行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

行動科学で分かる「行動力のある人」を作る2つの環境要因

すぐに行動できて、どんどんアウトプットできる人ってすごいですよね。憧れます。かっこいいです。

で、ふと自分を振り返ってみると、いつまでもグズグズと行動しないし、たくさん時間があった割には対してアウトプットできていない。そんなことを気づいてガッカリするわけです。

どうせなら自分もすぐに行動できて、どんどんアウトプットできる人になりたいですよね。そんな自分になって、これからの人生に期待感を持ちたいです。

この記事では行動科学(行動分析学と関係フレーム理論)の知見を下に、

  • すぐに行動できてどんどんアウトプットする人
  • なかなか行動できず、いつまでもアウトプットできない人

の違いを読み解き、行動する人を支える重要な2つの環境づくりのポイントをお伝えしています。

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アウトプットの早い人、遅い人の違い

すぐに行動できて、しかもアウトプットまでたどり着ける人と、なかなか行動を始められず、時間が経っても何もアウトプットできない人とがいます。当然、一般的には前者の人の方が行動力があると判断されるでしょう。

この二者の違いはどこにあるのでしょうか。すぐに行動できるのは何故か。次々をアウトプットを仕上げられるのは何故か。

際限なく完璧な結果を求めようとすると行動は止まる

キーワードを一つ上げるなら「完璧主義」でしょうか。この記事では完璧主義を2つの見方で捉えます。1つ目は、制約を設けずに完璧にしようとするパターン。これは行動力を低下させることが多いです。完璧な結果を良しとして、そのために行動しようと考えます。

完璧な結果、最上の結果はすぐには得られませんので、遠い未来のために行動するという構造になってしまいます。この「遠い未来のために行動する」という点が、行動力を非常に低下させるのです。行動への負担感が上がり、面倒くさく感じ、なかなか手をつけられなくなります。

限られた範囲内でベストを尽くそうとすれば行動しやすい

2つ目は、制約の範囲内でできる限りの完璧を目指すパターン。僕たちは無尽蔵の時間を持っているわけではありません。いまから取り組むことについて、割くことのできる時間は限られています。その制限された範囲で、ベストを尽くそうとする。そういう完璧主義もあります。

こちらのパターンでも、行動への負担はやはり上がります。しかし重要な違いは、視界に入っている「時間」です。限られた時間内でベストな結果を得ようとする場合、行動の対象となっている未来はさほど遠いものではありません。実はこれなら行動するための条件が整いやすいのです。

すぐに行動してどんどんアウトプットできる人の”ベストの尽くし方”

すぐに行動してアウトプットできる人の3つの傾向

それではここからアウトプットできる人の「ベストの尽くし方」を見ていきましょう。

何かをアウトプットするまでには、幾つかのプロセスを経ていくことになります。始動し、集中して作業し、粘り強く継続することになります。このどれもが必要になりますが、とりわけ重要なのが最初の「始動」です。他の2つは行動をはじめることに比べれば難易度が低いです。

行動力のある人が、いままさに行動しようとしている時、どのようなことを行っているのでしょうか。いくつか考えられますが、次のような傾向があると考えられます。

  1. 時限のない遠い未来ではなく、ごく近い目先の未来にフォーカスしている
  2. 準備や状態を整えてから行動するのではなく、行動することによって準備や状態を整えようとする
  3. ”面倒だなぁ、だるいなぁ”という内的発話(思考)ではなく、”さぁ、やるか”といったような、行動のきっかけとなるような言葉・思考を自分にかけている

これらはいずれも行動の前に起こる「思考」の働きによるものです。自己教示といいますが、これが有効に機能していると自分で自分に行動を促しやすくなります。

行動力のある人は学習履歴と環境要因によって作られている

そうすると、これから自分も上記3点のような自己教示をすればいいんだ!と結論づけたくなりますが、そう簡単な話ではありません。行動力をもたらす自己教示が可能であることにも、ちゃんと原因があるからです。

