行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

最大限のパフォーマンスを引き出す集中力の作り方

高い集中力を発揮できれば、やるべきことをどんどん終わらせることができます。集中できないままダラダラと作業を続けるよりも気分もスッキリするでしょう。

そんなハイパフォーマーな自分になるためにも、是非集中力が欲しい。

でも実際の僕たちはなかなか集中することができず、現実逃避に時間を割いたり、作業中に気になっているあのことについて考え始めたりします。

なぜこんなにも集中することができないのか。その理由を解き明かし、そんな僕らでも集中して作業できるようにするための工夫をお伝えします。

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なぜ集中して取り組むことができないのか?

集中力とは何でしょうか。言うまでもなく「一つことに意識の全てを向けて取り組む能力」といった感じですが、もう少し具体的に考えてみたいところです。

集中力がないと悩んでいるということは、集中していない状態を自己認識しているわけです。集中していない状態について、もう少し具体的に説明するなら次のようなります。

本来、意識を向けるべき対象”以外”の行動が生じている状態

やるべこと”以外”のことをやっているからこそ、集中しているとはいえないわけです。

ライバル行動が僕たちの集中力を奪っていく

例えば、本来は目の前の作業を進めなければならないのに、スマホを弄ってSNSをチェックしてしまったり、Youtubeで動画を観てしまったり、別の作業をはじめてしまったりする等。

これらの本来やるべき行動の邪魔になるものを「ライバル行動」といいます。ライバル行動が増えれば、その分、本来やるべき行動に集中することができません。

なぜライバル行動が生じるのかというと、その理由は次の2つです。

  1. ライバル行動が実行可能/容易な環境にいる
  2. ライバル行動を実行すると現実逃避できたり、何かのメリットが生じたりする

この2つが両立していると、なかなか集中して作業することはできないでしょう。

”気になる”思考が僕たちの集中力を奪っていく

またライバル行動以外にも集中力を乱すものがあります。それは「思考」です。次のような状態にある時、一見、目の間の作業に取り組んでいるように見えて、頻繁に別のことを考えてしまうことがあります。

  1. 早く解決したい気になる問題を抱えている
  2. すぐやりたくて我慢できないような欲求を抱えている

例えば、今月は金欠で残金が残り少ない。給料日まであと1週間あるけど、今週、なんと同僚の結婚式に呼ばれている。ご祝儀のお金どうしよう…。という悩みを抱えていたら、どうでしょうか。

あるいはこんなケースもあります。先週、前々から楽しみにしていたゲームが発売された。当然、発売日に購入し早速楽しんでいる。面白くてたまらないので早く続きをやりたくて仕方ない。こんな欲求を抱えていたらどうでしょうか。

どちらの状態も「気になっていること」で頭がいっぱいです。これではやるべきことに取り組みつつも、ついついその気になっていることを考えてしまいそうです。

集中力を発揮するには2つの問題を解決しなければならない

つまり、僕たちの集中力を乱すものは次の2つであり、それぞれに対する対処策を持っていなければ僕たちは自分の集中力を高めることができないのです。

  1. ライバル行動が僕たちの集中力を奪う
  2. 気になることが僕たちの集中力を奪う

ではどうすれいいのか。それをこれからお伝えしていきます。

集中力を引き出す環境の作り方

まずはライバル行動に対処します。ライバル行動は物理的な環境を整えることができれば、比較的簡単に抑制できます。ライバル行動を実行するのに必要な道具・ツールを遠ざけるような工夫をしましょう。

例えば、スマートフォンを使ってしまうのであれば、作業部屋とは別の場所にスマホをおいておきましょう。別の部屋においてもすぐに持ってきてしまうなら、スマホを持たずに外出して、カフェや図書館で作業することを考えてもいいかもしれません。

場所を変えるというのは有効な対策になることが多く、特に通信環境に依存して生じているライバル行動を根こそぎ実行できなくすることが可能です。

どうしても作業中にWeb等で調べものをする必要がある場合は、一定時間、特定のサイトにアクセスできなくなるようなアプリを導入してみるといいでしょう。

また作業する際に周りに何が置いてあるかも重要です。いまからやる作業以外のものが目に入れば、そちらに気を取られてしまうかもしれません。机の上やパソコンの画面は、いま作業に必要なものしか目に入らないようにしておきましょう。

