行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

行動科学的セルフマネジメントとは?

僕たちは様々な行動の問題に悩まされることがあります。

例えば次のようなものです。

  • 頭ではやった方がいいと分かっているのに行動できない
  • やる気になってはじめたことを最後までやり遂げられない
  • 失敗や期待外れの結果で挫折してしまい、もう一度チャレンジできない
  • やる気にムラがあって、コツコツ行動できず、先延ばしすることが多い
  • 〆切間際になって追い詰められないと本腰を入れて行動できない
  • 行動できない状態に陥ったときの抜け出し方が分からない
  • 現実逃避を繰り返して集中して作業することができない
  • 不安や失望からどうも行動に踏み出すことができない、etc

結構、身に覚えのある問題が多いのではないかと思います。

このような自分の行動についての諸問題を解決するためには、行動科学(行動分析学)に基づいたセルフマネジメントのスキルが必要です。

行動科学的なセルフマネジメントスキルとは?

行動科学的セルフマネジメントとは何か

セルフマネジメントとは、他人からの継続的な支援なしに、ある程度、自分で自分の行動をコントロールする能力のことを指しています。

これを行動科学的に言い換えると「自ら行う工夫によって、自らの行動を変えたり維持したりすること」となります。

自ら行う工夫によって、というのは重要なポイントです。

セルフマネジメントとは、意志の力で行動を制御することではありません。

意志の力に頼ることなく(=言い訳にすることなく)、行動科学の原理原則に基づいた工夫を導入することにより、行動の変容と維持を目指します。

行動科学セルフマネジメントの3つの枠組み

行動科学セルフマネジメントは、次の3つの枠組みによって構成されています。

  1. 変えるべき具体的な行動を定義し、行動しやすい環境を整備し、行動に関する記録を取る
  2. 目標やルールを設定し、自らの行動のパフォーマンスについて自己評価する
  3. 動機づけ要因を選択・準備し、行動に伴うメリット(ご褒美等)を自らに与える

以上の構成は下記の論文を参考にしています。

本稿でもセルフマネジメントの観点から、より詳細に取り上げますが、もし原本を当たりたい場合はこちらをご覧ください。

www.jstage.jst.go.jp

本稿の概要

本稿では上記の3つの枠組みを中核に据えつつ、理論的背景である「行動分析学」および、セルフマネジメントの枠組みを活用するための「実践手順と事例」をお伝えします。

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行動科学的セルフマネジメント

次章では、まず理論的な背景である「行動分析学」についての入門的な内容を取り上げます。

少し遠回りな気もしますが、行動科学的セルフマネジメントが、どのような考えに基づいて構成されているか、その前提となる知識を知っておいてもらった方がトータルでみると理解が早くなるのではないかと思います。