この原因は大きく2つに分けられます。1つは学習履歴、もう1つは環境要因です。

学習履歴とは所謂経験のことです。実は自己教示もある種のスキルと考えることができますので、自己教示から行動するまでの一連の流れを何度も経験すれば、そのことに習熟していきます。

だから上手く行動を促す自己教示が発生し、実際に行動するという流れが経験できる状況をつくると、徐々に自分で自分を動かすことが得意になります。その「経験できる状況」を作り出すのが「環境要因」になります。

いま上手く自己教示できない人は、いきなりそれをやろうとしても上手くできません。自己教示が起きるような環境を整えることを考えましょう。

近い未来のゴールを自動発生させ、近い未来のゴールに価値を見出す

近い未来のゴールを自動発生させる工夫

環境づくりで大切なのが、近い未来に達成すべきゴールを発生させることです。設定ではなく発生と書いているところに注意してください。

近い未来のゴールは、目標設定のようじ自分で考えて設定するものではなく、何かの状況を作り出すことで、それに付随して自動発生するようにします。

例えば「友達と遊びにいく約束をする」などがこのパターンに該当します。今度の日曜日に映画を観にいくことにすると、必然的に○時に××で待ち合わせ…となるでしょう。そうすると「待ち合わせに間に合うこと」という近い未来のゴールが自動発生します。逆にみれば遊びにいく約束がなければ、このゴールは存在することができません。

近い未来のゴールであっても達成すべき価値が必要だ

またこの例から「ゴールの価値」についても考えることができます。

約束した相手が時間にうるさい友人なのか、それともルーズでいつも遅刻してくる友人なのかで、「間に合わせに間に合うこと」が持つ価値は変わります。当然、時間にうるさい友人と約束した方が、時間に間に合うように意識する(”○時に家を出なきゃ”といった自己教示が起きる)ことでしょう。

このように「近い未来のゴールが自動発生する」かつ「近い未来のゴールに価値がある」という環境要因によって、行動力を高める自己教示が発生しやすくなります。つまりこの2つを如何に作り出すかが、行動力を作るためのポイントになるのです。

行動を上手く促す環境には必ずこの2つがある

継続的に行動するためにパーソナルコーチを契約する人がいます。パーソナルコーチがいることで、コーチと約束したり宣言したりすることで、上述のような環境を得ることができます。

あるいは行動契約という手法があります。これは行動についての約束事をして、守れなかったらペナルティを負うというものですが、約束事によってゴールが自動発生しますし、ペナルティの内容によってゴールを達成することに価値が生じます。

他にも色々な工夫によって、自己教示が起きやすい環境を作ることができるでしょう。繰り返しますがポイントは2つです。

  1. 近い未来のゴールが自動発生すること
  2. 近い未来のゴールに価値をあること

この2つを押さえた行動の環境づくりできるようになれば、自己教示から行動する流れを何度も経験することになりますので、次第に自分で自分を動かす力を身に付いてくることでしょう。

まとめ

本記事でお伝えしたことは、次の3点です。

  1. すぐに行動してどんどんアウトプットする人は、限られた条件の下でベストを尽くすことができる行動パターンをに見つけている。そのカギとなるのが
     
(1)遠い未来ではなく近い未来にフォーカスする
     
(2)行動することによって準備と状態を整えようとする
    
 (3)”さぁ、やるか!”等の行動のきっかけとなる自分への声がけができる
    
といった自己教示である。

  2. ではそういった自己教示をやればいいのかというと、そう簡単にできるものではない。自己教示が起きる理由もちゃんとあり、それが学習履歴と環境要因である。自己教示もスキルであるため、繰り返し自己教示するような環境に身を置くと、自然と習熟していくのである。

  3. 行動を促す自己教示が生じる環境を作るためには、次の2つを押さえておくこと。

     (1)近い未来のゴールが自動発生すること
    
 (2)近い未来のゴールに価値があること

    この2つを押さえて環境づくりすることで行動しやすくもなるし、同時に自己教示を繰り返し練習するための環境にもなる。