個人起業家のための行動分析学 - 一般社団法人行動アシストラボ

僕らが持つ本来の機能・能力を存分に発揮するために行動科学を役立てる。

プロとして「当たり前のことを当たり前にやる」を実践する5つの工夫

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その分野のトップに立つ人の話を聞くと、「当たり前のことを当たり前にやる」を積み重ねてきたんだなぁ、と学ばされます。
特別なことをやるのではなく、普通のこと、やるべきことをしっかりと継続している。
他の人だったら途中で止めてしまう場合でも、コツコツと続けてきたから特別になれたのだと痛感します。

そして自分のことを省みて「あー…」と思ってしまうわけです。
やるべきことをしっかりやってきていたら、いまとは違う人生になっていたかもしれないなぁ、なんて。
でも意志の弱い自分は、ついついラクな方に流されてしまいます。
仕方がない。

でも本当はこう思います。
当たり前のことを当たり前にやって、イチローや羽生善治のようにプロの中のプロに成長したいって。
もしそんな方法があるとしたら、是非知りたい。

僕たちの行動には明確な原因があります。
それは意志の強弱や性格、やる気等ではありません。
ヒトの行動の科学的な理由を知り、それを踏まえて工夫すれば、僕たちの行動は変わります。

行動科学を応用した「当たり前のことを当たり前にやる」方法をお伝えします。

当たり前のことができることで得られる大きな恩恵

繰り返すうちにやがて「簡単に」できるようになる

そもそも「当たり前のこと」とは、具体的にはどんな行動なのでしょうか?
当たり前のことができると、何がいいのでしょうか?

”当たり前”と書くくらいですので、特別な人にしかできないような難易度の高い行動ではないでしょう。
どちらかというと誰にでもできるような、ごくありふれた行動です。
そのごくありふれた行動が、なぜ大きな恩恵をもたらすのでしょうか。

どんな行動にもいえることですが、それを何度も何度も実行すると、徐々に慣れてきます。
最初は難しかったことでも、何ヶ月・何年と繰り返すうちに簡単に実行できるようになります。

専門的なことであっても「簡単に」できるようになる

例えば次の数式を見て、どのくらいで答えが思い浮かびますか?

2 × 2

おそらくあなたは瞬時に「4」と答えられたはずです。
これは僕たちが小学生の頃、九九を繰り返し練習したからです。
九九をマスターすれば、1桁同士の掛け算であれば、頭に負担をかけることなくすぐに答えを出すことができます。

繰り返し練習するとこのような恩恵があるのです。
九九だと簡単なことしかできませんが、専門性の高い分野についても同じことがいえます。

例えば医師であれば、何年と患者を診察し続けることで、患者の訴えから幾つかの病名をすぐに思い浮かべることができるようになるでしょう。
あるいはギターを弾くのであれば、何年も弾き続けることであるコードを演奏するのにどの弦を押さえなければいけないか、いちいち頭で考える必要がなくなるはずです。
経営者であれば経営上の課題を一瞬で判断できるようになるでしょう。
コンサルタントであれば、クライアントにいうべきアドバイスがパッと頭に浮かぶようになるでしょう。

つまり「当たり前のことを当たり前にやる」を積み重ねることで、僕たちは専門性の高い、高度なことであっても瞬時にできるようになるのです。

有効な「システム1」が専門家としてのパフォーマンスの鍵

この瞬時にできてしまう能力を「システム1」といいます。
詳しく知りたい方は下記の書籍を読んでみてください。

高い専門性を持ったシステム1を持てれば、良くあるパターンはすぐに、しかも小さな負担でスピード感を持って処理することができます。
システム1で処理できる部分が多ければ多いほど、僕たちは余裕を持つことができます。

専門的な仕事には例外パターンがつきものです。
例外パターンを処理するためには、時間と労力が必要です。
ですのでシステム1で処理できるものが多いほど、例外パターンに割り当てられるリソースも多くなるのです。

それが結果として、僕たちの専門家・プロフェッショナルとしてのパフォーマンスを高めてくれます。
優秀な人は優秀なシステム1を持っているし、そのシステム1は「当たり前のこと」をやり続けて手に入れたものなのです。

当たり前にやって基礎スキルを高めていこう

前提とするルールが変わると「システム1」は効果を失う

ところでこの「システム1」は、ルールがガラッと変わると通用しなくなります。

例えば野球のルールが変わって、バットがラケットになったり、ボールを後ろに飛ばさないといけなくなったりしたら、たとえイチローであってもすぐに対応ことはできないでしょう。
将棋のルールが変われば羽生善治でもすぐには勝つことができません。

ルールが変わったら、それに合わせてシステム1の再構築が必要になります。
野球や将棋のようなスポーツであれば、コロコロとルールが変わることはありませんが、社会的な成果を出さなければならないような分野では、知らないうちにルールが変わってしまっていることもあります。

