行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

行動力のある人・ない人の違いを作る「3つの能力」を行動科学で解説

行動力のある人に憧れます。思い立ったらすぐ行動し、粘り強く取り組むことができ、ついには実現してしまう。そんな生き方ができればカッコイイし、自分に自信も持てそうです。

だから、そんな行動力のある人になりたい!

でもどうしたら行動力を手に入れることができるのでしょうか。というか、行動力って具体的には何?よく考えてみると、分かっているようで分かっていないのが「行動力」。

この記事では何となくで捉えてきた「行動力」をもう少し詳細に捉え直し、行動力のある人・ない人の違いを具体的に説明します。またその次のステップとして、行動力を手に入れるために最初にやるべきことをお伝えしています。

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行動力とは何か?

行動力が欲しい。この記事にたどり着いた人の多くは、そう願っているのではないでしょうか。行動力のある人とそうでない人の違いが気になるし、可能であれば行動力のある人になるためのコツが知りたいはず。

しかし「行動力がある」とは、つまりどういう状態なのでしょうか。何をもって「行動力がある」と定義してもいいのでしょうか。ここをハッキリさせなければ、行動力をつけるための方策も考えにくい。

行動力という単語を辞書でひいてみると、次のように記述されています。

何かを思い立った際に、実際に行動を起こし、それを実現する力。または、そうした実現に向けて行動する勇気や度胸などのことを幅広く指す表現。

この説明から行動力を支える3つの能力を読み取ることができます。

  1. 思い立ってから実際に行動するまでの時間が短い
  2. 思い立った事柄を実現できる
  3. 実現にあたっての様々な問題の解決に取り組める

この3つの能力が高い場合、おおよそ「行動力がある」と言ってもいいのではないでしょうか。これを軸に「行動力のある人・ない人」の違いを考察していきます。

行動力のある人とない人が持つ能力の違い

能力1.思い立ってから実際に行動するまでの時間が短い

これは分かりやすいですね。やろうと思ってから実際に行動に起こすまでの時間が短ければ、行動力があるように思えるのは自然なことです。

行動力がない人の場合、何かを思い立っても先送りにしてしまい、なかなかそれを実行することができません。

例えば「来週の打ち合わせ用の資料を今週のうちに終わらせてしまおう」と思い立ったものの、実際には他のことばかりをやってしまい、結局ギリギリまで手をつけられないでいた、なんてことはありそうです。

他にも部屋の掃除を先延ばしにしたり、宿題を放置してテレビやスマホで時間を潰したり、起業したいと思いつつも準備が整うまで…とやらない理由を考えたり。

大小様々ですが、行動力がない人の場合、思ってから行動するまでが長いか、場合によっては行動しないまま終わってしまいます。よくある話というか「ああ、これ自分のことじゃん」と書きながら思ってしまいます(笑)

一方で行動力のある人の場合、思ったことをとりあえずですぐ行動に移してみたり、やるべきことを前倒しで片付けたり、やるべきことをやってから遊びの時間をとったりと、行動するまでの時間や順序が理想的なように思えます。

こんな風になれたら、自分も「行動力がある」と思えるのではないでしょうか。

能力2.思い立った事柄を実現できる

思い立ってすぐに行動することができたとしても、すぐに止めてしまって何も実現できていない場合、それは「行動力がある」とかっこよく言い切るのは難しいでしょう。思い立った事柄が実現するまで粘り強く行動を継続できてこそ「行動力がある」といえます。

物事は二度実現する、などといいます。これはまず頭の中で達成したい結果であったり、そこに至るまでのプロセスを描き、その後、行動を起こして実際に達成するということです。

これはさほど不思議な話ではありません。小さなことであれば、僕たちも日常的にやっていることだと思います。

例えば、散歩中にコンビニの前を通りかかった時、「肉まんを食べよう」と思い立ったとします。おそらくその後は、コンビニに入って肉まんを買って食べるのではないでしょうか。

対象とする事柄の大きさや難易度によって、思い描けることの精度や明確さは変わりますが、何かを実現したいと意図し、その後、行動を起こして実現するという順序は変わりません。

僕たちの思考は、僕たちに対して「こういう行動をすると良さそうだ」という示唆を与えます。その示唆の程度が、思い立った事柄をどのくらいの確率で実現できるか、あるいはどのくらい早く実現できるかに影響を与えます。

つまり行動力のある人は自分に対して精度の高い示唆を与えられます。一方で、行動力のない人は示唆の精度が低いがために、思い立った事柄の実現が困難になります。

能力3.実現にあたっての様々な問題の解決に取り組める

この能力では問題を「解決する」ではなく、解決に「取り組める」となっているところがポイントです。

問題を解決すること自体は「問題解決の実現」といえますので、能力2に依存したものです。能力3でいっていることは、問題から逃げずに解決に取り組めるかどうかなのです。

僕たちは困難に直面した時、ついついそこから逃避したくなります。あるいは困難が予想される選択を回避したくなります。それもまたごく自然な人の行動といえますが、そればかりでは何かを実現することは難しいでしょう。

逃避・回避を選択する場合、僕たちは自分のネガティブな思考や感情の影響下にあります。不安であったり、イライラしたり、負担感を感じたりしているので、それらの思考や感情をなくそうとする選択に集中します。

