個人起業家のための行動分析学 - 一般社団法人行動アシストラボ

僕らが持つ本来の機能・能力を存分に発揮するために行動科学を役立てる。

行動科学で読み解く7つの習慣:「P/PCバランス」を実践するには?

僕たちは成果が欲しい。それが仕事であっても、収入であっても、人間関係であっても、健康であっても。欲しい成果があって、そのために頑張ることがありますよね。

ただ、一時的に上手くいけばそれで満足かというと、そうではなくって、上手くいったことをキッカケに、その成功を持続させたいと考えているはず。にも関わらず、短期的な目の前の成果しか目に入っていないケースがあります。

一方で、将来に渡って成果を生み出すであろう能力やリソースに投資する人たちもいます。その能力やリソースが手に入れば、欲しい成果はいつだって得られるはず。これは賢い考え方のように思えます。

しかし、いつまでも投資活動ばかりに時間と労力とお金を費やしているケースもあって、一体いつ成果を得ることになるのだろう…と。

こういった活動のバランスをとって持続的に成果を得るための考え方が、7つの習慣の「P/PCバランス」です。今回はこのP/PCバランスを実践するにあたって、行動科学の視点を織り交ぜながら解説していきます。

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金の卵とガチョウのハナシ(P/PCバランス)

短期的に大きな成果を得ようとすると中長期的には成果を失ってしまう

7つの習慣の冒頭の章に「P/PCバランス」という考え方が出てきます。中長期に渡って持続的に成果を得続けるために、とても有効な考え方。

例えば訪問営業について考えてみましょう。突然、玄関のチャイムがなって出てみたら○○の営業だった…という経験をしたことがあると思います。多くの人は購入することはないでしょうし、仮に購入してしまったとしても後で後悔してしまうような感じではないかと思います。

この訪問営業はP/PCバランスの「P」に偏った活動で、この方法で中長期的に成果を出し続けるのは難しいでしょう。

成果を生み出すリソースへの投資活動を意識しよう

P/PCバランスを説明するのに、7つの習慣では「金の卵を生むガチョウ」の喩えが出てきます。簡単に書くと次のような話です。

ある日、飼っていたガチョウが金の卵を産むようになった。農夫はお陰で大金持ちになったが、欲が出て1日1個しか得られない卵を、一度にたくさん得ようとしてガチョウの腹を割いてしまった。中身は空っぽで、農夫は金の卵を産むガチョウを失ってしまった。

この場合、Pは金の卵でPCがガチョウになります。つまり成果(P)と成果を生み出す能力・リソース(PC)の話で、この2つのバランスが崩れてしまうと効果性を失ってしまうということです。

訪問営業でいきなり売り込みするのは、契約や売上というPを得ようとする行為です。契約や売上を生み出すもの(PC)は何かといえば「信頼関係を築いた顧客」です。

初対面で欲しくもない商品の売り込みをしてしまえば、信頼関係を築くどころではないでしょう。営業手法の勉強などしてみると、最初の5回は一切商品の話はせずに相手の話を聞くことに終始し、関係性をつくることから始めるそうです。

契約や売上が欲しければ、契約や売上を生み出すものへの投資活動が欠かせないわけです。

持続的に成果を得るために必要なのはPとPCのバランス

一方、信頼関係を築くだけ築いて、商品のことについて一切何も話さいない、クロージングを全くしないのは、成果を得る機会を自ら失っていることになります。関係性を築き、相手が欲しているものを理解したなら、それを提供する(つまり商品を売り込む)ことが求められます。

P/PCバランスは文字通り「バランス」が大切なのです。

書籍「7つの習慣」に出てくる例だと、寿命を延ばすためにジョギングをするなんてのもあります。

ジョギングをすることで健康を保てれば、それだけ人生の時間は増えることでしょう。一方でジョギングに一日数時間を使っていたのでは、トータルで1年以上の時間をジョギングだけに費やすことになってしまう。

この辺りもバランスの大切さを示唆しています。

もしP/PCバランスの詳細についてより知りたいのであれば、書籍を読んでみるのがいいでしょう。漫画版などもあったはずなので、敷居が高い方はそちらでもいいかもしれません。