例えば少し前までブログやホームページは、パソコンで閲覧するものでした。
ですのでデザインや文字の大きさ、操作のしやすさもパソコンに合わせるのが効果的です。

しかし、この記事を書いている2018年2月では、8割以上の人がスマートフォンを使って閲覧しています。
必然的に適切なデザインも変わってしまっています。
それを知らずにWebデザイナーがパソコン時代に身に着けたシステム1を使って、Webサイトをデザインしても、通用しなくなっている部分がたくさんあることでしょう。

パフォーマンスを下支えする基礎スキルが重要

苦労して手に入れた「システム1」なのに、こんな風に使えなくなってしまうのでは、何だかうんざりしてしまいます。
でも実はそうではありません。
物事には変化しやすい部分と変化しにくい部分があります。

先程のWebデザインの話であれば、Webサイトを記述するHTMLやJavaScriptといった部分は、スマホ時代も依然として有効です。
あるいは画像を作成する技術、配色のバランスを整える技術、伝わりやすい文章を書く技術といったものも、相変わらず有効でしょう。

つまり、専門家としてのパフォーマンスを下支えする基礎スキルのようなものは、比較的長期に渡って通用しやすいのです。
当たり前のことというのは、このような基礎スキルを身に付けるための行動だと考えてください。

基礎スキルの獲得につながる「当たり前のこと」をやる

また基礎スキルは大抵、複数の分野に渡って有効なものだったりします。
例えば文章を書く技術は、Webサイトを構築するのにも使えますし、それ以外にもブログを書いたり、ビジネス書を執筆したり、場合によっては小説を書くことにも使えます。

あるいは「何かのテーマについて深く考え答えを出す技術」なども、様々な分野で役に立つことでしょう。
プログラミングの技術は、コンピューターを活用する様々な分野で使える技術です。
人々が何を求めているかを見定める技術は、ビジネスだけでなく、相手を満足させることが重要な分野全てで役に立ちます。
行動科学を使って人の行動の原因を分析する技術は、人の行動が関わる全ての分野で応用が効きます。

他にもたくさんあるでしょう。
このような技術を身につけるための「当たり前のこと」を積み重ねていくといいです。

当たり前にやるのが難しい理由と5つの行動の工夫

ここまで

  • 当たり前のことを積み重ねることで「システム1」が構築され、少ない負担でスピード感をもって物事を処理できるようになる(ので困難なことや例外的なことにリソースを割けるようになる)
  • 様々な分野に応用可能な基礎スキル部分をトレーニングすることで、長期に渡って有効な「システム1」を手に入れることができる

ことをお伝えしてきました。

しかし問題は当たり前のことをやるメリットが分かっても、実際に当たり前のことを積み重ねるのが難しい点にあります。
この点に踏み込まなければ片手落ちです。
ここから当たり前にやることが難しい理由と、それに対応した工夫についてお伝えしていきます。

1. 負担の大きな活動は連続させずに、間に回復時間をはさもう

繰り返し行動することで、やがてシステム1化し簡単に実行できるようになりますが、システム1化する「まで」のトレーニング自体は負担の大きな行動になります。
負担の大きな行動は、僕たちのリソースを食い潰します。

慣れないことや、難しいこと、例外的なことを処理するのは負荷がかかるため、いくつも同時に実行することは困難です。
できたとしても一時的なもので、持続して注意を向けたり、努力を続けることはできません。
つまり負担の大きな行動を実行したら、回復するための時間が必要になるのです。

当たり前のことをトレーニングするときは、難しいことや例外的なことと同時にはやらないようにしましょう。
特にトレーニングを始めたばかりだと、とても負担が大きくなりますので、前後に空白の時間やリラックスできる時間、機械的な作業など集中力を必要としない時間を設けるようにしましょう。

2. 誘惑するものを物理的に遠ざけてしまおう

また「誘惑に抗うこと」も僕たちの負担を増大させます。
例えば資格試験の勉強をするとして、一人で図書館で勉強するのと、TVで気になる番組をやっている前で勉強するのとでは、後者の方がリソースを食いつぶすのです。

誘惑に抗いながら何かをしなければならない状況は、今の時代、とてもありふれたものです。
パソコンでWindowを切り替えればすぐにYoutubeを観ることができます。
手元のスマートフォンを操作すれば、すぐにゲームやSNSを開くことができます。

こういった誘惑に抗いながら、当たり前のことをやるのはとても効率が悪いのです。

こういった問題を意志の力で何とかしようとしてはいけません。
環境を整えることで、それらをやろうとしてもやり難い状況を手に入れましょう。
TVやスマートフォン、インターネットに触れられない環境であれば、意志が強かろうと弱かろうと関係ありません。

一日の中で一部の時間だけで構いませんので、誘惑を物理的に遠ざけた環境に身を置くようにしてみてください。

3. どれだけ面倒さを軽減できるかが勝負だ

面倒なことに取り組むことも、僕たちの負担になります。
僕たちは本当にちょっとしたことで行動に負担を感じるようにできていて、それが原因で当たり前のことに挫折してしまうのです。

