行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

やる気になってはじめたことを、最後までやり遂げるには?

ときどき妙にやる気が出て「おっしゃ、これやるぜー!」となることがあります。その時の僕は、まさにモチベーションの塊。凄まじい行動力で、やると決めたことを最後までやり遂げます。

…なんてことはなくて、最初はすごくやる気があるのに、日が経つにつれモチベーションが低下していき、なんではじめたんだろう、面倒くさいなぁ、となってしまいます。

f:id:h-yano:20190320065843j:plain

はじめた頃のモチベーションを維持できないという問題は、多くの人が抱えていることでしょう。なぜなら「気分は変わりやすいもの」だからです。

はじめた頃の高揚感やテンションの高さを、ずっと維持できることはほぼありません。ですので、やる気に頼って行動する人は、色んなものに手を出したあげく、どれも中途半端に放り出して、最後までやり遂げたことがほとんどない、なんてことになりがち。

こういった問題を解決するポイントは、やると決めたときにどれだけ継続の工夫をするかにあります。やる気に満ち溢れた状態を利用して、継続しやすい環境をと整えてしまいましょう。

では、どのような工夫をすればいいか。そのためにはまず、なぜ継続が難しいのかを考えます。継続の問題は次の2つの要素で分解するとわかりやすくなります。

  1. やろうとしていることの難易度(あなたにとって簡単か、それとも難しいか)

  2. フィードバックサイクルの長さ(すぐに結果が出るか、時間がかかるか)

この2つの要素で分解すると、継続の問題を2×2のマトリックスに整理できます。

f:id:h-yano:20190603203826p:plain

1. 簡単ですぐに結果が出ること

まず一番簡単なのは、簡単ですぐに結果が出ることです。このパターンは問題ではありません。最後まで継続するのは難しいことではないでしょう。

ゲームや漫画、映画を観る、旅行に行くといった行動は、ここに分類されます。娯楽や趣味的な活動は、大抵楽しんで最後までやり遂げることでしょう。

2. 簡単だけど時間がかかること

次は簡単だけど、結果が出るまでに時間がかかるものについて考えてみます。例えば、ブログやダイエット等がここに該当します。

実行すること自体はさほど難しくはないですけど、一定の成果が出るまでには行動の積み重ねが必要であり、どこかで挫折してしまうことが多い活動です。

これらの活動を最後までやり遂げるには、継続の仕組みが必要です。活動に対してもっと短いサイクルでフィードバックが生じるように工夫します。他人からの評価や承認を利用したり、行動契約と呼ばれる手法を導入します。

例えば、ダイエットの相互支援グループに参加し、今日食べたものや体重などを報告してみるといいでしょう。グループメンバーからのイイねやコメントが、行動を継続する励みになるはずです。

行動契約を活用するのであれば、今日から3ヶ月、週に2本ずつブログ記事を更新するという目標を立てます。毎週目標を達成したかチェックし、達成できていない場合はペナルティを負います(罰金とか)。この場合、ペナルティを回避するために何とかブログを更新しようとするでしょう。

どちらの工夫も、活動の継続に対して影響力のある結果(イイねやコメント、ペナルティの回避)が、より短いサイクルで生じるようになります。行動すること自体が難しくないのであれば、かなり継続しやすくなるでしょう。

3. 難しいけどすぐに結果がでること

次のパターンは、すぐに結果がでるけど、難易度の高いことをやろうとしている場合。

メルマガを書いて集客しようとしたり、専門書を読もうとしたりする等でしょうか。頑張ってメルマガを書いても、全然集客できないかもしれません。専門書を開いても、全く意味が分からないかもしれません。

このケースで生じることは「失敗や失望(行動分析学では消去や弱化と呼ばれます)」というやつです。

対処法はスモールステップの目標とトレーニングです。本来目指していることよりも易しいゴールを設定し、その達成を目指すことで活動の質を高められるようトレーニングしましょう。

先程の例でいえば、メルマガで集客することを目指すのではなく、メルマガを開封してもらうことを目指す(開封率をチェックする)とか、専門書の前に簡単な入門書を数冊読んでみる等です。

スモールステップで設定した目標の難易度を、少しずつ高くしていき、やがて本来達成したレベルの目標を達成することを目指します。

4. 難しくて時間のかかること

さて最後のパターンです。難易度は高いし、結果もすぐには出そうにないこと。

この問題への対処法は、先の2つを組み合わせることです。すなわちスモールステップの目標を立ててトレーニングしつつ、同時に継続のための仕組みを機能させます。

例えば、僕は小説を書いたことがありませんが、もし小説を書こうと思ったら、それは難易度が高い上に、すぐに結果が出ない(なかなか完成しない)ことへのチャレンジとなります。この場合、例えば2,000文字程度の短編小説にチャレンジすることにして、1ヶ月で3本本の短編小説を書くことを行動契約してみるといいでしょう。

もしそれが達成できたなら、文字数や本数を増やしてみたり、面白さを少し追求してみたり、プロットを作って中編小説を書いてみたりと、徐々にチャレンジすることの難易度を上げていくことができます。

難易度が高くて、すぐに結果がでないようなことって、それだけをみるとウンザリするくらいハードルの高いことに感じます。でも、こうやって分解して、継続の仕組みの力を借りつつ、1つずつクリアしていけば、達成できないことではありません。

こういったことにチャレンジすると、やれることの幅がどんどん広がり、人生の選択肢も増えますのでとてもお勧めです。