その方法は例えばゲームで遊んだり、お酒を飲んだり、おやつを食べ過ぎたり、過剰に睡眠をとってしまったり、誰か他の人に八つ当たりしたりといったものです。これらは一時的に気分を紛らわすことができます。

しかしながら問題の大元は解決していないため、再びネガティブな思考や感情に囚われてしまいます。回避・逃避する限り、少なくとも自力ではこのループから抜け出すことができません。これが「行動力のない人」です。

一方で「行動力のある人」は、不安かもしれないし、イライラするかもしれないし、負担感を感じるかもしれないが、問題を解決するための建設的な選択にチャレンジします。

結果として問題が解決しないこともあるかもしれませんが、解決に取り組み続ける限り、その人の問題解決能力もまた向上します。回避・逃避の場合は、問題解決能力は一切向上しませんから、中長期的にみると大きな違いになりそうです。

行動力をつけたいなら行動力を見える化しよう

ここまで「行動力のある人・ない人の違い」について説明してきました。ただ結局のところ重要なのは、いま行動力がないかもしれない僕たちが行動力を手に入れるにはどうすればいいのか、という点でしょう。

行動力を支える3つの能力は、それぞれでいくつも記事が書けるくらい大きなテーマになります。今回は行動力の全体像を明らかにするために書きました。いまの自分にとって、どの能力が課題となっているのかを把握するのにちょうどいいかと思います。

とはいえ、行動力の改善について全く触れないのでは物足りませんので、1つだけお伝えしておきます。行動力をつけるために取り組むべき最初の一歩です。

測定できるものは改善できる

それは行動力の見える化。

行動力がある・ないとは相対的なものです。絶対的な行動力というものはなく、○○よりは行動力がある(ない)と表現するしかないのです。

では、この「○○よりは」の○○に入れるべきものはなんでしょうか。同僚や友人、知人、あこがれの人でしょうか。それも別に悪くはありませんが、まず比較すべきは「以前の自分」です。

以前の自分と比較して行動力があるのであれば、行動力を獲得する方へと成長していることが分かります。以前の自分と変わらないのであれば、いまの改善の取り組みはあまり効果的ではないのかもしれません。

行動力が見える化してあれば、このような判断が可能になります。測定できるものは改善できる。何かを改善したいのであれば、まずはその改善対象を測定できるようにしましょう。

では、行動力についてはどのように測定すればいいでしょうか。おすすめの方法を2つご紹介しておきます。

ライフログアプリで先延ばし時間を記録しよう

1つはライフログアプリを使う方法です。これで先延ばしの時間を記録してみてください。

例えば僕の場合、仕事するためにパソコンの前に座ったタイミングでタイマーをスタートさせます。そして実際に仕事を始めたタイミングでタイマーをストップします。これで記録できるのは、「物理的に仕事ができる状態になっているが実際には仕事せずにダラダラしていた時間」です。

これを記録しておくと、日々、どのくらいムダな時間を過ごしてしまっているかが分かります。

ライフログアプリはこのような記録が取りやすくなっています。睡眠時間だとか、家事に費やした時間等も合わせて記録しておくと、どういう時に先延ばししやすいか分かるかもしれませんね。

GooglePlayやAppStore等で「ライフログ」で検索してみれば、様々なアプリが出てきますので、その中から良さげなものを使ってみるといいでしょう。

あとは仕事中にどんなアプリを使ったり、Webサイトを観ていたかを記録するツールもあります。RescueTimeというアプリですが、これを導入しておくと、仕事中、逃避行動に費やした時間も把握できます。

ライフログと合わせて導入すると、より正確に現状を把握できますね。

1週間以内に達成可能な3〜5つの目標を設定しよう

もう1つは毎週3〜5つ程度の小さな目標を設定し、達成状況を確認することです。

これは「思い立ったことを実現する力」を測るのに使えます。大きな目標だと達成状況の確認に時間がかかってしまい、行動力を測る指標として使うには不便です。

週次で確認できる程度の目標がちょうどいいのです。大きな目標に取り組んでいる場合でも、週次の目標にブレイクダウンするといいでしょう。

慣れてきたら月間目標や3ヶ月目標なども設定してみると、もう少し長い期間での行動力を測る指標に使えるかと思います。

どちらも記録すること自体はちょっとした負担でできることです。この記録を手がかりに、行動力をつけるための効果的な工夫を探すことが可能になります。

繰り返しますが「測定できるものは改善できる」です。

行動力を改善したいのであれば、何らかの方法で行動力を測定していきましょう。

まとめ

本記事でお伝えしたことは次の3つです。

  1. 行動力とは3つの能力で構成されている。(1)思い立ってから実際に行動するまでの時間が短い、(2)思い立った事柄を実現できる、(3)実現にあたっての様々な問題の解決に取り組める。
  2. 行動力のある人とない人の違いとは、つまりその3つの能力の差によって、より詳細に説明できる。行動力のある人とは、思い立ってから行動するまでが早く、思い立ったことを実現できる可能性が高く、問題が生じても解決しようと取り組むことができる人である。
  3. 行動力をつけるとは、この3つの能力を伸ばしていくこと。そのためにまずやるべきことは「行動力の見える化」である。感覚的に捉えがちな「行動力」を測定できるようにして、効果的な工夫を見つけるための手がかりとしよう。