いまから2つの問題について説明します。
問題1:行動の原因についての勘違い、やる気は関係ない
1つ目の問題は「行動」についてのものです。
行動の原因を僕らの内面的特性や性質、状態に求めても、自ら問題を作り出すことになり、無駄な努力となってしまいます。
例えば「やる気がない」から行動できないのだとしましょう。行動できない理由を問われれば、あなたは「やる気が出ないんです」といった答えを返すことでしょう。だから行動するためには、やる気を出す方法を模索することになります。
しかし、もう少し考えてみてください。あなたはやる気がないとなぜ分かるのでしょうか?きっと行動できないでいる自分を自覚しているからだと思います。行動できないでいるから、その様を「やる気がない」と自己評価しています。
ここに罠があります。行動できないのはやる気がないから。やる気がないと判断したのは、行動できないから。因果関係が循環しているのが分かるでしょうか。行動できないからやる気がないのか、やる気がないから行動できないのか。どちらが本当なのでしょうか。
答えは簡単です。やる気がないという表現は、単に行動できないでいるいまの現状を別の言葉で言い換えただけのものなのです。原因に言及しているのではなく、もっと分かりやすくて、理解してもらいやすい表現にしただけのものなのです。
だから、やる気は行動の原因ではありません。やる気を出そうと色々試したところで、行動することはできないでしょう。
これが1つ目の問題。この辺りの詳しい話は下記も参照してください。
問題2:成功した人を真似ても成功する確率は上がらない
2つ目の問題は「成果」についてです。
この世界はランダムに動きます。もしかしたら何らかの法則性があるのかもしれませんが、その法則はあまりにも複雑なので、どちらにしろ僕たちからみればランダムに動いているように見えることでしょう。
ランダムな世界では、成功のきっかけは偶然生じるものです。何かを成した人も、そのきっかけは偶然に掴んだものなのです。
にもかかわらず、僕たちは成功法則なるものをもてはやします。成功した人は、結果バイアスの働きにより、自身の成功を「後付け」でもっともらしく説明します。こうして生まれた成功法則やノウハウは、これから成功したい人にとっての福音となります。需要と供給の一致により、成功法則は世の中に広く受け入れられているのだと思います。
しかし、実際のところ成功するかどうか・・・特にそのきっかけを掴めるかどうかはランダムに決まります。きっかけを掴むことは、サイコロを振って1を出すことと似ています。
どれだけの数の機会に恵まれるかは、1人ひとり、理不尽なまでに差があることでしょう。でも、成功のきっかけを全く掴めない人は居ません。100回サイコロを振ることができれば、何回かは1が出るのです。
ランダムなこの世界で成功するためには、とにかく試すことが必要なのです。
これが2つ目の問題。世界のランダム性については下記で詳しく書きました。
やる気も成果も行動の改善には役に立たない
ここまでを少しまとめます。
成果を得られるかどうかは、偶然に左右されます。ので、行動の妥当性を成果の有無によって判断することはできません。ある時は上手くいった行動を、別の時に同じように試したとしても上手くいく保証はありませんし、寧ろ成功が再現しないのが普通です。
故に僕たちは成果にフォーカスしすぎてはいけません(成果を求めるのが悪いとは言っていません)。
一方で成功のきっかけを掴むためには、試すことが欠かせません。たくさん試行する必要があるのです。つまり、行動量を増やす必要があります。しかも単なる行動ではなく、試すという意図を持った質の高い行動をです。
ここで最初に述べた問題とリンクします。行動の原因を己の内面に求めていては、行動できるように改善することができません。ランダムな世界の中で成功のきっかけを掴むべく、行動の質と量を高めていくためにも、行動の原因を正しく捉えなければなりません。
パフォーマンスを行動の拠り所とする
成果は行動の拠り所にはなりません。上手く行動できたとしても、ランダム性が邪魔をして成果につながるとは限らないからです。成果を基準に行動の善し悪しを測っても、ランダムな世界に振り回されてしまうだけでしょう。
では、何でもいいから闇雲に行動すればいいかというと、そういうわけでもありません。やや矛盾したことを言っている自覚はありますが、完全な運任せという考え方は僕たちにとってあまり機能的ではないのです。行動が続けにくくなります。試みるという行動を繰り返すためには、不利な考え方なのです。
僕たちには成果でもない、単純な行動でもない、何か別の拠り所が必要となります。その拠り所とするものが「パフォーマンス」です。
パフォーマンスとは何か
パフォーマンスは「行動の質や量」に関するもの
突然パフォーマンスという言葉が出てきました。これが何かを理解してもらうには、抽象的な定義よりも具体例を使った方がいいでしょう。
例えば、自転車を漕ぐことについて考えてみます。