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まんがでわかる 7つの習慣

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P/PCバランスを意図した活動のために必要な2つのこと

P/PCバランスが大切だと分かったところで、結局問題になるのが「じゃぁ実践できますか?」ということ。

P/PCバランスを意図した活動をするためには、PとPCのそれぞれの活動を具体的な行動に落とし込むことと、落とし込まれた具体的な行動を実際に行うことが求められます。

行動が分からなければ何をしていいか分からず途方にくれてしまうでしょう。あるいは、何をやればいいか頭では分かっていたとしても、実際にはそれができないという場合もたくさんあるでしょう。

この2つの問題について見ていきたいと思います。

具体的な行動に落とし込むのも技術の1つ

P/PCバランスに限った話ではないのですが、大まかな方針が定まっても、そこから具体的な行動に落とし込むのが難しいことがあります。理由は2つあって、1つは単なる知識不足。もう1つは具体的に考える技術に欠けていること。

知識を学び、問いかけによって方針を見定めよう

知識が不足していると、成果を生み出すリソースが何か見つけることができません。

例えば先程出した例で、営業で売上を上げたいと思っていたとしても、営業経験も無ければ勉強もしたことがないのであれば、果たして何が売上を生み出すものなのか考えることも難しいでしょう。

つまり成果(P)を生み出すリソース(PC)を見つけ出したいのであれば、その分野についてのプチ専門家になる必要があります。あるいは、専門家の助力を得る必要があります。

その上で次の問いに答える試みを繰り返してみるといいでしょう。

  • 欲しい成果は何か?(例:契約、売上)
  • その成果を継続的に生み出すものは何か?(例:信頼関係を築いた顧客)
  • その成果を直接的に得る活動は何か?(例:クロージング)

ただしこの問いに十分に応えられる知識があるからといって、それが行動にまで落とし込めるとは限りません。もう1つの鍵は「具体的に考える技術」です。

ビデオクリップ法を使って具体的行動へ落とし込もう

具体的に考えるための方法の一つに「ビデオクリップ法」があります。それを行っている場面を映像に写してみた時に、そこに何が写っているかを説明してみると、表現がかなり具体的になります。

例えば「顧客と信頼関係を築いている場面を映像に写してみて、そこに何が写っているかを表現してみてください。」という問いに答えてみればいいのです。

もしかしたら「顧客の話を真剣に聞いている」とか「先週聞いた顧客の困りごとを思い出して、何ができるかを書き出している」といった行動が出て来るかもしれません。

具体的に考える技術について、もう少し詳しく知りたい方は下記の記事も読んでみてください。

www.behavior-assist.jp

知識を得ることで大まかな方針を明確にできます。ビデオクリップ法を使うことで、明確になった方針を具体的行動へと落とし込むことができます。

ここまでできれば「P/PCバランス」を実践するために「何をやればいいか」分かっている状態になります。

頭で分かっているのに実行できないのは何故か

しかし問題はここで終わらないのです。何をやるべきか頭では分かっているのに、何故か行動することができない。そんなケースは山ほどあります。

この問題を読み解くためには、行動についての考え方を変える必要があります。僕たちが行動できないのは意志が弱いからとか、やる気がないからではありません。

僕たちが行動するのは、行動することによって分かりやすくて確実なメリットが得られるからです。そして僕たちが行動できないのは分かりやすくて確実なデメリットがあるか、あるいは得られるメリットが分かり難いからです。

”塵も積もれば山となる型”は行動が続かない

成果を生み出すリソース(PC)に投資する活動は、しばしばメリットの分かり難いものになります。

例えばジョギングすることで健康になるとしましょう。頭ではおそらくジョギングが健康に貢献しそうなことは分かります。しかし問題は2〜3回のジョギングで即健康になるわけではない、ということです。

日々、コツコツと適切なペースでジョギングを続け、小さな変化が積み重なってようやく健康になってきたことを実感できるのです。

このようなパターンを「塵も積もれば山となる型」といって、行動が続かない典型的な理由の1つです。

成功体験の無い行動には積極的になりにくい

であれば成果(P)を直接的に得る行動はやりやすそうです。

例えば商品を売り込むのであれば、効果的な営業テクニックを学び、言葉巧みにクロージングしていけば、短期的には契約数を増やすことができるでしょう。この場合、クロージングという行為には明らかなメリットが伴いますので、行動の原理原則に従うと、売り込むことにどんどん積極的になるはず。

