒されているだけで、実際にやってみればサクサクとタスクが消えていく爽快感を味わえることでしょう。数分でも取り組んでみれば複数個のタスクが完了するはずです。

やってみて完了を得る、というのは僕たちの行動を強化します(促されやすくなる)。なので試しに手を付けてみてください。そうすれば何も問題がなかったことを体験することができるでしょう。

遠い道のりに気が重くなるのは「フォーカス」の問題である

さて問題は本当にゴールまでの道のりが遠い場合です。本当にウンザリしますよね。

しかしながらこれは結局のところ、何に注目しているのかという問題だったりします。どんなに道のりが遠かろうと、今日やること自体はそう大きなものではありません。それを淡々と実行できればいいわけです。明日以降のことを考えて気を重くしても、何のメリットもありません。

つまり、この問題を解決するには「今日または今週やるべきことのみを視界に入れ、それ以外の先々のタスクは視界の外に出す」ことができればいいのです。

今日にフォーカスするための行動レパートリーを持て

あとはそのための手段をあなたがもっているかどうか次第です。

僕たちの仲間にいる榎本あつしさんは、毎日、夜に明日やることを手帳に書き写すことをしているそうです(参考:夢をかなえる「行動アシスト手帳」の作り方講座。)。このやり方はヒントになります。というかそのまま真似してもいいかもしれません。

行動のリストを見ながら、今日や明日にフォーカスすべき行動のみを手帳やToDoリストに書き写してみましょう。あるいは今週フォーカスすべき行動でもいいかもしれません。

書き写したら行動のリストは引き出しにでもしまってしまいましょう。書き写してしまえばもう用が無いからです。また明日(あるいは来週)、次の行動を書き写す時に再び取り出せばいいのです。今日(今週)の進捗をふりかえりながら、次にフォーカスすべきことを決めましょう。

繰り返します。ポイントは「いま集中すべきことを目立たせること、そしてそれ以外は目立たなくすること」です。専門的には刺激プロンプトといいます。やるべき行動に集中しやすい環境が手に入ります。

行動が促される工夫を加えておく

やるべき行動に集中しやすい環境ができたら、それに加えて行動が促される工夫もしておきましょう。工夫の方向性は2つ。1つはソーシャルフィードバックの活用、もう1つは行動契約です。

ソーシャルフィードバックを活用する

ソーシャルフィードバックとは他者からの働きかけ。例えば、○○をやることを予め宣言し、実際に行動できたらそのことを報告する、といった方法です。やろうとしていることについての関係者に宣言すると、より効果的かと。

ソーシャルフィードバックは活用の幅が広い方法で、勉強やスポーツの習慣であれば一緒にやってくれる仲間を見つけると、行動を継続しやすくなります。ハードなトレーニングであったり、困難な目標に取り組むときはパーソナルトレーナーやコーチを付けると、途中の挫折を回避しやすくなるでしょう。

やろうとしていることについて、誰か協力してくれる人が見つからないか探してみてください。

行動契約を使う

行動契約とは「○○をやると約束して、守れなかった場合はペナルティを負う」という方法です。ペナルティに本当に嫌なことが設定されていれば、ペナルティを回避するためという理由で行動が促されます。

行動契約は非常に強力な方法で、どうしても成し遂げたいことがあるのであれば試してみることをお勧めします。

行動契約についての詳細は下記を読んでみてください。

www.behavior-assist.jp

やるべきことに集中しやすい環境を作り、行動が促される工夫をすれば、もはや問題はありません。あとはやるのみ。