自転車を漕ぐ、は行動です。一方で、約束の時間までに目的地Aに辿り付くことは成果です。パフォーマンスは行動と成果の間にあります。この例であれば、「時速20kmで自転車を漕ぐ」がパフォーマンスの例となるでしょう。あるいは「信号で止まりにくいルートを自転車で移動する」でもパフォーマンスになります。
パフォーマンスとは、成果を得るための行動の質や量に関したものなのです。
パフォーマンスは努力次第で達成可能
他の例も見ていきましょう。
資格取得を目指して勉強しているケースではどうでしょうか。資格取得は成果で、勉強することは行動です。では、資格取得という成果につながりそうなパフォーマンスは何でしょうか。
試験日までにテキストAとBの練習問題を2回以上完了させる、試験日までに累計○時間の勉強時間を取るなどがパフォーマンスになります。
パフォーマンスは「行動目標」と言い換えてもいいかもしれません。成果は努力しても得られるとは限りませんが、パフォーマンスは努力次第で達成可能ですね。これもパフォーマンスの特徴の1つです。
パフォーマンスは妥当なものを選ぶ
もう1つ、例を見てみます。
ブログを書くことで副収入を得ようとしている場合。副収入は成果で、ブログを書くことは行動です。では、パフォーマンスはどう考えるといいでしょうか。
短くてもいいから毎日ブログを更新するというのは、パフォーマンスになりそうです。週1回でもいいからできる限り質を高めた記事を書くというのも、パフォーマンスです。
パフォーマンスには色んな選択肢があります。どのような選択を取るかは、どんな行動が得意かといった強みであったり、この方法が戦略的に良さそうだと信じられるものであったり、どういった取り組み方が好ましいのかといったもので変わってきます。
成果を得るには試みを繰り返す必要はありますが、それをどのように行うのかは様々なので、自分にあったものを選択したいところですね。
やりがいも成果も諦めない
パフォーマンスの達成を目指して行動を改善する
この記事では、最初にパフォーマンスに集中すべき理由をお伝えしました。
成果はランダムなので、成果を拠り所に行動を改善するのは止めた方がいいです。では拠り所もなく行動を改善できるかというと、基準がないのに行動の善し悪しを判断するのもまた難しくなります。 僕たちにとってパフォーマンスは、行動を改善するための基準となります。パフォーマンスの達成を目指して、行動を改善していけばいいのです。
戦略的な妥当性とやりがいとの両立を目指す
拠り所となるが故に、どのようなパフォーマンスの実現を目指すかはとても大切です。
成功にランダム性があるにしても、なるべく有利な状況にして取り組みたいものです。20面ダイスで1を出すのと、6面ダイスで1を出すのでは、全く難易度が違いますから。できるだけ戦略的に妥当だと思えるパフォーマンスが良いでしょう。
一方、パフォーマンスは僕たちのやりがいにも直結します。ネット上で情報発信するにしても、ブログで本格的な文章を書いて情報を伝えるのか、Youtubeなどの動画配信を使って情報を伝えるのか、それともSNSで人と関係性を作りながら会話の機会を増やしていくのか。いろいろな道があります。
繰り返し試す必要があるからこそ、自分にとってやりがいだとか、心地よさ、充実感などを感じられるようなパフォーマンスを選ぶと良いです。
上手くパフォーマンスが設定できれば、行動しやすくなる
やりがいがあって、戦略的にも妥当なパフォーマンスを設定することができれば、成果に向けての行動量を増やしやすくなります。更にそれだけでなく、成果に向かって行動する「過程」においても充実感を感じやすくなるのです。
そんなパフォーマンスを設定することは、簡単ではありません。妥当な戦略を持つには、対象とする分野の専門家になるか、専門家の助けを得る必要があるでしょう。やりがいを見出すためには、分かっているようで分かっていない自分についての理解が欠かせません。強みを活かせるかどうかでも、取り組みやすさが変わってきます。
パフォーマンスはランダムな世界を進むための優秀な道具
このように書くと、パフォーマンスを設定するなんて面倒だなぁ・・・と思われるかもしれません。しかし、ランダムな世界の中で成果とやりがいを両立させようとしているのですから、まぁ、これくらいは頑張りましょうよ、というのが個人的な意見。
というか他に選択肢は無いんです。あとはやりがいを犠牲にひたすら頑張るとか、目の前のことに反応的に行動するとか、ただやりたいことだけを選んでやってみるといったことになりますが・・・。上手くいくかどうかは、完全に運任せになります。
それはそれで悪くないのですが、個人的に見てきた限りでは、行き詰まりやすく、挫折しやすい取り組み方です。
パフォーマンスを達成して成功体験を積み重ねる
パフォーマンスが設定されていれば、それを達成すること自体もある種の成功体験となります。そんな体験は、そこから先、また頑張ってみようとした時の力強い支えとなってくれます。
やりがいと成果を両立させたパフォーマンスと、そこを目指して行動改善することは、日常活動の質を大きく向上させてくれることでしょう。