個人事業家・フリーランスのための行動分析学 - 行動アシストラボ 矢野浩史

僕たちは行動分析学をもっと”使える”道具にする。

ご褒美で習慣づくりするために欠かせない一つの条件とは?

Q.
ご褒美を設定して頑張ろうとしたのですが上手くいきません。何故でしょうか。

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A.
ターゲット行動(習慣化したい行動)によってのみご褒美が獲得できるのであれば、ご褒美は十分にターゲット行動を促す工夫として機能します。そんな文脈がつくれればいいですね。

解説:条件は「ターゲット行動によってのみご褒美が得られること」です

セルフマネジメントでご褒美が有効に働かない2つの理由

セルフマネジメントにおいて「ご褒美」はなかなか上手く機能しません。理由は2つです。

  1. ご褒美の魅力を維持する遮断化の仕組みが作りづらい
  2. ターゲット行動以外にご褒美を獲得できる容易な手段がある

ちなみに理由1は理由2によってもたらされているため、実質的には理由2のみが「ご褒美が機能しない原因」です。とはいえ、ちゃんと説明しておきましょう。

ご褒美は行動分析学的にいえば「好子」になります。好子は常に行動を促す力を持つわけではありません。

例えば、唐揚げが好きだとしても、唐揚げを食べ続ければどこかでお腹いっぱいになり、それ以上は欲しくないという状態になるでしょう。あるいは、お金が好きだとしても、お金が有り余っていれば、お金に不足を感じている状態よりも魅力が低下するはずです。このような現象のことを「飽和化」といいます。

なのである程度、なかなか好子が得られない状態を作って、魅力を維持させておく必要がある・・・わけですが、セルフマネジメントにおいてはそれが難しいのです。

その難しい理由が、2つ目の「ターゲット行動以外にご褒美を獲得できる容易な手段がある」にあります。

ヒトは欲しいものを獲得するのに最も楽な手段を選択する

セルフマネジメントにおいて、何かをしたらご褒美を自分に与えるということは、既にご褒美を獲得する手段を持っているということになります。そうでなければ、そもそも自分にご褒美を与えられないはずです。

つまり、ご褒美を獲得しようと思えば獲得できる環境にあるわけです。

通常、僕たちは好子を獲得するために幾つかの手段がある場合、最も嫌なこと(弱化要因)が少なく、かつ実行負担が低い行動を選択します。そして、それは恐らく本来やりたいであろうターゲット行動ではありません。

例えば、1週間ジョギングを続けたらワインを飲んでいいというルールにしたとしても、1週間ジョギングという手段よりも、コンビニに買いに行くという手段の方が容易に実行できるため、ワインが好子として維持されていればジョギングしようがしまいがコンビニに行ってしまう可能性が高いのです。

結果、ワインの行動を促す働きを弱めてしまい、ジョギングまでして得たいものではなくなってしまうのです(そうするまでもなく手に入りますしね)。

この手の工夫は一時的になら上手くいくこともありますが、恒常的には行動をコントロールできるようなものにはなりません。

ご褒美を獲得する手段をターゲット行動のみに限定しなければならない

では「ご褒美」はセルフマネジメントにおいて全く使えないのでしょうか。実はかなり限定された状況になりますが、行動を促す有効な工夫となる場合があります。

その限定された状況とは「ターゲット行動によってのみ、ご褒美(好子)の獲得ができる環境」です。この条件を満たせれば、ご褒美によって行動がコントロールされはじめます。

最近、ちょうどその滅多にない条件が満たされる経験をしたので、例としてあげておきます。

ダイエットのために水泳を始めました。それに合わせて、以前から取り組んでいた摂取カロリー1,800kcal以下という制限を止め、カロリー”収支”1,500kcal以下に変更しました。カロリー収支なので、摂取カロリーが大きくなっても、その分、消費カロリーを増やせれば大丈夫です。

カロリー収支1,500kcal以下という制限は、行動契約によって絶対守るべき基準になっています。行動契約にはStickK.comを使っています(下記参照)。

www.behavior-assist.jp

この文脈において僕にとってご褒美(好子)となるのは、「食べることが許されるカロリーの量」です。水泳をはじめとして運動すればするほど、摂取しても大丈夫なカロリー量に余裕が生じます。しかも、この余裕は運動することでしか増やせません。

そうすると面白いことに、当初週2〜3回の予定だった水泳に週6日通ったり(1日はスポーツクラブが休みなので実質毎日)、スマホの歩数計が1万歩になるまで歩いてみたりするわけです。

おかげである程度食べたいもの食べているのに、カロリー収支が1,500kcal以下になっています。

というわけで、ターゲット行動によってのみご褒美が獲得できるのであれば、ご褒美は十分にターゲット行動を促す工夫として機能するようです。