行動科学実践の手引き。

人が自由に行動し、自由を謳歌するために、行動科学(行動分析学)の知識と実用的なノウハウを記す。

モチベーションを必要とする行動は、そもそも継続できない。

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モチベーションが低い、やる気が出ないので行動できない。だから、モチベーションをアップさせる方法、やる気が出る方法を知りたい。そんな人はたくさんいると思います。

ケース1:会社での仕事にやる気を感じない

いま会社でやっている仕事にやる気を感じない日々が続いている。こんなことではいけないと思い、やる気やモチベーションの本を読んで、どうにか自分を立て直そうとしている。また、朝活などにも参加して外部から刺激をもらえば、もしかしたら前向きに仕事に取り組めるようになるかもしれない、とも考えている。

ケース2:副業を軌道に乗せたいのに帰ったらお酒を飲んでしまう

会社だけの収入では不安があり、副業を始めた。とはいうものの、軌道に乗るまではまだまだやるべきことがたくさんある状況だ。副業のためにしっかりと時間を取らなければならないのだが、会社から帰ったらついつい冷蔵庫からビールを取り出して飲んでしまう。そうしているうちに眠くなって、明日から本気を出そうと思い寝てしまう日々。どうにも本気になれない自分を感じてもどかしい。

モチベーションを上げることができれば、いかにも行動できそうに思えますが、実はここには罠があります。モチベーションを何とかしようとしている時点で、見当違いの努力をしているのです。

モチベーションは行動の原因ではない

モチベーションが低いことは、行動できない理由になりません。モチベーションは行動の原因ではないのです。循環論を知っていれば、このことは容易に理解できます。

モチベーションに問題があると考えている人は、行動できないのは何故かと問われると「モチベーションが低いから」と答えることでしょう。モチベーションをアップさせることができれば、行動できると考えているわけです。

では、もし「モチベーションが低いと分かるのは何故?」と問われたなら何と答えるのでしょうか。おそらく自分の行動できていない現状をみて「あまり行動できていないから」等と答えるのだと思います。

ここで因果関係の循環が起きています。行動できないのは、モチベーションが低いから。モチベーションが低いと判断したのは、行動できないでいるから。互いが互いの原因になってしまっています。鶏と卵の話のようで、何が本当の原因なのかよく分かりません。

結局のところ、モチベーションが低いことと行動できないことは、同じことを違う言葉で表現しているだけに過ぎません。行動できないでいる自分の状態を自己観察した結果、その状態に「モチベーションが低い」という名前を付けているだけなのです。

モチベーションは決して行動の原因ではありません。モチベーションが低いことも、行動できないでいることも、表現の仕方が違うだけで同じことを言っています。

このあたりの循環論については、下記で詳しく書きましたので、気になる人は参照してください。

www.behavior-assist.jp

モチベーションが必要なのは、やりたくないことをやろうとしているから

モチベーションが必要だと感じてしまうのは、そもそも「やれないことをやろうとしている」からです。やれないこと、やりたくないこと、やりづらいことをやろうとすれば、当然ですがなかなか行動できないでしょう。行動できないのであれば、その状況を自己観察し、モチベーションに問題があると結論づけてしまうかもしれません。

逆に言えば、やれること、やりたいこと、やりやすいことをやろうとすれば、行動するのは比較的容易になります。そうすると今度は行動できている自分を自覚して、モチベーションが高いと思えることでしょう。

モチベーションに問題があると感じているなら、解決するための方針はシンプルです。あなたが当たり前にできること、あるいはそうしやすいものに集中すればいいのです。

行動力がある人や継続できる人は、モチベーションが高いのではありません。単に行動することができるから、モチベーションが高く見えるだけです。ですので、モチベーションを高める方法を探す暇があれば、モチベーションに頼る(頼りようもありませんが)ことなく、当たり前に行動するにはどうすればいいかを考えましょう。

関心を見つけて日常の中の課題として設定する

やれないことややりたくないことをやろうとするよりも、そもそもやれること、やりやすいことに取り組んだ方が、結果として行動力も高くなりますし、継続も容易になります。

では、どんなことに取り組めばいいのでしょうか。それを見極めるためのポイントについて解説します。基本的には自分を2つの視点から理解し、組み合わせるだけです。

過去の体験を読み解きやりがいのヒントを見つける

1つ目は「これまでの自分」についての理解です。経験を読み解き、どのような場面で、どのように行動した時に、最も充実感ややりがいを感じることができたかを見つけます。

僕たちの充実感ややりがいは、行動に伴って生じるものです。行動しようとしている瞬間であったり、行動している最中でなければ、充実感ややりがいは感じられません。ですので、これまでの自分を振り返ることで、「どのような状況で、どのように行動した時、どのようにやりがいを感じたか」を知りましょう。

