エピソード:講座の集客に失敗し、焦りが募るばかり・・・
ある講座を開講することが決まり、集客しなきゃな・・・と思っていた時に、どうもメルマガを使って告知すると効果的だという話を聞きました。無作為に告知するよりも、自分に興味を持ってくれた人たちがいるメルマガの方が、告知に対して反応してくれやすいのだとか。
幸い、既にメルマガを持っていたので、早速講座の案内をすることにしました。ところが、いざやってみたものの講座への申込は全くありません。それどころかメルマガを登録解除する人もいます。あれー、ダメじゃん・・・と凹んでしまいました。
そうこうするうちに開講日が近づいてきます。あわててブログやTwitterでも告知してみましたが、やはり反応がありません。このままでは人がいないまま当日を迎えることに・・・。でも、人とを集めるためにできることが何も思いつきません。ただ焦りが募るばかりでした。
一番苦しいのは選択肢がなくなること
学習性無力感:選択肢がなくなり途方に暮れる
成果を出すために頑張っている時、辛さを感じてしまうのは上手くいくと思って始めたことが何の変化も起こさなかった時です。更に辛いのは、期待した変化が得られなかったのに、次に何をしたらいいか全く分からないでいる状態です。
右も左も分からないだだっ広い空間に、ぽつーんと放り出されたようなもの。目的とする場所に近づきたいのに、方角も分からないし、とにかく行こうと歩き出したのにまるで景色が変わらない。足を動かしているのに、移動している実感が持てません。辿り付きたいところはあるのに手立ては全く思いつかず、そうしているうちに目的地もかすんできて、そこに向かう気力すら萎えてしまいます。このような状態を「学習性無力感」といいます。
試せることがあるという希望
何かの成果を求めている時、ある特定のやり方・ノウハウを信じすぎている(つまり依存している)と、いざやってみて上手くいかなかった時に、学習性無力感に陥りやすいように思います。
状況に対して自分から働きかけができず、何か奇跡が起きないかと待っているしかできない・・・というのはかなり辛いものです。だから、常に自分から何かできる状態であれるようにしておきたいのです。
自分から何かできるということは、試せることがあるということです。試せるということは、状況に対して自ら働きかけようとしている実感が持てます。この実感は僕たちにとって希望となりますし、希望があるからこそ続けられると言えます。
活動全体を構成する8つの領域
自分から能動的に働きかけられる選択肢を持つためには、自分の活動全体を体系的に捉えておくといいです。
選択肢が無くなってしまう場合、大抵は「行動」にしか目が向いていません。でも、社会的な成功を獲得しようと思えば、自分の行動以外にも関わってくる要因がたくさんあります。それらの要因に目を向けることができれば、選択肢は思いの外、広がるものです。
例えば、次のような枠組みで自分の活動全体を捉え直してみるといいでしょう。
- 重視する鍵となる活動
- 自分の得意とすること、関心を向けていること
- 社会に対して提供する価値
- 価値を届ける相手
- その相手にどのように価値を届けるか
- 自分の活動への協力者
- 活動全体から得られる利益や収入、満足感など
- 活動を維持するために必要なコスト、身体的・精神的負担
それぞれがどういったものを指しているのか、例を通して説明します。
1. 重視する鍵となる活動:
あなたの活動全体の根幹を成す、あなたならではの重要な仕事や取り組み。
例「ヒトの活動にかんすることを体系的にまとめ伝えること」「使える”実践的”な道具を開発すること」
2. 自分の得意とすること、関心を向けていること:
あなた個人のリソース。関心、能力・スキル、個性、知識、経験、人脈、その他の資産など。
例「行動分析学、行動経済学」「教えること、伝えること」「研究、分析」
3. 社会に対して提供する価値:
どう役に立つのか、どう幸せにするのか。人があなたに何かを依頼したり、購入する理由でもある。
例「知識を学ぶだけでなく使えるようになってもらう」「目に見えないヒトの活動の問題を読み解くための手がかりを提供する」
4. 価値を届ける相手:
価値を届ける相手。誰の役に立つのか。あなたを頼りにしている人は誰か。
例「行動分析学の本を読んだけど、独学では難しさを感じている人たち」「行動分析学を実務に役立ててみたいけど、どうずればいいか分からず躓いている人たち」
5. その相手にどのように価値を届けるか:
あなたの提供できる価値を、どう知らせ、どう届けるのか。
例「有料の講座で提供するような情報を、Webサイトやブログで発信する」「繰り返し練習するための場として実践的な講座を開講する」「理解度をチェックするための診断ツールを提供する」
6. 自分の活動への協力者:
あなたを支えてくれる鍵となる協力者。同僚やメンター、専門家仲間、家族、友人など。
