行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

僕たちはなぜ行動するのか、その科学的な行動の理由

セルフマネジメントのスキルについて理解し、実践する上で、その理論的背景である行動分析学について学んでおくことは、セルフマネジメントを正しく効果的に行うために有効です。

行動分析学それ自体を隅々まで理解するのは容易なことではありませんが、ひとまずここでは最も重要な2つのことについてお伝えします。

それを知っているだけでも、行動についての捉え方は劇的に変化します。

まず下記の動画をご覧ください。

行動の原因は「やる気」や「意思」「性格」ではないっ

この動画で伝えたいことは次の2点です。

  1. 循環論に嵌ると行動の原因を取り違えてしまう
  2. 強化と弱化

行動についての勘違いに気づくことが第一歩

僕たちは行動の原因を医学モデルで説明しがち

動画の中では同僚への挨拶の場面を例に取り上げています。

もし、ある人が朝の挨拶をしなかったとしたら、僕たちはどう考えるでしょうか。

非常識な人だとか、コミュ障などと判断してしまうかもしれません。

つまり、常識がないから、あるいはコミュニケーションに問題があるから挨拶をしないのだ、と考えているわけです。

このように行動の原因がその人の正確や特性にあるとする考え方を医学モデルといい、実は行動の原因を捉える上では全く役に立ちません。

なぜなら、これらは原因としてもっともらしく聞こえるが、説明の仕方が循環論法に陥っていて論理的に誤っています。

循環論法で説明するのは誤りである

循環論法とは「Aの根拠はBである」といいつつ、一方で「Bの根拠はAである」ともいっている状態です。

どちらが根拠で、どちらが結論なのか分からない説明の仕方です。

先程の例で説明すると「朝の挨拶をしない(A)のは非常識な人(B)だから」となります。

ここで、その人を非常識な人だと判断した根拠を尋ねてみるとどうなるでしょうか。

おそらく「非常識な人(B)なのは挨拶をしない(A)だから」という答えになるはずです。

Aの根拠はBといいつつ、Bの根拠もAであるという循環論法ですね。

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行動を医学モデルで説明すると循環論法に陥る

原因の説明ではなく単なる「言い換え」でしかない

この場合、行動の原因を説明しているわけではなく、観察した事象を別の表現で言い換えているだけに過ぎない、と捉えておくのがいいです。

つまり挨拶をしないとか、普段のコミュニケーション等を観察した結果、非常識な人というラベルを貼っただけだということです。

行動の原因を説明したものではないことを忘れないようにしましょう。

正しい行動の原因を知ることが2歩目

行動の理由は強化と弱化にある

では行動の原因は何か、という話になります。

ここで出てくるのが「強化と弱化」です。

動画の中では、挨拶に対する反応で翌日の行動が変わった例を使って説明しています。

ある日、朝の挨拶をしたところとても良い笑顔で返事がもらえたという経験をした場合、その後、挨拶という行動はどうなるでしょうか。

きっとその人相手にはスムーズに、あるいはより積極的に挨拶するのではないかと思います。

このように行動に伴い何らかのメリットが生じ、行動することに積極的になる現象を強化といいます。

反対に挨拶したら無視されてしまったとすると、何となくその人には挨拶しにくくなるでしょう。

行動に伴い何らかのデメリットが生じ、行動することに消極的になる現象を弱化といいます。

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行動の真の原因は強化と弱化の原理

強化と弱化を踏まえて工夫すれば行動できる

僕たちが行動する、あるいは行動しないとき、そこにはこの強化と弱化が大いに関わっているのです。

つまり行動できないものを行動できるようにするためには、対象の行動が強化されるように工夫する必要があります。

セルフマネジメントの問題で、しばしば上手く行動が継続できない理由を自分の意思の弱さにしがちだが、その説明では循環論法になってしまいます。

行動を適切に変えたいなら、強化と弱化の原理を踏まえた上で、行動に積極的になるような工夫が必要なのです。