個人事業家・フリーランスのための行動分析学 - 行動アシストラボ 矢野浩史

僕たちは行動分析学をもっと”使える”道具にする。

やりたいこと探しをしているうちは、充実感ややりがいは得られない。

行動にやりがいを感じられれば、僕たちの日常活動の質は向上します。やりがいが無いよりも、あった方がいいですよね。また、やりがいがあれば行動に積極的になれそうな気もします。

この記事を読んでみようと思ったあなたは、もしかしたらいま「やりがい」を求めているのかもしれませんね。いまやっていることに疑問や違和感があって、だからこそ自分の本当にやりたいことを見つけようと藻掻いているのかもしれません。

あるいは、部下や生徒のやりがいについて上手く指導する方法を探している、なんてこともあるかもしれません。もっと積極的になって欲しいのに、いくら言っても相手に届いた感じがしない、と悩んでいたりするかも。

しかし、やりがいって何なのでしょうか。いざ考えてみようとすると、結構漠然とした概念であることに気づきます。辞書の定義を読んでみると「物事をするに当たっての心の張り合い。しがい」とのこと。

本記事では、この「心の張り合い」の正体について考察し、やりがいを感じながら行動するためにどう考えればいいのか、僕なりの指針を示したいと思います。

憧れの未来に逃避しているだけになっていないか

やりがいは基本的に「いまからやろうとする行動に伴って」得られるものです。ところが、いまの行動とは全く関係の無い未来にやりがいを求めてしまうことがあります。例えば、次のようなケースです。

ケース1:会社を辞めてブログで生計を立てたい

いまの会社での仕事は退屈だし、決まった時間に通勤・労働するのにも窮屈さを感じてる。ブログで十分な収入を得られるようになれば、労働時間が減って日々を自由に生きられるはず。そうしたい。

ケース2:本当にやりたいことを探している

これがやりたいことだ!と思い、ブログで生計を立てることにチャレンジし始めてみた。しばらくは頑張って書いていたのだが、思うようにアクセスが増えない。月あたりの収益を100〜200円程度。もう少し頑張らなければと思うものの、最近はやる気も出なくなりつつある。本当にやりたいことは、他にあるんじゃないかな・・・と考えてしまう。

その実態は逃避であり、やりがい・充実感は得られない

これらは本当にやりがいを求めているのでしょうか。共通しているのは、

  • 現状に不満があり、脱出したいと考えている
  • どこかで聞いたことのある良さげな未来に憧れている

の2点でしょうか。これでもし、既に行動ができていて充実感やチャレンジ感を感じているのであれば、何も問題ありません。しかし、未来を思い描くだけに終始しているのであれば、やりがいを求めているというよりも、単に現実逃避をしたいだけになっているかもしれません。

憧れの未来に逃避しているだけでは、実際にやりがいに触れられる機会は得られないでしょう。

日常の中で地に足のついた課題を持つ

やりがいは行動に伴って得られるもの

やりがいの定義は「物事をするに当たっての心の張り合い」ですから、”する”ことに伴うものなわけです。先ほども書きましたが、行動に伴って得られるものなんですね。

行動に伴うということは、具体的に取り組むべきことが既にあるということです。取り組むべきことに取り組もうとすることで、心の張り合い(やりがい)を感じられるということです。

つまり、いま目指している未来がどうであるかは、やりがいの必要条件ではないということです。ワクワクする未来を描けたとしても、具体的に何かをしようとしていなければそこにやりがいはありません。反対に未来のことを殆ど考えていなくても、いま何かをやろうとしていて、そこに心の張り合いが伴っているなら、やりがいを感じられていると言えるでしょう。

具体的に取り組むことができるものを探そう

ということで、やりがいの一つ目の条件は、「具体的に取り組むことができる」です。

具体的に取り組めるということは、いまの日常とつながっているということです。時間ができたら〜とか、お金が貯まったら〜という話ではなく、取り組もうと思えばすぐに取りかかることができること。それが必要です。

これは「できることをやる」という意味ではありません。やったことがないこと、まだ未熟でできないことであっても、具体的な課題は見つけられます。

冒頭にあげた例のように、ブログで収入を得たいと夢想していたとしても、それが具体的な課題に落とし込まれていて、いままさに取り組もうとしているのであれば、その活動からやりがいが得られる可能性はあります。

やりがいは結果として得られるもの

いまさらっと書きましたが、とても重要な箇所があります。それは「取り組もうとしているのであれば、その活動からやりがいが得られる」という点です。

やりがいがあるから行動できると考えてしまうのは間違いです。やりがいは行動の原因ではありません。やりがいは「行動した結果、得られるかもしれないもの」だと考えてください。

行動しないままやりがいを感じることはできません。行動する前にやりがいを見つけることもできません。行動しようとするその瞬間、あるいは行動をしている最中にはじめて、やりがいに触れる機会が得られるのです。

これがやりがいの2つ目の条件です。やりがいは「行動しようとするまさにその瞬間に触れることができる」もの。

何に取り組めばいいのだろうか?

