行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

目標やルールを設定し、自らの行動について自己評価する

セルフマネジメントのための3つの枠組みは、行動分析学の理論に基づいています。

自身の行動についての現状を理解したり、改善方法を考えるためのガイドラインとして使うと便利です。

何もなしに行動の原理原則だけでいきなり分析するよりは、かなり簡単になります。

目標やルールのセルフマネジメントにおける役割

今回はその2つ目の枠組である

  • 目標やルールを設定し、自らの行動のパフォーマンスについて自己評価する

についてです。

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セルフマネジメントの3つの枠組み

目標やルールが自己教示を生む

行動やパフォーマンスについての目標を持つことは、行動する際に「自己教示」を生じさせます。

自己教示とは「〇〇しよう」とか「〇〇しなきゃ」といったように、行動についての指示を自分に与えることです。

このような自己教示に従うことが可能な状況であれば、教示内容に沿って行動が変化することになります。

目標やルールを持つことは、この自己教示のトリガーとなるのです。

尚、ここでいう目標やルールとは「達せすべき行動・パフォーマンスの基準」のことです。

目標やルールが曖昧だと、行動に対して有効な自己教示が生じにくくなります。

例えば「仕事を頑張る」という目標を持っていたとしましょう。

この目標が行動を変えることがない・・・とまでは言い切りませんが、行動がどのように変わればいいかも示唆しておらず、あまり有効には機能しないことでしょう。

曖昧な目標やルールは単なるスローガン止まりとなり、何となくいいことをいった気になるだけで行動は変わらないことが多いです。

具体的な目標・ルールとは何か?

行動を変えるだけの自己教示を生じさせるには、実際の行動と連動した目標やルールが望ましいです。

例えば「仕事を頑張る」ではなく「いまから90分でこの資料を完成させる」とする方がいいでしょう。

このような目標を設定するには、仕事を頑張ろうと思った時に「具体的に何が達成できたら仕事を頑張ったことになるだろうか?」という問いを投げかけてみてください。

具体的な目標やルールが設定できれば、いまから自分がどのように行動すべきかをスムーズにイメージできるはずです。

セルフマネジメントの枠組みの1つ目で、行動を具体的に定義することをお伝えしましたが、具体的な目標は具体的な行動の定義にも役立ちますし、目標の達成に向けて行動しやすい環境を整備するためのきっかけにもなります。

適切な目標やルールの設定は、1つ目の枠組みとも効果的に連動することで、行動を変化させる可能性を持ちます。

目標やルールについての具体例をいくつかみてみましょう。

例えば「ダイエットのために食べすぎないようにしよう」と思ったなら、「毎日の摂取カロリーを1,500kcal以下にする」というルールが設定できます。

他にも「集中力を高めたい」と思ったなら「毎日90分×3回の集中して作業する時間を作る」とすることができます。

あるいは「運動を習慣化したい」と思ったなら「週に3日、30分のジョギングをする」と具体化するといいでしょう。

目標設定から自己評価の流れが充実感や達成感となる

このような目標やルールを設定すると、自身の行動についての「自己評価」が可能となります。

行動の結果を確認すれば、目標やルールを達成できたかどうか判断できるはずです。

ここには当然ながら、1つ目の枠組みでお伝えした「記録」が大いに関わります。

自分で目標を決め、自分で行動し、その結果を自分で記録し、目標を達成できていたり、達成に向けて近づいていることを確認できたなら、そのことは十分な充実感や達成感をもたらすことでしょう。

そういった充実感や達成感は行動を強化し、新たな目標に向けた取り組みを促すであろうことが考えられます。

未達成は次の行動サイクルを効果的にする材料

一方、目標やルールと行動の結果を比較し、上手く達成できていない場合はどうでしょうか。

それが失望感や挫折感、無力感をもたらす可能性はもちろんあります。

しかし、実は未達成であることを上手く利用することもできるのです。

具体的な目標やルールは、記録と比較し自己評価することで、自分が「どの程度未達成だったのか」を知ることができます。

何となく上手くいかなかった、何となくできなかったではなく、例えば「本当は摂取カロリーを毎日1,500kcal以下にするはずだったが、今週は平均で1,700kcalだった」といったことが分かります。

自己評価によって新たな課題が明確になり、行動やパフォーマンスを改善するきっかけとしたり、そもそもの目標やルールをより適切に修正する機会へとつながります。

つまり未達成とは失敗ではなく、次の行動サイクルをより効果的なものにするための学習材料なのです。

目標設定と自己評価で様々な行動が特定の方向へ統合される

目標やルールの設定と自己評価の枠組みを上手く使えるようになると、目標やルールを設定することは、行動することによって自分が将来得られるであろう結果を予測させることになります。

これから得られるであろう結果を予測できるので、僕たちの行動はそれに沿ってコントロールされることになります。

目標やルールの設定は、僕たちの様々な行動を特定の方向へと統合していくために、重要なスキルといえるのです。