個人事業家・フリーランスのための行動分析学 - 行動アシストラボ 矢野浩史

僕たちは行動分析学をもっと”使える”道具にする。

創造力を高める行動科学的トレーニング法

現状に不満があるから変えたいと思い、アイデアを練ってみるも何も浮かんでこない。あるいは頑張って考えてみたものの、どうも良い思いつきにはみえない。そればかりか他の人から言われたことの方が、自分で考えたことよりも素晴らしく見えてしまう。

そんな体験を繰り返していると、なんで自分には創造力とかアイデアを作る力が無いんだろう・・・と肩を落としてしまいます。もっと自分にも創造的な思考や行動ができればいいのにって思いますよね。

創造力を発揮できるかどうかには個人的な差もあるとは思いますが、それ以前にちゃんとトレーニングできていないというのが問題。アイデアを考えることも行動なので、行動の法則に則ってトレーニングしてみれば、いまよりも創造的に考えることができるようになります。

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ヒトはなぜ「創造力」が欲しいのか?

創造力とは何か?

創造力とは何でしょうか。何となく分かるようでいて、具体的にと問われると上手く言葉にならないようにも思えます。こういう時は辞書を引いてみると定義がハッキリします。辞書って凄いですよね。

創造とは、それまでになかったものを初めてつくり出すこと(大辞林より)

これが創造の定義。なので創造力とは、新しいものを自分で作り出す力のことなのでしょう。ちなみに創造の反対語は「模倣」です。人の真似をするだけだと、創造とはいえないわけですね。

分かってきたような気がしますが、もう少し具体的にみていきましょう。ある人が創造力を発揮しているところを見かけたとして、それってどんな場面なのでしょうか。

色々あると思いますが、人まねでない新しいものを作り出している場面なのでしょうから、例えば次のようなものが該当するのだと思います。

  • 作曲家がそれまでにないメロディの曲を楽譜に書いている場面
  • 数学者がそれまで誰も解けなかった数学上の課題についての解き方を見つけた場面
  • 陶器の職人がそれまで無かった新しい色が付いた器を作り出した場面

まだまだあるはずです。もう少し身近な例を考えてみましょう。

  • 会議でそれまで出てこなかった意見を述べた場面
  • ブログのテーマで今までない視点を思いついた場面
  • 会話の最中に、いまの話題が別のことにも通じることに気づいた場面

これらの例も、少なくともその場面においては「それまでになかったもの」ですので、創造的な行為に類するものだと考えられます。一般的には「アイデアが浮かぶ」といわれるもので、これが一番身近な創造的行為だといえそうです。

現状を変える力が欲しい

ところで僕たちが「創造力が欲しい」と願うのは何故でしょうか。これまた幾つか理由が考えられそうですが、すぐに思いつくものの一つが「現状を変えたいから」ではないでしょうか。

現状に対して不満を感じており、いままで通りのやり方を踏襲していたのでは解消できないから、何か新しいアイデアを必要としている。しかし、そう簡単にいいアイデアが浮かんでくるわけでもなく、我慢して頑張るしかない。

そんな状態だからこそ「現状を変える力が欲しい」と願うし、その変える力としての創造力を必要としているのでしょう。

人マネではない「自分オリジナル」が欲しい

創造力が欲しい理由として、もう一つ思いつくものがあります。それは「自分オリジナルの何かが欲しい」という理由です。

いつも人まねをしているだけだと感じていたり、人から言われたようにしかやっていないと自覚していたりすると、オリジナリティが欲しくなりそうです。

あるいは「自分で考えたものよりも、他人から言われたものの方が優れているように思える」という体験を常日頃からしているようであれば、自分オリジナルをより強く求めるようになるでしょう。

現状を変えることについてもそうですが、こういった体験は多くの人にとって身に覚えのあることではないかと思います。

あなたからアイデアが出てこない理由

思考回路を形成する訓練が不足している

最も身近な創造的行為は「アイデアを出す」こと。では、現状を変えたりオリジナリティを作るアイデアが欲しいのに、全然浮かんでこないのは何故なのでしょうか。どうすればアイデアが浮かぶようになるのでしょうか。

アイデアとは「考える(そして発言する、書き出す)」という行動です。行動科学に則って分析するなら、アイデアが浮かぶようにしたければ、アイデアを考えるという行動が強化されればいいはず。つまり、

  • ある場面において
  • アイデアを考えることによって
  • メリットのある結果を繰り返し得る(=強化される)

ことができればいいのです。

アイデアを考えることが強化され続けると、その場面において自然とアイデアが浮かぶようになっていきます。まるで頭の中に思考回路が形成されていくようなもので、そうなるとアイデアは容易に浮かぶようになります。刺激性制御といいます。

逆にいえば、アイデアがなかなか浮かんでこないのは、強化された経験が不足しているからなのです。分かりやすく「訓練が不足している」と言い換えてもいいです。

アイデアを必要とする場面で「弱化」されてきた

アイデアが浮かばなくなる背景には訓練不足(強化された経験の不足)もあるのですが、同時にアイデアを考えることが弱化された可能性もありそうです。

僕自身、

  • チームAではアイデアがたくさん出てくる
  • チームBではアイデアが全く浮かんでこない

といった経験をしたことがあるのですが、この違いを作り出しているものは何でしょうか。仕事内容は似たようなものです。答えをいうと「アイデアを発言した時に肯定されやすいか、否定されやすいか」の違いです。

