行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

生産性を低下させるマルチタスクのヤバさと行動科学を活用した対策

仕事をマルチタスクで進めると生産性が低下します。

既にいくつかの書籍でも言及されていることですが、改めて行動科学の観点からどのように生産性を低下させるのか、またどうすればマルチタスクを回避し生産性を高められるのかを考察します。

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生産性を低下させるマルチタスク問題

知的労働の生産性とは?

知的労働の生産性は次の式で決まります。

  • 仕事への習熟度 × 注意力・集中力のパフォーマンス

仕事への習熟度が上がると、直感的に作業を進められる部分が増えます。

パッと次にやるべきことが浮かび、あまり考えることなく手が動いてくれる感じで、効率の向上と負担の軽減に繋がります。

ただ知的労働の場合、直感のみで作業できるわけではなく要所要所で熟考が必要になり、その場合、今度は注意力や集中力のマネジメントが鍵となります。

また、直感的に進めた作業の検証にも、注意力や集中力が求められます。

この辺りの詳しいことについては下記の記事に書きましたので、興味があれば読んでみてください。

www.behavior-assist.jp

マルチタスクは注意力や集中力を低下させる

本稿では注意力・集中力とマルチタスクとの関係について取り上げます。

結論からいえば、マルチタスクで作業すると注意力・集中力を上手く使うことができなくなります。

例えば二人の人から別々の話題で話しかけられている場面を想像してみてください。

両方の話に注意を払って聞きながら、内容を理解するのは非常に困難だと思います。

マルチタスクで作業することは、熟考が必要な場面のパフォーマンスを大きく低下させるものと考えてください。

マルチタスクがいかに不味いかについては、下記の本などにも取り上げられています。

SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる

SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる

2つのマルチタスクを回避する

ですので知的労働の生産性を上げるためには、マルチタスク環境をなるべく回避したいわけです。

ここからは次の2点について、マルチタスクの影響を低下させる方法をお伝えします。

  1. 仕事環境上のマルチタスクの影響を回避するには
  2. 思考上のマルチタスクの影響を回避するには

仕事環境上のマルチタスク

仕事環境上のマルチタスクには次のようなものがあります。

  • 複数の仕事を細切れにしながら同時に進めようとしてしまう
  • 作業中にYoutubeやスマホ等に現実逃避してしまう
  • SNSのメッセージ通知や話しかけられたりすることによる割り込み

一般的にマルチタスクというと、複数のことを同時にやろうとする1つ目のイメージが強いかもしれませんが、注意力・集中力を奪うという観点から考えれば、2つ目の現実逃避、3つ目の割り込みも回避すべきものです。

シングルタスクを容易にする「Doingリスト」

複数の仕事を同時に進めがちな人におすすめなのが「Doingリスト」です。

DoingリストとはToDoリストみたいなものなのですが、使い方に1つ約束があって、必ず上から1つずつToDoを片付けていきます。

いちいち優先度とかを考えるのではなく、一番上にあるからその作業に手をつけるのです。

Doingリストのことを知ったのは2008年で、下記の記事を読んだのですが、Doingリストを使うと集中して作業する時間を作ることができます。

lifehacking.jp

僕の場合は1日の最初にDoingリストを作って、上から順番に片付けていくというスタイルで仕事を進めています。

逃避を困難にし、割り込みを減らす環境を見つける

現実逃避や割り込みを減らすには、基本的に環境を変えるしかありません。

Youtubeを観ることができるのに我慢しようとか、話しかけてくる人がいるのに集中しようというのは無理な話です。

例えばネットに繋げられない、動画の音などを出しにくい、一人になれる場所や時間などを見つけましょう。

そういったところで作業すると、逃避行動や割り込みを減らすことができます。

思考上のマルチタスク

”気になること”が集中力と注意力を奪う

マルチタスクになってしまうもう1つのケースが「思考上のマルチタスク」です。

僕たちは「気になること」があると、ついついそのことを考えてしまい作業に割り込みをかけてしまいます。

気になっていることをそのまま放置していると、集中して作業することが難しくなります。

上手く「気になる度」を低下させる必要があります。

トリガーリストを使って気になることをすべて書き出す

気になることをマネジメントするために最初にやることは、頭に浮かぶすべてを書き出すことです。

気になることはふとした瞬間に「あ、そういえばあれ…」という感じに割り込みをかけてきますので、可能な限りすべてのことを書き出しておきます。

とはいえ、すべてを思い出して書き出せというのは難しいので、こういう時は「トリガーリスト」と呼ばれるものを使うといいでしょう。

トリガーリストについては下記の記事が参考になります。

browndots.net

書き出したことについての対応方法を決める

すべてを書き出したら、それらについてどう対応するかを決めておきます。

  • 具体的に行動する
  • 当面は放置する
  • 捨てる

具体的に行動するものについては、ToDoリストやDoingリストに載せることになりますが、殆どは放置するか、捨てることになるのではないかと。

気になっていることについての対処を決定しておくことで、気になる度が低下して割り込みしてくる回数を減らすことができます。

作業中に浮かぶことを書き留めておく場所を作る

またそれでも作業中にふと浮かんでくるものが現れますが、それについては「書き留めておく場所」を決めておくといいでしょう。

頭で覚えておこうとすると気になる度が高くなってしまいます。

書き留めておく場所を決めておけば、忘れたとしてもそこを見ればいいという安心感が得られますので、頭で気にしておく必要がなくなるのです。

定期的に頭に浮かぶことをすべて書き出す。

そして作業中に思いついたことを書き留めておく場所を決める。

この2つを実践することで、頭の中で起きるマルチタスクを減らすことができます。