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適切な行動を促す手法の1つに、トークンエコノミー法というものがあります。分かりやすい例だと、お店のポイントカードなんかが該当します。でも、お店のポイントカードって、良く使うものとそうでないものがありますよね。
その辺の違いって何だろうな、と。行動を促しやすいトークンエコノミー法の使い方って、どんなんだろうな、と。そういうことが仲間内で話題になって、今度、実践してみることになったのです。
実践してどうなるかは追々レポートしていくとして、今回は「ここがトークンエコノミー法のポイントじゃないか?」と思われる点についてまとめてみたいと思います。
トークンエコノミー法とは?
トークンは日常的に使われている
まずは簡単にトークンエコノミー法について説明します。トークンというのは、促したい行動が実行されると、それに伴って与えられるものです。具体例としては、ポイントカードや夏休みのラジオ体操のハンコ、マイレージカードのマイル、楽天ショップで買い物した時にもらえる楽天ポイント等が該当します。
トークンはそれ自体に価値があるわけではなく、トークンが貯めると何か価値あるものと引き換えられるようになっていることが多いようです。スタンプが5個溜まったらたこ焼き一舟と交換、みたいに。
行動に即時的で確実な変化を与える
このようなトークンを活用するメリットは、行動に伴う即時的で確実な変化を与えることができる点にあります。
例えば、子供に勉強を促したい場合、勉強して60秒以内にテストの点が上がるといった変化があればいいのですが、そういうものではありません。勉強をしばらく継続した結果、上手くいけば2〜3ヶ月後にテストの点が上がっている…といったものだと思います。
このように成果が出るまでに時間がかかる行動や、成果が出るとは限らない行動の場合、行動を継続するのはとても困難なことだったりします。そこで、トークンを上手く使って行動の直後に変化を伴わせることができると、トークンを得ることが行動を維持させる要因として機能することがあります。
上手く設計されたトークンシステムは行動に影響を与える
また、購買行動にしても、ポイントというトークンの存在が、お店の選択を左右することはしばしば起きていることだと思います。上手く設計されたトークンシステムは、僕たちの行動に強い影響力を持ち得るものだと考えられます。
トークンエコノミー法が成立する要点は?
では、そのように上手く行動を促すようにトークンシステムを設計するには、どうすればいいのでしょうか?僕たちはポイントによってお店の選択を変えることもしますが、渡されたポイントカードの処置に困って捨ててしまうこともしばしばやっています。一見、同じように見えるそれぞれのトークンシステムの違いは何でしょうか?
さじ加減が大切
メリットの法則の第六章によると、「トークンエコノミー法は”さじ加減”が大切だ」と書いてあります。さじ加減とは例えば、
- 1,000円で1個のスタンプを100個集めないといけないポイントカード
- しかもそれで得られるのが100円の割引券
とかだと、そのポイントを貯めようなどとは思えないですよね。これは極端な例かもしれませんが、要は
- トークンを獲得するために必要な行動の負担
- トークンを価値に交換できるまでの道のりの長さ
- トークンをどのような価値と交換できるか
のバランスがトークンエコノミー法の効果を決めるものと思われます。
トークンシステム内での経済活動だと捉えてみよう
経済活動というメタファでトークンエコノミー法を捉える
このようなトークンエコノミー法ですが、仲間内での議論を経て、次の考えに気づいた時にストンと腑に落ちました。
「トークンエコノミー法とは、つまりトークンシステムと利用者との間に起きる経済活動を利用した、行動を支援するための仕組みである。」
経済活動というメタファを使うと、個人的にはとても分かりやすく感じました。この考えに則ると、次のことが言えます。
- トークンとは、トークンシステム内における貨幣である。
- トークンシステムによって定められた行動を実行することで、トークンを獲得できる。(労働と対価)
- トークンは、トークンシステムによって提供される何かと交換できる。(貨幣と価値との交換)
- トークンによって交換できる何かの価値は、利用者にとって「その何かが希少なものであるかどうか」で決まる。(需要と供給)
トークン経済システム
例を使って説明します。
- 子供が適切な行動をしたら、トークンとしてシールを与える。
- 適切な行動とは、家事を手伝うこと、勉強をすること等。(実際はより具体的にするのだろうが)
- シール5枚に付き、お小遣いを500円が貰える。
こんなトークンシステムを想定した場合、これが機能するかどうかは、まずトークンを獲得する活動が適切な難易度に設定されているかどうかを検討したいところ。
家事手伝いをする機会や勉強をするなどの、トークンを獲得するための行動の機会がなかなか得られないと、職が安定しない労働者のようなものなので、トークンシステム側でそこそこの機会を与える必要があります。
また、反対にあまりにも容易にトークンを獲得できる場合、トークンのインフレ(のような現象)が起きて、このシステム自体が破綻してしまう可能性があります。
トークンは定められた価値と交換できることが担保されてこそ、その信用が保たれ、トークンに価値を見出すことができるわけです。もしトークンであるシールを容易に獲得できるのだとしたら、シール5枚に付き500円に交換できるという約束を守れなくなり、トークン経済が破綻してしまいます。
※無理に守ったら家計が破綻するかもしれませんね(・∀・)
人は希少なものに価値を感じる
次にシールによって交換できるものの価値について考えてみます。経済活動における価値の高低は、主にそのものの希少さによって決まります。つまり、本人にとって希少なものと交換できてこそ、トークンは行動の動機たる価値を持つことができるわけです。
では、シール5枚に付き500円という交換レートは価値のあるものなのでしょうか?それは恐らく、500円が本人にとって希少なものかどうかによって決まるでしょう。
書籍「メリットの法則」にも出てくる例ですが、お小遣いとして毎月5,000円もらっていて、毎月余っているくらいだとしたら、わざわざ労働してまで500円を得る意味はないかもしれませんね。
同書の例では、月々のお小遣いをトークンシステムから得られるもののみに限定し、かつ頑張れば6,000〜7,000円のお小遣いを獲得できるようなバランスに設定することで、上手く機能したとのことです。
セルフマネジメントにトークンエコノミー法は使えない
この希少性に関する話は、視点を変えるとセルフマネジメントにトークンエコノミー法は活用できないことを意味しているように思えます。
セルフマネジメントでトークンシステムを用いると、トークンで交換できるものは所謂「自分へのご褒美」的なものになるわけですが、自分で自分に与えられるものに希少性はありません。
もし希少なものをご褒美として設定したとしたら、トークンとの交換を担保するのが難しくなるでしょう。自分にとって豊富でないからこそ希少であり、希少であるからこそいつも与えられるとは限らないのです。
トークンエコノミー法が成立する前提は、トークンシステムとの経済活動です。そして、トークンシステムのコントロールは、おそらく自分以外の他者によってなされる必要があるのではないかと思料。
以上がトークンエコノミー法に対する自分なりの考察でした。今後、行動分析学を学ぶ仲間内でのコミュニティABA-LABOにて実践する予定ですので、またそれを踏まえて記事にすることもあるかもしれません(・∀・)
参考図書
トークンエコノミー法について、丸々一章割いて説明してくれている貴重な本です。
- 作者: 奥田健次
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- 発売日: 2012/11/16
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更に本格的に勉強したいなら下記の本。
- 作者: レイモンド・G.ミルテンバーガー,園山繁樹,野呂文行,渡部匡隆,大石幸二
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