行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

考えるすぎる人でも大量行動できる頭の使い方

考えすぎてしまって動けなくなる。そんな悩みを抱えている人は、思いの外多いようです。せっかく色々と学び知識を深めたにもかかわらず、行動を躊躇ってしまい活かすことができないわけです。

もちろん、それは本人もよく分かっています。しかし、行動するならちゃんとやりたいという思いが強すぎるのか、どんどんハードルが上がってしまうようです。

なぜこうなってしまうのでしょうか。

答えは単純です。未来のことを想像し戦略や計画を立てる時と、いざ行動を起こすべき時とでは「頭の使い方」が異なるからです。いまは行動すべき時にもかかわらず、戦略モードの頭の使い方をしてしまっているので、障害ばかり増えてしまうのです。

上手く実行モードに頭を切り替えれば、いまより随分行動しやすくなるでしょう。

f:id:h-yano:20170807090504j:plain

頭のいい人ほど未来が見えすぎて動けなくなる

未来が見えてしまうので行動を躊躇う

考えすぎてしまう人ほど、色々な未来が想像できてしまって動けなくなることがあります。想像した様々な未来の中には、もちろん成功するパターンも含まれていますが、それ以上にリスクが顕在化する未来や成果が出なかった未来など、ネガティブなものが多くなります。

そうすると十分に備えてから行動した方がいいように思えるため、戦略を練ったり計画を立てたりするうちに、どんどんハードルが上がっていきます。ハードルが上がると行動への負担感、つまり「面倒だなぁ」といった感覚も大きくなるので、動きにくくなってしまうのです。

本当は準備が整っていないくてもある程度動き始めた方がいいのですが、先程書いた「見えてしまう想像上の未来」のせいで、行動することを躊躇います。

また未来が見えるということは、そこにたどり着くまでにかかる時間や労力も想像してしまいます。小さな積み重ねが必要だな…と。これが見えてしまうと「塵も積もれば山となる型」といって、行動できない典型的なパターンに陥ってしまいます。

行動するためのヒントを「頭の使い方が違う」ところ

こうなってしまうのは考える力があるということなので、それ自体は悪くないのです。ただあまりにも戦略的なことや計画的なことを考えるのが得意でそちらばかりやってしまうため、行動するための頭の使い方に慣れていないのです。

社会的な成果を出している人が、ときどき「何だか短絡的な発言をしているなぁ」と思えることはないでしょうか。近視眼的というか、そんなに単純じゃないんじゃない?なんて思えてしまうことです。

よく考える人からみると危ういように見えますが、逆に行動する人からは「そんなこと考えてる暇があったら動いた方がいいよ」と言われることに。この辺りの見方の違いに、行動するためのヒントがありそうです。

行動する人の考え方は、当然ですが行動するためには有利です。注目したいのは頭の良し悪しではなく、頭の使い方の違い。

行動するときは視野を狭くした方がいい

戦略フェーズと実行フェーズでは頭の使い方が違う

未来のことを考えてはいけない、というわけではないのです。様々なリスクのことを考慮したり、計画を立てたりすることで、活動全体が効率化されたりしますので。

ただ考えすぎる人が知っておくべきなのは、戦略フェーズと実行フェーズでは頭の使い方が違うということです。

未来のことは戦略や計画を練る時に存分に考えてください。でももう行動すべき時だと頭のどこかで気づいたなら、未来のことを考えるのは不要です。行動は常に「いま」と共にあります。

未来のことを考えることが好きな人にとって朗報なのは、行動することによって得られる情報は、次の戦略や計画を練るための貴重な材料になるということです。というよりは、実際にアクションしてみて得られた情報なしに戦略を練ったところで、それは机上の空論にしかなりません。

そういう意味で、考えることが好きな人にとっても行動することは大切なのです。この辺りについては下記の記事で取り上げましたので、気になる人は読んでみてください。

www.behavior-assist.jp

行動するときは「今日のこと」だけを考える

では実行フェーズにおいては何を考えればいいのでしょうか。そんなに難しいことではありませんが、慣れないことなのでしばらくは戸惑うかもしれません。

実行フェーズで視野に入れるのは次のものです。

  1. いまからやる具体的な行動
  2. その行動によって数十分〜1日以内に得られる直接的な結果

これだけです。行動するときは「今日のこと」だけを考えておけばいいのです。書いてあることはシンプルですが、やってみると意外と難しいかもしれません。

戦略や計画など抽象度の高いことを考えるのに慣れていると、具体的に考えるのが苦手になることもあります。また数十分で得られる結果といわれても、あまりにも大した事のない結果であるように感じて見えてこないこともあります。でも、それが重要なんですけどね。

考えすぎて動けない人は、実行フェーズの頭の使い方を練習してみるといいでしょう。

すぐに行動するための2つの基本ステップと背中を押してくれる4つの工夫

すぐに行動するための2つの基本ステップ

まずは次の2つの質問について考えることで、頭の使い方を実行フェーズのものへと切り替えてください。

  1. 思わず自分を褒めたくなるような、いまから数十分〜今日中にできることは何だろうか。
  2. すぐに実行できるほど具体的な行動がイメージできているだろうか。もしそうなっていないなら、いまからやることはどのように具体的な行動に分解できるだろうか。

どちらの質問も思考を「いま」にフォーカスするためのものです。最長で「今日中」まで考えることはできますが、できれば数十分以内のことについてのみを考えてみてください。

例えば次にようになります。

Q 自分を褒めたくなるような、いまから数十分以内でできることは?
A さっきメールできた顧客の依頼をすぐさま終わらせて報告する。素早く仕事を終わらせて「デキるやつ」っぽい!