何かトレーニングしなければならないのであれば、それを如何に簡単に始められるようにしておけるかは、継続のためにとても重要な要因となります。

例えばスポーツジムに通う場合、着替えやタオルなどを準備してからジムにいくのと、手ぶらでいってジムで借りてしまうのとでは、後者の方が簡単です。
継続という観点からみれば、手ぶらでいけるようにしておいた方が有利でしょう。

パソコンを使って何かをするなら、パソコンをつけっぱなしにしておく。
ノートを使って何かをするなら、すぐに書き始められるように机の上にノートを置いておき、専用のペンをノートに挿しておく。
腕立て伏せのような筋トレをするなら、そのためのスペースを常に空けておく。
喫茶店などに移動する必要があるなら、外出しやすいように、起きたらすぐに外にでてもいい格好に着替えておく。

どれだけ面倒さを軽減できるかは、続けるためにとても重要なポイントです。

4. 積み重ねてきた「量」という変化を知り、勇気づけの源泉としよう

当たり前のことに挫折してしまう理由に、その効果を感じられないことがあげられます。
文章を書く技術であったり、思考力を鍛えるトレーニングなどは、ちょっとやっただけではなかなか効果を感じられないでしょう。
コツコツと積み重ねていって、ふと気づいたら効果が出ていた、という類のものです。

こういった活動は「ちりも積もれば山となる型」といって、行動を継続するのが困難なパターンの1つ。

僕たち人間には「変化」が必要なのです。
行動して変化が起きるからこそ、その行動を続けることができます。
当たり前のことを積み重ねるために、変化を感じられる工夫を考えましょう。

そのための鍵になるのが「記録」です。

例えば単純にやった量をカウントしてみるのも、変化を捉える方法の1つ。
思考力を鍛えるためにアイデアノートみたいなものをつけるのであれば、ページ数をカウントしてみれば、どれだけ積み重ねてきているのかを知ることができます。
文章力を鍛えているのであれば、文字数をカウントしてみればどれだけの文章を書いてきたのかを知ることができます。

こういった積み重ねてきた「量」を知ることは、続ければ続けただけ「重み」が増し、僕たちを勇気づけてくれるおとでしょう。

5. 行為の中に価値を見い出せば、モチベーションややる気を刺激する必要はない

モチベーションややる気に頼れば必ず挫折する

最後にモチベーションの話をします。
僕たちのやる気やモチベーションは、簡単に上下してしまいます。
やる気があるからやる、やる気がないからやらない、といったようにやる気やモチベーションに依存して行動するのでは、すぐに挫折してしまいます。

当たり前のことを当たり前にやり続ける。

それを実現したいのであれば、モチベーションに頼ることは止めましょう。
代わりに「行為の中に価値を見出して」ください。

行為の中の価値

例えば文章力を鍛えているなら、どのように文章を綴ることに価値を見出せるでしょうか。
面白い文章が書けることに価値を感じられるのであれば、そのように文章を書く機会が増える工夫を。
論理的な文章を書くことに、分かりやすい文章を書くことに、美しい文章を書くことに価値を感じられるのであれば、そのように文章を書く機会が増える工夫を。

行為の中にある価値は、その行為を実行すればいつでも触れることができるものです。
ゆえに外部からやる気やモチベーションを与えられなくても、行動する理由になるのです。

好きこそものの上手なれを体現する

その行為に未熟なうちは、なかなか価値に触れることはできないかもしれません。
面白い文章を書きたくても、面白い文章を書くスキルが伴っていなければ、面白い文章を書けたという体験もなかなか得られませんので。

ただトレーニングを繰り返すうちに「これはどこか心地の良いもののような気がする」という感覚に出会えます。
最初は些細な感覚かもしれませんが、それを大切にして欲しいのです。
その感覚を上手く育てることができれば、継続は容易になります。

好きこそものの上手なれ。

行為の中にある価値に触れることこそが、その言葉を体現することに他なりません。

まとめ

本記事でお伝えしたことは、次の3点になります。

  1. 当たり前のことを積み重ねることで「システム1」が構築され、少ない負担でスピード感をもって物事を処理できるようになる(ので困難なことや例外的なことにリソースを割けるようになる)。
  2. システム1はルールが変わってしまうと通用しなくなる。様々な分野に応用可能な基礎スキル部分は、変化が少なく長期に渡って通用する可能性が高い。基礎スキルをトレーニングすることで、長期に渡って有効な「システム1」を手に入れることができる。
  3. 当たり前のことをやり続けるのが難しいのは、負担感の問題・変化の少なさの問題・モチベーションの問題の3つに分類される。大切なのは、(1)負担の大きい活動を連続させないこと、(2)誘惑に抗う必要のない環境を作ること、(3)手軽に始められるような工夫をすること、(4)変化を感じられるように記録を取ること、(5)行為の中に価値を見出すことである。