シンプルに「これからやるべきことに必要なものしかない環境」を作ることができれば、ライバル行動の邪魔は減らせます。

”気になる”をマネジメントして集中力を高める

次に「気になること」への対処です。気になっていることには「早急に解決したい悩み」と「がまんできない欲求」の2つがあります。それぞれ対処が異なりますので、1つずつ説明します。

早急に解決したい悩みに対処し集中力を高める

まず早急に解決したい悩みについてですが、基本方針として頭の中だけで管理しようとするのはNGです。ぐるぐるとそのことについて考えてしまい、自分で悩みを膨らませてしまいます。

何について悩んでいるのかを紙に書き出して対処しましょう。

その際、意識して欲しいポイントが「問題と悩みの違い」についてです。問題とはいま現実にかかえている解決すべき事柄であり、悩みとは問題から派生して作り出した様々な未来です。

問題と悩みの違いとは

分かり難いので例で説明しましょう。月末で金欠にも関わらず、同僚の結婚式に呼ばれている。ご祝儀のお金を確保できていない。これが「問題」です。

では「悩み」とはなんでしょうか。悩みは問題から派生して作り出した未来です。例えば、ご祝儀の金額が少なかったら同僚に裏で何か言われるかもしれないとか、いまから結婚式の出席を断ったら嫌われてしまうかもしれない等。

これらはいま実際に対処すべき課題として生じている問題ではありません。もしかしたら起きるかもしれない未来の1つです。そして僕たちを苦しめているものの大半は、この「悩み」の方なのです。

問題と悩みを切り分けて書き出す

早急に解決したいことを次の2つを切り分けて書いてみてください。

  • 具体的に対処すべき、すでに生じている問題は何か?(例:結婚式のご祝儀を用意すること)
  • もしかしたら起きるかもしれない、不安を感じる未来は何か?(例:ご祝儀を用意できなかったら同僚との関係が壊れる等)

そしてここが大切なのですが、この状況で気にするべきものは「問題」のみです。まだ起きていない未来についての悩みは対処する必要はありません。起きていない問題を解決することはできないのです。悩むだけ無駄。

あー、そりゃこういうことが起きるかもしれないのは不安だよなぁ。分かるよ。だって人間だもの。み○を。

とか自分に言ってお茶を濁しておくといいでしょう。

紙に書き出し、問題と悩みを切り分けることができれば、気になる度合いはかなり低下します。

我慢できない欲求を利用して集中力を高める

次の我慢できない欲求への対処法です。こちら欲求を抑えるという発想ではなく、目の前の作業に集中するために活用する、というスタンスがいいでしょう。

プレマックの法則というものがありまして、頻繁にやってしまう行動を動機づけに使うことができます。

例えば「いまから90分でこれだけの仕事を終えることができたら、先週買ったゲームの続きをやってもいい」という約束事を自分にするのです。これが意外と行動を制御してくれたりします。

やるべきことに対する労力や負担感と、それによって許可される行動のご褒美感。この2つのバランスを上手く取ってあげれば、欲求は寧ろ集中力を高める武器になります。

  • どのくらいの時間で、どのくらいの作業を終わらせるのか
  • それができたら自分にどんな行動を、どの程度許可するのか

この2つについて試してみてください。

やるべきことを終わらせて、楽しくてしかたないことにスッキリと没頭できるのは、とても幸せなことだと思います。あれやらなきゃ…と気になりながら遊ぶよりも、遥かに質の高い楽しみを得られることでしょう。

まとめ

この記事でお伝えしたことは次の3つです。

  1. 集中力を乱す要因は「本来やるべき行動を邪魔するライバル行動」と「しばしば頭をよぎる気になること」の2つ。これらが生じた分、本来やるべき行動が中断されるので、結果として集中できていない状態となる。
  2. ライバル行動が生じるのは、ライバル行動が実行できる環境になっていて、かつライバル行動を実行するメリットがあるから。環境を工夫することでライバル行動を実行する負担を高めれば、本来やるべき行動に集中しやすくなる。
  3. 気になることは「問題」と「悩み」に切り分けて対処する。頭の中だけで考えようとせずに、紙などに書き出すこと。対処すべきなのは問題のみであり、問題から派生して不安になっているまだ起きていない未来は放置する。