行動分析学が教えてくれるやりがいのヒント

具体的な課題や行動にやりがいがあるのだとすれば、その課題や行動はどうやって見つければいいのでしょうか。この問題を解決するために、少し行動分析学という心理学に引きつけて説明します。

行動に伴ってやりがいに触れるというのは、「好子」と呼ばれる刺激への接触機会だと考えられます。好子とは、簡単にいうと「欲している何か」と考えてください。僕たちの行動原理の一つは「欲している何かを獲得できる」ことなのです。「欲している何かを得る」ことができるので行動します。

そしてやりがいとは、行動することによって好子(欲している何か)に接触しようとしているその瞬間に訪れるものなのです。

やりがいはまだ見ぬ未来ではなく過去の中にある

自分にとって何が好子なのかを知るためには、過去を振り返ってみるのが一番分かりやすいです。

決して一般的な解釈で「普通はこういうものを欲するよね」と安易な答えに飛びついてはいけません。好子の成立には、その人の体験が密接に関わっています。何が好子なのは、本当に人ぞれそれなのです。

好子は常に僕たちの行動を促してきたはずです。これまでの人生において、実際に繰り返してきた行動を分析してみましょう。それらの行動によって何を得ていたのかを知れば、あなたにとっての好子が見つかるかもしれません。

とはいえ、あまり厳密に考えすぎる必要はありません。次の質問について考えてみれば、やりがいを得られる具体的な課題や行動を見つけやすくなるはずです。

過去、あなたはどのような状況・場面で、どのように行動したとき、どのようなやりがいを得ることができていたでしょうか?

やりがいは1つとは限りません。この質問について、思いつく限り答えを探してみるといいでしょう。意外な所に意外な答えが隠れていることもあります。

やりがいの3つ目の条件は、「まだ見ぬ未来ではなく、過去(=経験)の中に存在する」です。

過去と自分を読み解き、やりがいへの道を歩みはじめる

過去の体験を読み解きやりがいのヒントを見つける

やりがいについて3つの条件を挙げてきました。

  1. 具体的に取り組むことができる
  2. 行動しようとするまさにその瞬間に触れることができる
  3. まだ見ぬ未来ではなく、過去(=経験)の中に存在する

過去の経験を探り「やりがいらしきもの」を見つけ、具体的に取り組むことができる課題へと落とし込み、実際に行動して試してみる。それがやりがいを見つけるプロセスになります。

少し実例をあげてみます。以下は僕の会社員時代の経験を読み解いたものです。

何も制限がなく、一人自由に振る舞っていい状況では、怠惰に過ごしてしまうことが多かった。何もしない無為な時間であり、やりがいを感じられる状況からはほど遠い。先延ばししてしまうことも多く、かえってストレスを感じてしまっていた。

一方、僕の行動を評価・管理する厳しい上司の存在は、プレッシャーの源泉となり、かなり真面目に仕事に取り組むことができていた。とても効率よく働いていたと思う。但し、上司の厳しさは僕から「失敗するかもしれないことを試みる」ことを奪ってしまった。最善と分かっているルートを辿ってできることをやるという感じで、これもやりがいからは遠いものだった。

リーダーとして裁量を持ってチームを運営している時、最も創造的な活動が増えていた。チーム内部は比較的緩く自由に運営しつつも、顧客への責任が適度なプレッシャーとして機能していた。結果、より良いものを提供するために、活動の質を上げるために、新しい試みに積極的になったようだ。一番楽しく、充実した活動ができる状況だと言える。

以上の経験から「一人よりもチームで」「チームメンバーよりもリーダーとしての立場で」「厳しくよりも緩いチーム運営で」「顧客への責任を感じている状態で」「知っている最善のルートよりも新しいアイデアを試みる」といったあたりが、僕のやりがいの鍵になりそうです。

やりがいを得やすい環境を作る

それが分かったら、今度はこれらの鍵となる要素が含まれた状況・場面をどうしたら作れるかを考えます。いまの自分のリソースを踏まえながら、少しずつやりがいを感じられる状況・場面を作っていきます。

状況・場面を作るというのがポイントです。僕たちの行動は、僕たちが置かれた状況・環境・場面に従います。なので、やりがいを感じられる状況を作ることができたら、必然的にやりがいに接触する機会が増えるのです。

僕は現在、一般社団法人行動アシストラボという団体で代表理事をしていますが、この団体での活動が僕にとってはやりがいを得られる状況・場面になっています。

行動せずにやりがいは得られない

繰り返します。やりがいには3つの条件がありました。

  1. 具体的に取り組むことができる
  2. 行動しようとするまさにその瞬間に触れることができる
  3. まだ見ぬ未来ではなく、過去(=経験)の中に存在する

そんなやりがいに触れるためには、過去の経験を探り「やりがいらしきもの」を見つけ、具体的に取り組むことができる課題へと落とし込み、実際に行動して試してみることになります。

過去の経験から自分への理解を深め、そんな自分が積極的に、そしてやりがいを感じながら活動できる状況を想定し、そこに近づくための具体的な課題を設定してみてください。

そして何より重要なことは、やりがいは「行動しようとする瞬間、または行動の最中」に触れることができるものだという点です。行動せずにやりがいを得ることはできません。ですので、試してみてください。やってみてください。