例「行動アシストラボの仲間」
7. 活動全体から得られるもの:
何を手に入れるか。報酬だけでなく、数値化できない満足度や評価なども含む。
例「講座の受講料」「Webサイトやブログからの広告収入」「知識を体系的にまとめられた満足感」「実践的な場が生み出すものへの期待感」
8. 活動を維持するために必要なコスト、身体的・精神的負担:
何を費やすか。時間、エネルギー、お金。またストレスや不安などの精神的コストも含める。
例「時間を確保すること、忙しさが増すことへの負担感」
この枠組みについてもう少し詳しく知りたい方は、下記の書籍を読んでみることをお勧めします。
- 作者: ティム・クラーク,アレックス・オスターワルダー,イヴ・ピニュール,神田昌典
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2012/10/26
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全体を捉えるから選択肢をいくらでも作れる
上記のような枠組みで活動全体を捉えてみると、手薄だったところが見つかったり、過剰にやり過ぎているところが見つかったりします。あるいは、本当は大して重要でもないことに力を注いでいたり、やりたいと思っていた活動だけど思いの外、負担感を感じている等も見えてきます。
このように活動をモデル化すると分かってくることがあるので、そのモデルを改善するように次の取り組みを見つけていけばいいのです。
僕自身の経験からいえば、やるべきことはいくらでも出てきます。寧ろ時間や活力の方が足りなくなるくらいです。選択肢が無いということは無くなり、悩みはどういう優先順位で取り組むべきか、どこに力を集中すべきかという点にシフトします。
これはこれで悩ましい問題ではあるのですが、少なくとも選択肢に困らないというのは、成功のきっかけを掴むまでトライ&エラーを繰り返すのにはとても有利です。
加える・取り除く・増やす・減らすでモデルを洗練させる
モデルを洗練させる4つの視点
活動のモデルを改善する場合は、次の4つの視点が役に立ちます。先に紹介したビジネスモデルYOUや、その元ネタであるブルーオーシャン戦略にも出てくる改善のための枠組みです。
- 新しく加える活動は何か?
- 取り除く(止める)活動は何か?
- いままでよりも増やす活動は何か?
- いままでよりも減らす活動は何か?
この4つの視点を先ほどの8つの活動の枠組みと組み合わせます。
加える | 増やす | 減らす | 取り除く | |
---|---|---|---|---|
重視する鍵となる活動 | ||||
自分の得意とすること、関心を向けていること | ||||
社会に対して提供する価値 | ||||
価値を届ける相手 | ||||
その相手にどのように価値を届けるか | ||||
自分の活動への協力者 | ||||
活動全体から得られる利益や収入、満足感など | ||||
活動を維持するために必要なコスト、身体的・精神的負担 |
モデルにたくさんの選択肢を書き出せている場合、色々なことに手を出した結果、自分が何をやる人なのか分かり難くなっているはずです。その場合は、「何を取り除くか」「何を減らすか」が重要な課題となるでしょう。やらないことを決められれば、より純度の高い活動ができるようになります。
反対にあまり選択肢を書き出せず、8つの活動領域の殆どが空白になっているような状態であれば、当然「何を加えるか」「何を増やすか」が課題となります。
何も書き出せないなら「知る」ことから始めよう
空白だらけなのに、頑張っても何も思いつかない場合は、いまの活動についての知識と情報が不足していると考えてください。知識とはその分野についての専門知識であり、情報とは活動対象とする社会についてのリアルな情報のことです。
何かの活動に従事するなら、基本的にはその分野のプチ専門家になった方がいいです。専門的な知識は現状への見立てや取り組むべき問題の発見、効果的な課題の設定などに役立ちます。
また、活動対象についての情報が十分にあれば、いま現在、実際にどのようなことが問題となっているのか、どんな人々がいて、それぞれの関心がどこに向いているのか等を把握できます。
専門知識と情報があれば、活動の枠組みに沿って選択肢を出していくことはそう難しいことではありません。
反対に知識と情報が殆ど無い状態では、選択肢を作り出す種火もないようなものです。いくら枠組みを提示されても、何を書き込んでいいか分からないことでしょう。あるいは書き込めたとしても、直接行動に繋げられないような抽象的な表現になったり、あまり効果の無い選択肢になったりします。
選択肢が出てこないなら、まずは「知る」というステップに集中してみてください。そうすれば「やってみる」ことも出てくるはずです。