アイデアを出す人の立場や習熟度にもよりますが、浮かんだアイデアがチームに受け入れられにくい状況だと、そのチームにおいてはアイデアを伝えることに消極的になります。

伝える機会が減少すれば、その前提である「アイデアを考える」という行為自体も消極的になります。専門用語を使うと刺激反応連鎖が途切れる・・・といったところでしょうか。

アイデアがなかなか浮かんでこないのは、訓練不足によってアイデアを考えるための思考回路が形成されていないことと、アイデアを必要とされない環境に行動が最適化したことに主な理由があるものと思われます。

以上を前提として、創造力を高めるためのトレーニングプロセスを提案します。

創造力を高めるトレーニングプロセス

トレーニングのゴールは自己強化

前述のようにアイデアが浮かばない理由は2つあり、そのうち1つはアイデアを必要とされない環境に問題がありました。が、まぁ、アイデアを必要とされていても、アイデアを作り出すための思考回路がなければ、そもそも何もできません。まずは思考回路を作るための訓練をしておくといいでしょう。

思考回路が形成されるのは、アイデアを考えるという行為が「強化」されるからです。強化されるためには次の2つが必要です。

  • アイデアを考えるという行動が自発する
  • アイデアを考えることでメリットのある結果を獲得できる

このうち後者についての理想は、自分で自分にメリットのある結果を提示できることです。具体的には「お、これいいアイデアじゃん!」と自分で自分のアイデアに肯定的なフィードバックができることです。自画自賛。

そこまで行き着ければ、アイデアを考えることが常に自己強化される状態になりますので、思考回路が形成されやすくなります。トレーニングのゴールは、この状態に辿りつくことです。

アイデア系の道具は「トレーニングのために」使おう

しかし、問題はそもそもアイデアを思いつかないという点。アイデアを考えるという行動が自発しないので、アイデアが浮かぶという経験も、いいアイデアだと自己強化する経験も殆ど生じていない状態なのです。これではトレーニング自体を進めることができません。

この問題を解決するために使えるのが、世の中に溢れている「アイデアを考えるための道具・手法」です。マインドマップだったり、マンダラートだったり、ブレインストーミングだったり、アイデアを考えるための道具や手法はたくさんあります。

これらの道具を「いいアイデアを考えるため」に使うのではなく、「お、いいアイデアじゃん!」と自己肯定できる機会を得るために使うのです。アイデアを作るための道具ではなく、トレーニングのための道具として使ってみましょう。

個人的にはマンダラート辺りがお勧めです。9マスの枠があって、真ん中に考えたいテーマを書きます。で、周りのマスが全部埋まるまでアイデアを考える。

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段階的にOKを出すハードルを上げていくといいです。最初はとりあえず何を書いてもいいので全部のマスが埋まったらOKとして、それができるようになったら次は8つのうち1つは「いいかも?」と思えるアイデアが含まれていればOK、みたいに。段階的に要求レベルを上げていきましょう。

こういった道具を使うことに慣れてきたら、最後は道具無しでアイデアを考えてみることにチャレンジしてみてください。思考回路が形成されたかどうかをチェックできるはずです。

トレーニングするしかない環境を得よう

上記のようなトレーニングは、実際にやるかどうかがとても重要です。どんなに優れた手法であっても、やらなければ全く役に立ちません。なのでトレーニングの方法とセットで考えるべきは、「トレーニングするしかない環境をどう作るか」になります。

トレーニングするしかない環境を作る方法は、基本的に2つです。1つ目はアイデア出しの反復練習をさせてくれる研修や講座に出ること。研修であれば、一定の時間、その場に拘束され練習することを求められますので、こういった場をトレーニングに活用するのは有効です。

2つ目の方法は行動契約です。ちょうどいい研修や講座が見つからないこともあるでしょう。そういう場合はセルフマネジメントでトレーニングの期間を作るしかありません。そういうときに行動契約はとても使いやすいのです。

行動契約について詳しく知りたい方は、下記の記事で取り上げていますので読んでみてください。

www.behavior-assist.jp

まとめ

本記事でお伝えしたことは次の3点です。

  1. 創造とはいままでにない新しい何かを作り出すことであり、その一番身近な行為がアイデアを出すことである。また、アイデアを考えられるようになりたいのは、「不満のある現状を変えたい」および「自分オリジナルの何かを求めている」からである。
  2. アイデアが浮かばないのは、アイデアを考えるための思考回路を作る訓練が不足しているためである。アイデアを考え、強化されるという経験を繰り返せば、自然とアイデアが浮かぶようになる。
  3. アイデアを考えるためのトレーニングに、アイデアを作るための道具や手法を利用しよう。マンダラートなどおすすめ。最初はレベルを低く設定し、内容を問わず書き出せればOKという状態から始め、徐々にアイデアの質を考慮に入れるようにし、最後は道具なしでアイデアを考えられるようにトレーニングしていこう。