この辺りについては下記の記事に詳しく書いてあります。

www.behavior-assist.jp

いま現在、関心を示しているものを知る

2つ目は「いま現在の自分」についての理解です。読み解くべきものは、現在の状況や環境です。

僕たちはその時々に応じて、関心を向けるものが変わります。年齢と共に緩やかに変わる場合もあれば、金銭や時間的なリソースの状況によって急激に変わる場合もあります。

どちらにしても、いま現在関心を払っていることを知らなければ、やりやすい行動を設定することができません。関心を示すものがあるのに、それを無視して他のことをやろうというのは、ちょっと無理がありますよね。

いま現在の環境の中で「やりがい」につながる課題を見つける

体験から読み解いて分かった「どのような状況と行動でやりがいを得られるのか」を、「いま現在の関心事」に活かす方法を考えるといいでしょう。例えば僕の場合、

  • リーダーとしてチームを率いながら、創造的に活動することにやりがいを感じる
  • いまは行動分析学を学ぶ場を作ることに、強い関心を持っている

となるのですが、これを組み合わせると、

  • リーダーとして一般社団法人行動アシストラボという団体を率いながら、団体の活動として行動分析学を学ぶためのプラットフォームを作る

ことが具体的な課題になるわけです。過去の体験から分かったやりがいや強みを、現在の関心事に活かすことができています。結果、少なくともこのことについて、モチベーションで悩んだことは一度もありません。やるのは当たり前で、いちいちやる気をどうにかしよう等と考える必要もないのです。

どうやって関心を見つけるか(ワークの仕方、簡単に)

では本記事の最後に「これまでの自分」と「いま現在の自分」を理解するための、具体的なワークについて書いておきます。以下のワークはそれぞれ独立したワークですので、どんな順番でも、どのワークでも好きなように試してもらって大丈夫です。

ワーク1:20歳以前の自分はどんな人?

20歳以前のどこかの時点に戻って、次の問についての答えを思いつく限り書き出してみてください。 * 何をするのが好きでしたか? * どんな活動(ゲーム・趣味・スポーツ・学校の教科など)を楽しみましたか? * 何時間も没頭し、他のことを忘れてしまうほど幸せな気持ちになれたことは何でしたか?何をしている時に、時間を忘れましたか?

ワーク2:私はどんな人?

  1. 何も書いていない紙を10枚用意してください。少し大きめの付箋紙などがいいかもしれません。
  2. 1枚に1つずつ、「私はどんな人?」という問に対しての答えを書いていきましょう。
  3. 終わったら、それぞれの紙について次の2つについての答えを書き足してください。
    • なぜその答えを書いたのか?
    • その答えに関連して、何かワクワクすることはあるか?
  4. 全て終わったら、どの紙があなたにとって大切なのかを検討し、優先順位に沿って並び替えてください。
  5. 最後に10枚の答えの中にある共通項を探してみましょう。もし見つかるようでしたら、もう1枚紙を用意して、それに書き出してみましょう。

ワーク3:ライフホイール

  1. 「活力・健康」「仕事・キャリア」「お金・富み」「個人的成長」「楽しみ・レクリエーション」「愛情」「友人・家族」「環境・家」「クリエイティビティ」「ライフスタイル」「精神性」等から、自分に関係の深い8つのテーマを選択してください。ここに書いてあるもの以外でも、関心のあるテーマがあれば、それも8つの中に含めても構いません。
  2. 以下の図に8つのテーマを書き込み、それぞれどの程度満足しているか線を引き、内側を塗りつぶしてください。円の中心点が満足度ゼロ、円の円周上が満足度最大となります。
  3. それが現在の人生のおける満足度を表しています。人生には仕事やお金以外にも重要なエリアがあります。ライフホイールは、それらを俯瞰するのに手軽で便利な道具です。
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実際にワークをやってみると、ここまで説明してきたやや抽象的な概念を、自分の中の具体的なエピソードと紐付けて理解できます。抽象と具体とが結びつくことで、狙いを持って活動しやすくなりますので、是非試してみてください。

この手のワークは他にもたくさんありますので、もしあなたが知っているものがあれば、それでも良いと思います。個人的には下記の書籍に載っている「ライフライン」というワークがお勧めです。ちょっと長いのでこの記事ではご紹介できませんでしたが、もし興味があるようでしたら試してみてください。今回紹介したワークも下記の本から抜粋しています。

ビジネスモデルYOU

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  • 作者: ティム・クラーク,アレックス・オスターワルダー,イヴ・ピニュール,神田昌典
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