Q すぐに実行できるほど具体的な行動がイメージできているだろうか?
A 何度かやったことがある作業なので問題ない。

このように質問することによって、頭の使い方を実行フェーズのそれに切り替えることができます。

背中を押してくれる4つの工夫

それでもなかなか行動できない場合は、次の4つの工夫を試みてください。

  1. いまからやる具体的な行動の実行負担が軽くなる工夫はないか。
  2. 行動の完了をトリガーに、何か意味のある出来事が起きるように工夫できないか。
  3. 行動すべきタイミングで、やるべきことを思い出すような仕掛けはできないか。
  4. 数十分で得られた結果から生じる、分かりやすく具体的な効果は何だろうか。

実行負担を可能な限り低くしよう

実行負担は軽くなればなるほど、容易に行動することができます。究極的に実行負担が軽くなった状態は「自動化」や「他人への依頼」です。自分で行動しなくてもやってもらえる状態ですね。

自動化はできなくても、何かのツールを導入したり、使っている道具やその配置を見直したり、手順を見直す(分解したり統合したり)ことで実行負担が軽減されることがあります。

実行負担が軽くなると、行動のしやすさがぐっと変わりますので試してみてください。

行動できたら何かいいことが起こるようにしよう

行動の完了をトリガーに意味のある出来事を起きるようにする、というのはちょっと分かりづらいかもしれません。例えば次のようなものが該当します。

  • 行動を終えることで誰かからの反応が得られるようにしておく(例:仲間にいまから○○をやると宣言する)
  • 普段やっている楽しい行動を、行動を終えるまで我慢する。行動を終えたらやってもいい(例:いまからやる○○を終えたらスマホゲームで遊んでもいい)
  • 行動することでペナルティを回避できる(今日中に○○をやらなければペナルティとしてStickK.comに1000円支払う)

このような工夫は、行動を促す理由を”付加”してくれます。行動単体ではなかなか実行できないときに考慮してみるといいでしょう。

必要なタイミングで必要なことを思い出せるようにしよう

実行すべきタイミングになったときに、ちゃんと必要な行動を思い出せないことがあります。そういう場合はリマインダーなどをしかけて、その場での適切な行動を自分に思い出させるような仕掛けをしておくといいでしょう。

また思い出すためだけではなくて、めったにやらないことなので手順を覚えていないようであれば、その手順をチェックリストやワークシートなどにしておくのも優れた工夫です。

行動の結果から派生して生じる効果に注目してみよう

数十分で得られる行動の直接的な結果から、更に何かの新しい効果が派生しないでしょうか。先程あげた例であれば次のようなものです。

行動の直接的な結果:さっきメールできた顧客の依頼をすぐさま終わらせて報告する。素早く仕事を終わらせて「デキるやつ」っぽい!

派生して生じる効果:顧客が驚いてくれて喜びの声を返信してくれそう。信頼度UPで先々の仕事にもつながるかもしれない。

行動の結果から何らかの効果がプラスアルファで生じ、そのことに魅力を感じられるのであれば、数十分の結果の持つ行動を促す力が強まります。

この工夫の注意点としては、あまり色々考えすぎないということ。考えすぎる人はついつい思考を未来へと羽ばたかせてしまいます。あくまでも「いまの自分」から自然に視野に入ってくることで派生効果が生じないかをイメージしてください。

まとめ

本記事でお伝えしたことは次の3つです。

  1. 様々な未来のことを考慮すると、行動への負担感が上がり動きにくくなる。様々な思いを巡らせる戦略フェーズと、いざ行動に移すべき実行フェーズでは頭の使い方が異なる。考えすぎて動けない人は、実行すべきときに戦略フェーズの頭の使い方をしている。
  2. 行動するときに視野に入れるべきは、いまから数十分以内のみ。長くても今日中までとすること。実行フェーズで注目するのは (1)いまからやる具体的な行動、(2)その行動によって数十分〜1日以内に得られる直接的な結果の2点である。
  3. 頭の使い方を実行フェーズのものに切り替えるために、次の2つの質問を使う。(1)思わず自分を褒めたくなるような、いまから数十分〜今日中にできることは何だろうか。(2)すぐに実行できるほど具体的な行動がイメージできているだろうか。またそれでも行動しにくいときに使う4つの工夫を紹介した。