実際、僕の知り合いの中にも何名か「売り込みが大好き」という人がいます。

しかしながらそういう人は極一部で、殆どの人は売り込むことに苦手意識を持っていて、最後の一言(クロージング)を躊躇してしまいます。

この2者の違いがどこにあるかといえば「成功体験」です。過去に実際に行動してみて、メリットを得る経験をしたかどうか。これがあるかないかが分岐点なのです。

やってみてデメリットに出くわした結果、消極的になったというケースもありますが、多くの場合は「やったことがなくてメリットを享受したことがない」というものでしょう。

つまり成果を直接的に得る行動に積極的になりたいなら、「やってみてメリットを享受する」という経験が必要なのです。

行動レベルへ落とし込んで実践するための行動科学的工夫

成果(P)を直接的に得る行動にせよ、成果を生み出すリソース(PC)に投資する行動にせよ、現状、上手く行動できないのであれば、成り行きに任せていてはなかなか行動できるようにはならないでしょう。

行動にメリットが伴うという経験を意図的に作り出す必要があります。

やってみて、そしてメリットを享受してみる

成果(P)を直接的に得る行動の場合、「やってみてメリットを享受する経験」が鍵になりますので、次の2つの工夫が考えられます。

1つはメリットを享受しやすい環境を整えること。これは最初にある程度、成果を生み出すリソース(PC)に時間と労力を投資することを意味しています。

営業で売り込みするにせよ、まずは顧客との信頼関係を築くことを先にした方が、いざ売り込みした時に成果を得やすくなります。あるいは顧客が求めているものを理解した上で、商品がどう役に立つかを伝えながらクロージングした方が成果を得やすくなります。

闇雲にやってみるのではなく、先にメリットを得やすい環境を作りましょう。

もう1つの工夫は、同じ役割を持つより実行しやすい行動を選ぶということです。

営業で売り込むことを考えた場合、口頭で直接売り込みする方法もあれば、「ご希望でしたらあとでメールでご提案書をお送りしますがいかがですか?」とワンクッション置く方法もあります。後者の方が実行のハードルが低いのであれば、そちらを試してみるのもいいでしょう。

行動に付加的なメリットを追加してみる

成果を生み出すリソース(PC)への投資行動ができない場合は、「塵も積もれば山となる型」の問題がありますので、少し間接的な工夫が必要です。行動に「付加的なメリット」を用意する必要があるのです。

例えば健康のためにジョギングするとしましょう。ジョギング自体はPCのための活動。しかし、どうにも続けることができないでいたとした場合、次のような工夫が考えられます。

  • ジョギングのサークルに入って、仲間と一緒に走る時間を取る
  • マラソン大会に応募して、走ることに慣れるべき理由を作る

健康のためだけに走ったのではメリットを実感するのは難しいでしょう。一緒に走る仲間がいれば、互いの声掛けであったり、走るという約束を守れたといったメリットが生じやすくなります。またマラソン大会などに応募することで、走る距離が少しずつ伸びる、タイムが縮むといった変化にメリットを感じられるようになります。

このような付加的なメリットによって行動を継続できれば、やがて本来の目的である健康についても改善を実感できる時がくるでしょう。

もしこういった工夫をなかなか思いつかないのであれば、行動契約という方法もあります。行動契約は行動についての目標を設定し、達成できなかったらペナルティを負うというもので、かなりの確率で行動を改善できます。

興味があれば下記の記事をお読んでみてください。

www.behavior-assist.jp

以上、P/PCバランスとは何かという話から、実践段階で躓くポイントおよびそれを乗り越える方法について解説してみました。何かの参考になれば幸いです。

まとめ

本記事でお伝えしたことは次の3点です。

  1. 「成果(P)を直接的に得る活動」と「成果を生み出すリソース(PC)に投資する活動」のバランスを取ることで、持続的に成果を得続けることができる。これをP/PCバランスという。
  2. P/PCバランスを意図した活動のため、(1)方針を具体的な行動に落とし込むこと、(2)その行動を実際に行うことの2つが求められる。どちらかが欠けてしまうと、P/PCバランスを実践することができない。
  3. 行動に落とし込むための鍵は知識。対象分野の知識を学び、P/PCバランスを意図した問いを投げかけて実行すべき行動を見出そう。また実際に行動するための鍵は「行動にメリットを伴わせること」にある。行動科学に基づいた工夫により、実践しやすくなる。