行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

正解が分からなくて躊躇する人が自信を持つために必要なこと

Q.
正解が分からないので行動することを躊躇してしまう。もっと自信をもって選べるようにしたい。

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A.
いまの経験をもって過去にタイムスリップできたら、色々な場面で正解を選ぶことができそうですよね。つまり、経験に基づく情報があれば正解を選ぶ確率が高まります。では経験に基づく情報を選ぶには?答えは簡単。トライしてみることです。繰り返し試すことは、あなたに自信をもたらすでしょう。

”失敗したくない”という考えの実態を理解しよう

正解が分からなくて躊躇するということは、言い換えると「失敗したくない」ということであり、同時に「上手くいく結果がほしい」ということです。どうせ行動するなら、失敗よりも成功の方がいいですよね。

しかし質問者は「失敗したくない」ではなく「正解が分からない」という言葉を使っています。あえてこの言葉が出てきた理由を考えてみると、失敗を恐れているというよりは「上手くいくかもしれない未来を失うことを避けたい」と説明した方が、その心情をより正確に説明できているかもしれません。

AとBという2つの選択肢があり、仮にBが正解だった時、Aを選んで失敗することを恐れているのではなく、Bという「正解を選べないこと」を恐れているといった感じです。

例えば就職活動で2つの会社から内定が出ました。マルマル社とカクカク社です。悩んだ末、マルマル社を選んだところ、いざ入ってみたら事前に思い描いていたものからかけ離れた仕事内容でした。マルマル社を選んだのは失敗だったかもしれません…。

…という状況で、カクカク社にいった友人と再会したとしましょう。友人が「(1)カクカクも同じように思って仕事ができない会社だった」というか、反対に「(2)カクカク社は面白い仕事ができてやりがいを感じている」というかでダメージが異なりそうです。当然、後者の方が辛いですよね。

つまり選択を間違えることで何かの被害が出ることよりも、本当は上手くいったかもしれないと後悔することの方が辛いのですね。ちょっと気持ちは分かります。

鍵は「情報」が握っている

では常に正解を選び、すべてのチャンスをモノにすることは可能でしょうか。もちろん、考えるまでもなくそれは不可能なことです。しかし、そうであったとしても、なるべく正解を選ぶ確率を上げたいと願うのが僕たち人間です。確率上げるための工夫や努力であれば、何かできそうな気がします。

ところで、次のような妄想をしたことはないでしょうか。

記憶を持ったまま過去に戻ることができたら、人生、すばらしく上手くいくのではないか。

記憶を持ったまま過去に戻ることができれば、当時の自分とくらべて相当上手く行動できそうです。今の自分と過去の自分、何が違うのでしょうか。当然、記憶です。つまり「持っている情報の差」がそのまま選択の優劣に影響を与えているのです。

残念ながら僕たちは過去にタイムスリップすることができません。しかし、選択をより正解に近づけるための情報を得ることはできます。

真の失敗は「次のトライ」ができなくなること

では、どのような情報を獲れば正解を選びやすくなるのでしょうか。

情報には大きく分けて2つのタイプがあります。1つは他人の経験から得られる情報、もう1つは自分の経験によって得られる情報です。

前者の情報は行動する前に得ることができます。書籍やWebページなどは、その代表例といえます。

行動する前に得た情報は「参考」にしかならない

最近、僕はiPad Proに貼るためのフィルムについて調べていました。Apple Pencilを使っているのですが、ガラス面に書く際に滑ってしまって、もう少し書きやすくできないかと考えていたんです。

Googleで検索したり、Youtubeでレビュー動画などをみて、ペーパーライク保護フィルムというものを知りました。それを使うと、ガラス面に直接書くよりも紙に近い感覚を得られるらしいのです。一方で画面の見た目であったり、指での操作に難が出たりすることがあるようです。

こういったところまでは、事前の情報収集で分かります。問題はこの商品が自分の求めているものかどうか、という点。これはいくら事前に情報収集したところで、確かなことは言えません。結局のところ、最終的には自分で使ってみないことには分からないのです。

早速ために購入して試してみました。確かに紙に書くのに近い感覚で文字が書けました。画面はちょっとチカチカします。しばらく使ってみれば、使い続けたほうがいいかどうか分かるでしょう。

正解を選ぶための重要な鍵は経験から得られた情報

さて、何が言いたいかというと、正解を選ぶための重要な鍵を握っているのは「自分の経験によって得られる情報」である、ということです。事前に色々調べることである程度のアタリはつけられますが、正解への確信を持つことはできません。正解だった、あるいは失敗だったと確信を持てるのは、自分が経験した後なのです。

これはとても重要なことを示唆しています。もし僕がまたiPad Proの新しいモデルを購入したら、次はペーパーライクの保護フィルムを買うべきかどうか、かなり正解に近い選択をすることができます。

他にも僕は動画編集ソフトでFinal Cut Pro Xを使っていたのですが、周囲の人との絡みでAdobeのPremiereへの移行を検討していました。色々調べてみましたが、移行してみて実際にどうかは使ってみなければ分かりません。

使ってみた後であれば、Final Cut Pro XとPremiereの違いについて、正確に把握することができます。これらのソフトがバージョンアップしたとしても、経験をもとにその差分を評価することも、使う前よりは容易です。

あるいは美味しいラーメン屋さんを探していて、食べログなどで幾つか候補を絞り込んだとしても、本当に美味しいか、あるいは好みにあっているかは食べてみないと分かりません。幾つか実際に食べてみれば、次からその時食べたいラーメンを選ぶことができるでしょう。

正解を選びたいのであれば、情報を得るための「試し」をやろう

正解を選びたいなら「試してみる」ことによって、経験から情報を得るべきです。タイムスリップはできませんが、試すことはできるのです。

ここで”試す”という表現を選んでいることに、重要な意味があります。経験なしに最初から上手くいくことはできません。しかし、試すことを繰り返せば、どんどん成功の確率は上がっていくのです。

一番良くないのは試すことが欠如することであり、次に良くないのは致命傷となるような試し方をすることです。

”試し”は何度か繰り返すことを前提としましょう。あることを試して上手くいかなかったとしても、また次に別のことを試せばいいのです。何れにせよ経験という名の情報が蓄積され、それが次の選択をより洗練させてくれます。

またイチかバチかの賭けのようなことは避けるようにしてください。試してみた結果、致命傷を負ってしまって次のトライができなくなってしまったとしたら、それは失敗といえます。

本当の失敗とは上手くいかないことではなく、次のトライすらできなくなってしまうことです。試すことができている限り、僕たちは少しずつでも正解へと近づくことができます。