行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

セルフマネジメントの問題を解決するためのプロセスとは?

前章まで説明してきた「セルフマネジメントの枠組み」は、問題の現状を把握し、原因に対応した解決策を作るために便利なツールです。

しかし、この枠組単体で問題を解決できるわけではありません。

セルフマネジメントにおける問題解決は、次のようなプロセスで進みます。

  1. 目的の確認
  2. 課題の設定
  3. 現状分析
  4. 改善策の作成
  5. 実践と記録

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問題解決の全体プロセス

このうちセルフマネジメントの枠組みを活用するのは「3. 現状分析」と「4. 改善策の作成」です。

記録の仕方にも踏み込むので、あえていえば「5. 実践と記録」にも半分くらいは影響するかもしれません。

セルフマネジメントの枠組みと問題解決プロセスの関係

目的と課題が問題解決の方向性を決める

この問題解決のプロセスでまず注目してもらいたいのは「1. 目的の確認」と「2. 課題の設定」です。

目的と課題はセルフマネジメントの枠組みを、どう使えばいいのか教えてくれます。

逆にいえば、目的も課題も設定されていないのでは、問題をどう解決していいかも分からないということです。

目につく問題と思わしき行動を変えたからといって、それがその人の日常の質を改善するとは限りません。

間違った方向に全力で走ってしまった、という事態になりかねないわけです。

あるいは標的としていた行動を変えたにも関わらず問題が解決しなかったとき、次にどの行動を変えるべきかを導くのも目的や課題の役割です。

ですので、問題を解決するためには、なぜその問題を解決したいのか、問題を解決するにあたって解消すべき課題は何かを最初に把握すべきなのです。

記録によって得たリアルな情報が現状分析と改善策の作成に欠かせない

問題解決のプロセスの5つ目「実践と記録」は、改善策を実際に試し、その効果を記録・測定することです。

現状分析や改善策の作成で使うセルフマネジメントの枠組みは、あくまでも枠組みでしかありません。

その枠組みが問題解決の役に立つのは、問題についてのリアルな情報があるからです。

料理に例えれば、セルフマネジメントの枠組みはレシピであり、リアルな情報は料理の材料です。

レシピだけあっても料理を作ることができないのは、誰でも分かることだと思います。

しかし、こと問題解決になると情報という材料なしに、レシピだけで解決策を作ろうとしてしまうのです。

問題や行動についての情報を集め、分析して問題の原因を探るまえに、解決策に飛びついてしまいます。

料理の材料があってレシピが役に立つように、問題と行動についてのリアルな情報があってこそセルフマネジメントの枠組みは役に立ちます。

その情報を得るための活動が「記録」なのです。